パウエルのインフレ抑制の決意表明は、個人的には大変好印象でした。米国の先行きの見通しが明らかになったことと、現在の経済指標を見ると、米国経済は縮小というより停滞というのが正解のように思えるからです。長期で見れば、いずれは金利も引き下げられるので、さらに株が下がったら、買いのチャンスがやってきたと考えればいいです。『まーしーによる米国株投資で億のほそ道』)
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プロフィール:まーしー@米国株投資家
大人気Twitter「まーしー@米国株投資家」の発信者。Twitterフォロワー数は53,000人。著書である「33歳で年収300万円台でも 米国株投資で爆速1億円 」で米国株投資人気に火をつける。有料メルマガ『まーしーによる米国株投資で億のほそ道』では、個別株投資家向けの爆益狙いの投資情報を現在進行系で配信中。
パウエル、利上げ路線を堅持
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、ジャクソンホールで開催した年次シンポジウムにて、インフレが制御されていると確信できるまで利上げを続け、高水準で維持する必要があるとの考えを示しました。また、その過程において労働市場が縮小し、家計や企業にいくぶん痛みをもたらす可能性が高いと指摘しました。
「これはインフレを抑えるための残念なコストだ。だが物価の安定を回復できなければ、はるかに大きな痛みを意味することになる」と述べています。
米経済については、成長に関して強弱まちまちの兆候が出ているものの、「引き続き基調的な強さが見られる」と指摘しました。さらに「インフレ率を2%に戻すために十分に抑制的な水準まで、政策スタンスを意図的に動かしていく」と方針を示しています。
現行の金利は「中立」ゾーンにあるものの、インフレ率が高止まりしているような環境下で「打ち止めまたは休止すべき地点ではない」とのことです。
この度の議長講演は7月のFOMC議事要旨の公開後にあった、複数のFRB当局者による「早期利下げ否定論」について、当局者内での見解が一致していることを示唆しています。
しかしながら、今後の金融政策はあくまでも「入手されるデータと見通しの推移に基づいて総合的に判断する」としています。続けて「金融政策スタンスの引き締めが進めば、いずれかの時点で、利上げペースを落とすことが適切になる可能性が高い」と述べています。
個人的には、インフレ抑制に対するFRBの決意表明のように見え、大変好印象を持ちました。
インフレ指標はさらに低下
米商務省によると、個人消費支出(PCE)価格指数は7月に前月比0.1%低下しました。前年同月比では6.3%上昇と、前月の6.8%上昇からは鈍化しました。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアのPCE価格指数は、前月比0.1%と、鈍感傾向が強まっています。
PCE価格指数は、FRBがインフレ指標として重視する指標です。しかしながら、パウエル氏は、1回の改善では、FRBがインフレ低下を確信するために必要なものには「到底及ばない」と述べています。
しかしながら、今後発表される物価統計は、さらなるPCE価格指数の低下に繋がるかもしれません。ガソリンの平均価格は8月に続落し、先物価格もこの傾向が続くことを示唆しています。そのほか、多くの小売業者による在庫を減らすための値引きも続いていることや、主要なインフレ要因だった中古車価格も下落しています。コンテナ船の運賃が大幅に値下がりしていることも、サプライチェーンの問題が緩和しつつあるのかもしれません。
Next: 意外に強い経済指標。米国景気は縮小ではなく停滞か
米経済は縮小ではなく停滞
国内総生産(GDP)が今年上半期に2四半期連続で減少したと発表したことで、米経済はリセッション入りしたのではないかとの見方が広がっています。一般に2四半期連続のマイナス成長はリセッションだと定義されています。
たとえば、個人がレストランでの食事、自動車、医師の診察などの商品やサービスの購入に1ドルを支出するごとに、別の個人はこれらの商品やサービスを生み出し提供することで1ドルの収入を得ます。GDPはこうした取引の支出面を測りますが、一方で収入面を捉える統計として国内総所得(GDI)があります。一部のエコノミストはこのGDIこそが、経済の実情を表しているのではないかと考えています。
両指標は統計上の食い違いがあるものの、理論上は等しくなるはずだとされています。
米商務省が発表した統計によると、GDI─企業利益、賃金・給付金、自営業者の所得、金利収入、家賃収入で構成される─は年率1.6%のプラス成長となっています。GDPの実質年率1.1%マイナス成長とは現在乖離があります。
基本的にGDPはGDIに近い水準に改定される傾向があると、FRBのエコノミストだったジェレミー・ナレワイク氏は述べています。つまり、今後発表されるGDPの数値は、リセッションと定義されるような弱い数値とはならないかもしれません。
これらのことから、経済は実際には縮小はしておらず、停滞しているというのが正しい見方なのではないかと、実際にリセッションを定義する機関である全米経済研究所(NBER)の委員であるロバート・ゴードン氏は考えています。
雇用は依然として強い
米労働省が発表した8月の雇用統計によると、非農業部門就業者数は31万5000人増加し、予想を上回りました。一方で、失業率は0.2ポイント上昇して3.7%となりましたが、労働参加率が7月の62.1%から62.4%に上昇したため、求職者が増えたことが理由だと考えられます。8月は賃金の伸びも鈍化し、民間部門の平均時給は前月比では0.3%上昇、年率換算では3.8%上昇しました。前年同月からの上昇率は5.2%でした。
雇用統計発表を受け、金利先物市場では、次回FOMCで0.75ポイントの利上げが実施される確率が約3分の2となり、前日の約4分の3からやや低下しました。
雇用統計だけをみると、高インフレは依然継続する様相をみせており、9月のFOMCで0.50ポイントもしくは0.75ポイントの利上げを実施する姿勢に影響を与えることはないでしょう。投資家は9月13日発表予定の8月の米消費者物価指数(CPI)へと注目が移ります。インフレの進行、あるいは鈍化具合によってはFRBによる金融政策に影響を与えることになります。
個人的には、予想を上回る堅調な雇用者数と、労働参加率の上昇による失業率上昇は金利上昇によって景気後退を招いたとしても、ソフトランディングの実現が可能なのではないかと思えます。また、平均時給が鈍化したことも好意的に捉え、インフレが頭打ちしている可能性を示唆していると考えます。
しかし、FRBも「継続したインフレの鈍化」がみられるまでは金融政策を変えるつもりはないと明言しているため、単月の結果に一喜一憂できないことには留意しておきたいです。
相場の見通しは暗い?
WSJによると、米国株の投資家が相場下落で利益を得るポジションを増やしていることから、センチメント悪化の可能性を指摘しています。そうなれば、最近の株価反発ムードがかき消され、不安定な相場の再来となるかもしれないとのことです。
そのデータとして、S&P500先物の売り越しがここ2、3カ月で増加し、2年ぶりの高水準に達している点を挙げています。これは、トレーダーが同指数の下落で利益を得る、あるいは少なくとも下落リスクをヘッジするポジションを増やしていることを意味します。さらに、直近の上げ相場を先導したハイテク株に連動するファンドへのショートポジションが増加している点も指摘しています。
実際、ジャクソンホールでのシンポジウム前後の相場では、主要3指数とも大きく株価を下げており、ハイテク株の比率が多いナスダック指数は特に下げが大きくなっています。
私の保有株もそうでしたが、ここ1ヶ月は一時の底値から大きく反発していました。一部の指数は底値から20%上昇したことで、定義上の強気相場となっていました。今回の反落が6月の安値をさらに下回るのか、一時的な下げなのかは分かりません。
ただ、私自身はインフレが即座に解消しないことも、FRBによる金利上げも想定内です。たとえ6月の安値を下回ろうとも今さら慌てることはありませんし、むしろ株数を増やす良い機会になると考えます。
長期で見た場合、インフレは既に頭打ちしている可能性が極めて高く、いずれかの時点で利下げは必ずなされます。若年層であることや、余剰資金で運用しているリスク許容度の高い投資家にとっては、相場の見通しなどノイズでしかありません。
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『まーしーによる米国株投資で億のほそ道』(2022年9月5日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による