イギリスのトラス首相が辞任の発表をしました。わずか50日足らずでの辞意表明で、イギリス国内は、大混乱しています。このニュースを聞いて、日本の首相で最短で辞任したのは誰かと気になり調べてみました。(『徒然なる古今東西』高梨彰)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
英首相、史上最短辞任、日本の最短は誰?
1ドル150円も歴史的ですが、イギリスのトラス首相辞任は史上最短。正式な辞任の日は定かではないものの、50日足らずでの辞意表明とは混乱そのものです。
となると、日本の歴代内閣総理大臣で最短は…。終戦直後の東久邇宮稔彦王(在位54日)は覚えていましたが、感覚としては「三つ指」の宇野宗佑さんかしらと。
首相官邸のサイトに、歴代総理と通算在位期間の一覧表があります。それを見ると、終戦直後を除いた最短は羽田孜さんの64日。連立内閣の不安定さが印象に残ります。
次が石橋湛山の65日。脳梗塞を患い、潔く辞職したとのことです。
その次が宇野さんで69日でした。
当時1980年代後半、「禁煙パイポ」のテレビCMが流行りました。3人の男性が登場して、最初の2人は「私はこれでタバコを止めました」と繋ぎ、オチの3人目が小指を立てつつ「私はこれで、会社を辞めました」という内容です。
パイポは小指、宇野さんは指三本(30万円で愛人にどうですか、の意)。短命政権と聞けば、やっぱり宇野さんの印象が強過ぎて。
イギリス、アメリカの政権が同時に不安定に
さて、イギリスでは新たな保守党党首選が来週にも行われる運びとのこと。しかもボリス・ジョンソン前首相が立候補するとかしないとか。これだけでも混乱長期化の予感です。
また、来月11月8日はアメリカの中間選挙。バイデン政権の不人気さから民主党が苦戦するのではとの不安も。共和党が多数を占めれば、議会とホワイトハウスにて「ねじれ」が生じます。
ウクライナ情勢は言わずもがな。ロシアのプーチン大統領は強硬姿勢を崩さず、五里霧中です。
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Fedの利上げは5%も視野に入った
国際政治が不安定だと、金融市場も落ち着いては居られません。相場を牽引する政策が不在となるためです。あっちこっちふらふらしちゃいます。
金融政策ではFed(米連銀)の利上げ路線が一段と鮮明に。昨日も利上げ継続発言が相次ぎ、Fedの利上げ終着地点(そのまま「ターミナルレート」なんて言葉が使われます)が4%台ではなく5%台まで行くのではとの見方も増えつつあります。
金融政策に敏感な米2年国債利回りは4.61%。米国債の代表選手、10年国債利回りは4.23%まで上昇しています。そりゃ外貨建て保険だって売りたくなるってなものです。
ドル円のチャートをご覧になれば分かるのですが、このところ上昇した後に数秒で0.5円単位の下落を見せ、間もなく値を戻す場面が多くなっています。
これが(覆面)介入なのか、アルゴリズム取引の仕掛けなのか不明ですが、日々相場を追うものとしては迷惑千万です。
もし介入ならば「やるなら、ちゃんとやって」ですし。そうでなければ、今の板(売り買いの頻繁さ・濃さ・多さなどを示す言葉です)の薄さを嘆くだけ。
来週に向けても、各市場で不安定な動きが続きます。
まとめ
・英トラス首相、史上最短の在位での辞任表明
・ジョンソン前首相の立候補が伝えられるなど、混乱長期化を予感させます
・日本の憲政史上最短はどうしても「宇野さんだっけ?」と思いがちでして
『徒然なる古今東西』(2022年10月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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