歴代内閣は、防衛費をGDPの1%程度に抑えてきましたが、与党・自民党が今後5年以内にNATO加盟国並み、つまりGDPの2%程度まで引き上げる方針を打ち出しています。ロシアによるウクライナ侵攻、中国の台湾併合問題、北朝鮮の危機などがその背景にあるようですが、果たして本当にそうなのでしょうか?(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2022年10月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ようやく招集「臨時国会」
10月3日、臨時国会が招集されました。「ようやく」招集されたというのが本音でしょう。
野党は8月中旬から憲法第53条に基づいて臨時国会の召集を求めていましたが、政府・与党は無視し続け、安倍元首相の国葬を終えた9月28日になって、ようやく10月3日の召集を伝達しましたが、会期幅は提示しなかったとのことです。
これもあり得ない話ですが、安倍政権のときは臨時国会が開かれなかったのですから、開かれるだけでも“マシ”というものでしょうかね。
会期末は12月10日、会期は69日となりました。
この間に予算策定はもちろん、インフレ、円安に対峙する経済対策、賃金上昇をどうするかはもちろんのこと、社会保障に少子化対策などの永遠に続く喫緊課題もあり、さらに旧統一教会問題やコロナ対策が加わり、課題は山積状態です。
これらの難題と向き合うなかで、最も肝心な来年度予算を策定しなければならないという、前人未到のスケジュールをこなしていかなければなりません。
今国会の会期末は12月10日ですから、これから経済対策をまとめるため、補正予算案の提出は11月下旬、審議日程はかなり窮屈になります。
なのに、鈴木財務相がワシントンで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議に出席するため12~14日に米国に出張することになり、なんと予算委員会が開かれないのです。
予算委員会は首相と全閣僚が出席することが前提だからです。
臨時国会招集日に首相による所信表明が行われ、翌日から所信表明を受けての各党からの質疑があり、「さあ、審議を始めよう」となるのが通例なのにもかかわらず、今臨時国会は、なんと開会早々1週間も「空白状態」となるのです。
なんでこういうことになるのでしょうか。
国会も内閣も調整ミス?
官僚のスケジュール調整ミスでしょうか。だとしたらあまりにも初歩的な問題で、G20日程なんて最初から決まっていたわけですから、あまりにも“運営”が回っていないと言わざるを得ません。
これは、いろんな方面での「組織の劣化」なのでしょうかね。
安倍元総理の国葬儀も、かなりロジスティックが回っていなかったらしく、進行等運営が“ボロボロ”だったそうです。
また今臨時国会においては、土壇場まで内閣提出法案の本数も直前まで決まっていなかったようです。
と言うか、野党の国対委員長になにも知らされていなかったようです。
通常、召集の1週間前には、与党側から会期幅や提出法案についての説明があるのが慣例ですが、召集日だけ決めて、会期末も提出法案も不明なままだったそうですよ。
結局、当初は25本程度と見込んでいた提出法案を直前に18本まで絞ったとのことです。
注目は、提出予定だった「私立学校法」と「日本語教育機関支援新法」を見送り、文科委員会で扱う法案をゼロにしたことです。
※参考:臨時国会は早くも“開店休業”…。「旧統一教会隠し」狙い、文科委員会で扱う法案ゼロの姑息 – 日刊ゲンダイ(2022年10月8日配信)
首相自身も、今月末のオーストラリア訪問を決め、来月はASEANやG20、APECなどへの出席を予定しています。
国際会議の日程なんて早くから分かっていたのに、官邸側が国会日程を考慮せずに出張を決めて、与党と情報共有していなかったというから呆れますね。
すべてが場当たりで、スケジュール感を描けていないようにも見えますが、頭の良い官僚が描くシナリオですから、そんな馬鹿なことはありません。
これらはきっと、何らかの意図を持った「わざと」ではないでしょうかね。