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岸田政権「防衛費倍増」計画の裏に年間予算を上回る“兵器ローン”返済か。米国兵器大量購入のツケを払わされる国民=原彰宏

財源はどうするのか

軍事費拡充の財源は、全体予算を膨らまさずに他の財源を削るのか、あるいは、全体の“パイ”を膨らませるのかで、見える景色は随分違ってきます。

前者の立場では、社会保障費は維持されるのか、どの項目の予算を削るのかという議論になりますし、後者は、国債増発ということで、さらなる財政悪化を招くことになります。

安倍元総理の「防衛債」といった考えは後者ですね。この流れを踏まえて、事実だけを確認します。

政府は今年6月に閣議決定した「骨太の方針」で、ロシアによるウクライナ侵略などを踏まえ、防衛力について「5年以内に抜本的に強化する」と位置づけ、北大西洋条約機構(NATO)が防衛費のGDP比2%以上を目標としていることにも言及。また先般の参院選で自民党は、「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」ことを公約に掲げた。

整理しますと…
・防衛費倍増はロシアによるウクライナ侵攻が引き金
・防衛費GDP「2%」の数値目標はNATO基準に合わせた
ということを、国会ではなく閣議決定したということ、その予算審議が今臨時国会で行われるということです。

財源に関しては言及されていません。

NATOの基準を日本に適応する意味はどこにあるのか、日銀の物価目標「2%」も、世界がそうしているからという理由ですし、数値目標って一体何なのでしょうね。

もし日本がNATOに加盟することを目論んでいるとしたら、どうなるでしょう。

一般的に同盟とは、ある同盟国が攻撃された場合に他の同盟国にも防衛義務が発生する、言い換えれば他国のための犠牲を覚悟する、極めて強固な関係になります。

他国に守ってもらう以上、同盟国として応分に貢献するのは当然であり、その「政治的意思」を示すものとして、NATOでは経済力に対する応分の貢献、「GDP比2%」をガイドラインとしています。

つまり、日本も、欧州諸国が他国に攻められたら、今回のようにロシアがNATO加盟国に攻め込んだら、日本の自衛隊が戦地に赴くことになるのです。

すでに集団的自衛権行使は認められるようになりましたので、同盟国である米国に一大事があれば、日本の自衛隊は進んで赴くことになります。

どうして自民党はそこまでして防衛費を倍増したいのでしょう…。この「問い」に真正面から答えるすべはあるのでしょうか。

なぜ自民党は防衛費を倍増したい?

今回防衛省は、これまで後回しにされがちだった装備品の維持・整備や弾薬の取得、研究開発、施設整備などについて、優先的に増額を求めるとみられています。

これらは戦争を続ける「継戦能力」に関わるもので、その後に、次年度予算以降も視野に入れて、戦闘に直接使われる装備品、つまり兵器に充てる予算を拡充していく方針なのではないかと見られています。

今のままでは演習に使う弾薬もない……自衛隊関係者はこう話しています。相手の拠点をたたく長距離巡航ミサイルなど「反撃能力」に多額の経費をかける可能性も考えられる。さらに、攻撃型無人機の開発、宇宙やサイバー、電磁波といった新領域の研究開発費の増額も視野に入ってくるでしょう。

これらを賄うためには、今の予算額では到底無理だという論評です。

また、すでに安倍政権下では、米国から大量の米国製兵器を購入しています。

かつて日米貿易に関して、安倍元首相とトランプ全米大統領との間で、こういうやり取りがありました。安倍元首相は在任中、日米同盟の強化を名目に米軍と自衛隊の軍事的一体化を推進、自衛隊が地理的制限なく海外に出向き米軍と一体的に活動できるようにするなど憲法や専守防衛を逸脱する取り組みを重ねてきました。そのことによる武装拡充にはお金がかかります。

また当時、対日貿易赤字への不満を示すトランプ前大統領に自動車の輸入関税引き上げを見送ってもらうため、長距離巡航ミサイルやF35戦闘機といった攻撃的な米国製兵器の大量購入も相次いで決定しました。周辺国を射程に収めるミサイルや、レーダーに映りにくいステルス性能で他国の領空侵入も想定するF35は敵基地攻撃能力を先取りするような兵器です。

自衛隊幹部は「現場で必要性を議論する前に、トップダウンで買ってから使い道を考える本末転倒のやり方が多かった」そうですよ。
※参考:米兵器を大量購入 対米追従で膨らむ負担<安倍政権 緊急検証連載>:東京新聞(2020年9月5日配信)

第2次安倍政権の前には最大で1,600億円だったのが、2015年度以後は3,500億~7,000億円の間で高止まりしていました。

Next: 膨らみ続ける日本の「兵器ローン」、年間の防衛費を上回っている?

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