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日本経済は「スマート農業」と円安で復活へ。生産・輸出拡大を後押しする国内企業4社とは?=田嶋智太郎

日本から海外に向けた農産品の輸出額は昨年初めて1兆円を超え、今年も昨年を上回るペースで金額を伸ばしている。もちろん、足元の円安も追い風であり、まさにチャンス到来。むろん、我が国の農業輸出と地方創生を強力にサポートする企業の取り組みにも今後は一層注目の目が向けられることとなろう。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)

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※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2022年10月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:田嶋智太郎(たじま ともたろう)
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。

加速する「スマート農業」の技術開発

幕張メッセで開催されていた第12回<農業ウィーク>というイベントに足を運んだ。

いくつかあるEXPOのなかで、個人的に興味を惹かれたのは「スマート農業EXPO」。折しも、政府が農産品の輸出拡大に向けて関係閣僚会議を開き、具体策を検討するよう農水相らに指示。今月末にとりまとまる総合経済対策に盛り込む運びとなっている。

既知のとおり、日本から海外に向けた農産品の輸出額は昨年初めて1兆円を超え、今年も昨年を上回るペースで金額を伸ばしている。

もちろん、足元の円安も追い風であり、まさにチャンス到来。今年1-8月の輸出額は前年同期比+14.6%の8,826億円と、引き続き年間で過去最高を更新するペースとなっている。

政府は2025年までに2兆円、30年までに5兆円に拡大する目標を掲げており、目標達成のためには一段の効率化、生産性向上の工夫や取り組みが欠かせない。

むろん、我が国の農業輸出と地方創生を強力にサポートする企業の取り組みにも今後は一層注目の目が向けられることとなろう。

以下に、今回のEXPOに出展していたいくつかの企業の事例を見ておきたい。

スズキ<7269>

昨年も同じ時期にEXPOに足を運び、なかでも目立ったブースの1つがスズキとダイハツが共同出展するものだった。

両社とも農業をはじめとする1次産業全般に欠くことのできない軽トラックを手掛ける。EXPOでは昨年に引き続き「空からのダイハツ、陸からのスズキ」と銘打って「農家の『嬉しい』をカタチに」を実現するための提案を行っていた。

スズキからは発売されたばかりの「スペーシア ベース」、ダイハツからは、「ハイゼットトラック」が出展されていたほか、マルチワークが可能な台車や農業用ドローンなどが展示された。

足元は、柱のインドで需要が旺盛なうえ、操業度の向上で回復が顕著。国内も復調傾向が強まっており、22年3月期業績の会社予想は今後、上方修正される公算府が大きい。ちなみに、1Q時における営業利益の通期予想に対する進捗率は38%。純利益は43%に達していた。

スズキ<7269> 日足(SBI証券提供)

株価は、8月中旬以降に一目均衡表の週足「雲」をクリアに上抜け、目下は「雲」上限の水準が下値サポートとして意識されている。上方修正を考慮した現在株価の水準に割高感はない。

※ほかに、今回のEXPOで目を惹いたのはデンソーやトヨタ紡織といったトヨタ自動車系の2社。この2社を含むトヨタ系の主要各社は、今年6月の定時株主総会において定款に新たな事業を追記。デンソーとトヨタ紡織は、農業関連の新事業を新たに記載した。

デンソーは2020年から自前のロボットを使って、トマトの自動車収穫の実証を行っている。また、トヨタ紡織は潮の満ち引きや重力の変化を利用した野菜の栽培について研究を進めている。

Next: 農業も「カイゼン」、トヨタ自動車系2社の将来性は?



デンソー<6902>

かねてデンソーは、自動車部品で培った画像のビッグデータ解析技術を活用して、ロボットによる工場の24時間操業で野菜を生産してきた。

天候に左右されにくい省人化の大規模工場を普及させることで農業のカイゼンを図る。

そこには内燃機関向けの事業が中長期で落ち込むという強い危機感がある。そこで以前から同社は“非デンソービジネス”と銘打って新しいビジネス領域を拡大。農業は、その「1つの柱」としていく計画を掲げて、関連事業に注力している。

足元は、電動化の追い風を受けるパワトレイン(エンジンやモーターで発生した回転エネルギーを効率よく駆動輪に伝えるための装置類)が好調。台湾のTSMC)の日本工場に出資を発表しているほか、パワー半導体の生産でも台湾のUMCと連携するなど、次世代自動車の競争軸としてノウハウ蓄積や生産能力の増強を急いでいる。

23年3月期は、売上高が前期比12.8%増の6兆2,200億円、営業利益は同40.7%増の4,800億円、純利益は同43.2%増の3,780億円と過去最高を更新する見通し。

デンソー<6902> 日足(SBI証券提供)

株価は、節目の6,500円処を下値サポートに切り返す動き。当面は、52週移動平均線を上抜けるかどうかが1つの焦点となる。

トヨタ紡織<3116>

内装品・自動車フィルター国内首位、内装品で世界4位。今年6月、アイシンの子会社のシロキ工業から主要完成車メーカー向け内装部品の商権を取得すると発表している。シート骨格機構部品の商権を主要6社に広げ、トヨタ以外への売上高を増やし、競争力強化につなげる。

好採算の新製品が収益に寄与するうえ、今下期以降はトヨタ自動車をはじめ各社の挽回生産に期待が寄せられる。23年3月期業績に対する1桁台の増益予想はかなり慎重と見られ、最終的に上ぶれすると見られる。

トヨタ紡織<3116> 日足(SBI証券提供)

現状でも株価水準は、予想PER=8.32倍、PBR=0.90倍、予想配当利回り=3.75%と割安感が強い。当面は、52週移動平均線を上抜けるかどうかが1つの焦点となる。

Next: 日本の農業はまだまだ進化する。注目すべき企業は?



ヤマハ発動機<7272>

10月6日に新型の産業用ドローンならびに無人ヘリをメディア発表。今回のEXPOでも2機種に加えて「果樹園作業支援自動走行車」などが展示され、注目を浴びていた。

既知のとおり、今年は12月に改正航空法が施行される運びで、ドローンの有人地帯における補助なし目線外飛行「レベル4」が解禁される。「レベル4」が実現すれば、より広い範囲で多用途なドローンの産業利用が可能になるということで、いま注目の度合いが一気に高まっている。

足元は、ベトナムやインドネシアでバイク販売が好調に推移するほか、為替の円安が利益を押し上げる。アルミニウムや鋼材など原材料高の影響は価格転嫁や半導体部品の調達状況の改善で吸収。北米で堅調なマリンも供給が回復する見通しとなっている。

ヤマハ発動機<7272> 日足(SBI証券提供)

株価は、足元で一目均衡表の週足「雲」をクリアに上抜けてきており、10月19日に年初来高値(3,020円)を更新している。足元の株価は、予想PER=7.20倍、実績PBR=1.19倍、予想配当利回り=3.85%の割安水準にある。

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image by:Scharfsinn / Shutterstock.com

田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』(2022年10月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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