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日銀は岸田政権にケンカを売った?黒田総裁の「円安容認」は危険な賭け、円安を軟着陸させる手段は2つだけ=斎藤満

日銀の指値オペの通告でドル円は一時125円まで一気に円安となりました。政府の物価高対策に真っ向対立した形となり、政府からの反発を受ける可能性は高くなっています。この過剰な円安をソフトランディングさせるためには、日銀には2つの手段が残されています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年4月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

ヘッジファンドを歓喜させた指値オペ

ヘッジファンドは日銀に足を向けて寝られません。

日銀の円安誘導策のために、安心して円を売ることができ、大きな利益を上げているからです。日銀様様といったところ。

2月24日のロシアのウクライナ侵攻以来、ロシア資源に依存する欧州に大きな負担とみられ、ユーロ安が懸念され、実際当初は1ユーロが1.1ドルを割り込みましたが、その後はむしろユーロより円が売られました。

ユーロは1.1ドル前後で横ばっているのに対し、ドル円は侵攻前の115円から指値オペを通告した28日には125円まで円安となりました。

特に3月18日の総裁会見で「円安は日本経済にプラス」と黒田総裁が述べて以来、円安が加速しました。そして米国金利高につれて日本の金利も上昇しましたが、そこへ無制限の指値オペを通告し、長期金利上昇を抑制する姿勢を見せたので、安心して円を売りました。

そしてドル円が125円に達すると、目的達成で今度は円を買い戻し、円が121円台まで戻しましたが、ここでも利益を上げたようです。125円は2015年半ばに当時のオバマ大統領が黒田総裁を介して円安をけん制した水準だからで、節目の水準とみられていました。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

日銀は岸田政権にケンカを売った?

日銀による指値オペのタイミングも問題でした。

オペを通告した翌29日に政府は関係閣僚会議を開き、物価高対策を指示しました。政府がエネルギーなどの価格高騰を何とかしようとしている時に、日銀が円安を助長するような指値オペを行ったことになります。あたかも、日銀は政府にケンカを売ったことになります。

物価高対策と言っても政府には輸入インフレを抑える手段がありません。財政資金で企業のコスト高を緩和するしかなく、それも財政の負担となります。

そこへ日銀が円安助長策をとれば、輸入物価、国内企業物価の上昇を加速させ、政府の財政負担はさらに大きくならざるを得ません。財務省出身の日銀総裁のすることか、との反発を呼びます。

実際、政府内には黒田日銀の円安放置の姿勢に反感が見られましたが、このところの円安誘導は一段と日銀への反発を強める結果となりました。

黒田総裁は円安の一段進行で、自らの立場を危うくするリスクを冒したことになります。

Next: 米ドル円は125円がひとつの目安。短期のドル円反落リスクに要警戒

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