電気自動車の動力装置「eアクスル(イーアクスル)」に注目が集まっている。代表的サプライヤーである日本電産は、新工場をメキシコに建設する方針。2024年3月期にも着工し、投資額は1,000億円規模になる見通しだ。足元で急拡大する需要に応ようと、イーアクスル事業に注力する企業は日本電産に限らない。そうした企業の幾つかをピックアップしておきたい。いずれも中長期的にイーアクスル事業が収益に大きく貢献することが期待される。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2022年11月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
「イーアクスル」採用拡大の流れに乗る企業
イーアクスルとは、モーター・減速機・インバーターを一体化したシステムで、ガソリン車のエンジンに相当するEVの中核装置。
最近は、ユニット全体の軽量&小型化・車両の開発効率化・コスト削減の観点から、イーアクスルとしてユニットで組んだ状態でサプライヤーから調達し、車両に組み付ける手法が広がっている。
代表的サプライヤーである日本電産は、電気自動車(EV)の駆動装置「イーアクスル」の新工場をメキシコに建設する方針。2024年3月期にも着工し、投資額は1,000億円規模になる見通し。
現在は中国と欧州でイーアクスルを生産しているが、北米にも拠点を構え、EVの普及が進む市場で供給体制を整える。
足元で急拡大する需要に応ようと、イーアクスル事業に注力する企業は日本電産に限らない。
以下に、そうした企業の幾つかをピックアップしておきたい。いずれも中長期的にイーアクスル事業が収益に大きく貢献することが期待される。
日本電産<6594>
イーアクスル事業の収益化はこれから.。
日本電産のイーアクスル事業は研究開発と顧客開拓を優先しているため、19年の事業開始から営業赤字が続いている。
そんななか、日本電産は生産コストを引き下げた第2世代品(9月末に量産を開始)への切り替えでイーアクスル事業の収益化を図り、24年3月期に黒字転換を目指す。
足元は、HDD以外の開拓が進む精密小型モーターと、空調など家電産業向けモーターなどが底堅く推移。
また、5G向けが好調な半導体検査装置や製缶プレス機、加えて今期から本格的に参入している工作機械事業が好調に推移する。
23年3月期は、売上高が前期比9.5%増の2兆1,000億円、営業利益は同23.3%増の2,100億円、純利益は同21.5%増の1,650億円と過去最高を更新する見通し。
株価は、年初に1万3,840円の高値をつけて以降、基本的に弱含みでの推移が続き、10月には7,515円の年初来高値をつけたが、そこからは切り返す動きとなっており、足元は上向きに転じてきている26週移動平均線をクリアに上抜けるかどうかが注目される。
Next: EV市場の成長はこれから。追い風を受ける日本企業は?
三井ハイテック<6966>
金型の超精密加工技術が強みの独立系電気機器メーカーで、足元は世界シェア7割の車載用モーターコアが北米を軸に好調続く。
トヨタを主要顧客とするHV・EV向けがもモーターコアを牽引するが、省エネ家電用も伸びる。
半導体のリードフレームを軸とする電子部品事業も旺盛な半導体需要が追い風となっており、今期も大幅増益見通し。
23年3月期は、2Q発表時に大幅な上方修正を行っており、売上高が前期比30.5%増の1,820億円、営業利益は同67.1%増の250億円、純利益は同63.0%増の192億円と過去最高を更新する見通し。
株価は、20年12月安値(=936円)から今年4月高値(=1万2,880円)までの大幅上昇に対する半値押しの水準で9月に下げ止まって切り返してきている。
住友ベークライト<4203>
住友化学傘下の樹脂加工大手で、半導体向け封止材料では世界首位に君臨する。
これまで培った技術を生かし、同社は世界初の「樹脂化eアクスル」を開発。同製品は、NEDOの2021年度「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」に採択された。同社の公式HPに、同製品の特性などを詳細に紹介する動画がアップされているので、ぜひ参照されたい。
樹脂製であることから、放熱性が高く、小型・軽量、低振動・低騒音などによって高効率で省エネ効果の高いeアクスルを実現することが可能となっている。
足元は、感光性ウェハーコート用液状樹脂などの半導体関連材料の好調に加えて、航空機内装部品が旅客需要の回復で伸びる。
医療機器やバイオ関連も好調で、今期の純利益は前期比14.8%増の210億円と過去最高を更新する見通し。
株価は、コロナショック時の安値(=1,811円)から今年1月高値(=6,140円)までの上昇に対する半値押しの水準で9月に下げ止まって切り返してきている。
足元の水準は、予想PER=9.8倍、実績PBR=0.81倍、予想配当利回り=2.74%と割安圏にある。
IJTT<7315>
いすゞ自動車の子会社で、いすゞ自動車への売上高が全体の約6割。
主力製品である産業・建設機械用エンジンは主要部品の粗材調達から加工、組立まで一貫生産する。
7月にEV商用車用『eアクスル』の専用ラインを設置し、量産を開始。
商用車向けは乗用車向けと比べてモーターのトルクや出力が大きく、用途によっても細かな対応が必要。
同社は、商用車向けeアクスルに特化して差別化を目指しながら、営業と開発の両部門が連携して商用車メーカーの要求に応える体制を整える。
足元は、国内のトラック向け鋳・鍛造部品が後半にかけ伸長し、タイもいすゞのピックアップ向け好調続く。
結果、23年3月期は売上高が前期比7.4%増の1,550億円、営業利益は同39.7%増の46億円、純利益は同9.6%増の31億円を見込んでいる。
株価は、500円前後の水準が当面の底値として意識されやすいと見られ、週足のMACDで見るとちょうどゼロライン前後の水準に位置している。
Next: 日立とホンダが接近?イーアクスル需要で成長が見込める企業
日立製作所<6966>
2021年元旦、日立製作所傘下の日立オートモティブシステムズとホンダ傘下のショーワ、ケーヒン、日信工業の計4社の合併により成立した日立アステモが発足。
この合併で日立とホンダの距離は一気に接近。ホンダも日立アステモの議決権の33.4%を所有し、議決権を有する。
今年7月の4~6月期決算説明会において、日立製作所の河村副社長CFOが日立アステモの今後について「連結内にとどめるか議論している」「IPO(新規上場)も含めて検討中」と述べていた点が興味深い。
9月下旬には、ホンダが2026年からのグローバル展開を予定している中・大型EV向けの電動アクスルを受注したと発表。
日立アステモは自社開発の高性能な一体駆動ユニットをHondaに納入する予定。
また、10月31日には一山自動車に対してジヤトコが供給を予定しているEVおよび日産e-POWER車向けの電動アクスル用のモーター、インバーターを受注したと発表。
日立製作所は、アステモの今期売上高を1兆8,500億円と予想しており、日立製作所全体(今期売上高10兆4,000億円)に対して発揮する存在感は増している。 ※2022年11月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
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田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
』(2022年11月25日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による