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米雇用統計で再び円安に向かう?GAFA大量解雇も中小の人手不足は継続、トレード戦略はロング(買い)が吉か=ゆきママ

ドル円は大きく下落し、8月下旬以来の安値となっています。先月11月10日に発表された米PCI(消費者物価指数)から流れが変わった格好です。今夜の雇用統計イベントを含め、今後の展望について解説していきたいと思います。(ゆきママ)

市場でインフレはピークアウトしたとの認識が加速

過度な円売り、そしてドル買いの巻き戻しが大きく進んでいます。

きっかけとなったのは先月11月10日に発表された米国の10月CPIで、物価上昇率が予想を下回ったことがあります。これによって流れが大きく変わっています。

傾向としてもインフレはピークアウトしつつあり、10月CPIがさらに予想以上に低下したことで、市場がFRB(米連邦準備制度理事会)の12月以降の利上げペース減速を織り込み、米国の金利(国債利回り)も低下、ドル円も下落することになりました。

さらに、今週のパウエルFRB議長の講演で、「利上げペースの減速が近く正当化される」「来年には住宅やサービスインフレが低下すると予想している」としたことを受け、一段とドル安が進み、ドル円も1ドル=134円台まで円高が進んでいます。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

一方でターミナルレート(利上げの最終地点)は9月より高くなったとしていますので、今のドル円の水準はややオーバーシュート気味にも感じられますが、それだけ過度にドル円が上昇してきたということでしょう。短期的には1ドル=125〜130円程度まで調整が進むことも想定されます。

そして、パウエルFRB議長も「10月のインフレデータは歓迎すべきサプライズだが、インフレが実際に低下していると安心するには、もっと多くの証拠が必要である」「労働需要と賃金上昇については緩やかな減速な兆ししか確認されていない」としていますから、今日の雇用統計が重要な鍵を握ることとなります。

今日の雇用統計で弱い数字が並ぶのであれば、まさにインフレ低下の新たな証拠となり、利上げペースの減速が確実視されますから、ドル円のさらなる調整下落の材料となりそうです。

Next: 先行指標をどう見る?大企業の解雇計画発表を織り込んでいる可能性も



大企業の解雇計画発表を織り込んでいる可能性も

それでは、先に発表されている雇用指標の数字を見ながら、今日の展望や戦略を考えていきましょう。

雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

全体的に数字は弱めと言えるでしょう。今回はドル円がかなり下落していることを踏まえると、雇用統計も弱めの結果を織り込んでいるかもしれません。

最近は大企業における解雇整理が進んでおり、アマゾンやメタ(旧フェイスブック)、グーグルなど、いわゆるビックテックでも解雇計画が発表されています。イーロンマスクが買収したツイッターでも、半数を超える従業員が解雇されたのは記憶に新しいところです。

一方、米労働省が11月30日に発表した10月のJOLTS(雇用動態調査)を見ると、解雇者・離職者の合計は139万人と9月分の133万人からやや増えたものの、未だに極めて低い水準となっています。

この背景として、コロナ下におけるビジネスの需要増から、大企業を中心に労働者が不足しないように大量の採用を続けたことが指摘されています。

つまり、コロナ需要が一服し、大企業を中心に過剰人員が解雇されて労働市場に流れ込んではいるものの、中小では依然として人手不足が続いており、採用も続いていると考えられるということです。このことを踏まえると、引き続き堅調な数字が並ぶことも十分想定されるでしょう。

トレード戦略の基本は「ロング(買い)」で

流石にドル円はオーバーシュート気味であり、135.00円に近い水準でショートするのは得策ではないでしょう。マイナススワップも大きく、ポジションを抱えているだけで損失が発生してしまいますからね。

初動は非農業部門雇用者数のヘッドラインで動いていくことになりますが、本来であればマイナスにでも落ち込まない限りは労働市場の減速と評価するのも難しいですから、+10万人以上の数字になるようであれば、そこまで下げない可能性も十分あります。

また、注目の平均時給(賃金上昇率)も予想値は前月比+0.3%・前年比+4.6%となっています。予想を下回って前月と比べて賃金の伸びがない、前月比+0.0〜0.1%の数字となった場合は賃金インフレ後退といった見方になりますが、+0.2%以上の伸びを示すのであれば、まだまだ賃金もしつこく上昇しているといった話になりそうです。

したがって、ドル円のトレード戦略としては、予想並かそれ以上の数字を想定してロング(買い)で勝負してみたいところです。予想並かそれ以上であれば、オーバーシュート気味に下落していますから、それなりに買い戻しが期待できるでしょう。

Next: 今夜の想定は1ドル=133.00〜137.00円。



今夜の想定は1ドル=133.00〜137.00円

ドル円チャート(日足)

雇用者数が予想を下回っても平均時給さえ予想を上回っていれば、136.00円近くまでは戻しやすそうです。初動で135円台半ばから後半で伸び悩むなら、半分ぐらいは利食いして利益を確保したいところ。

もちろん、平均時給が予想を下回るようであれば損切りして撤退です。200日移動平均線(134.50円)を今にも割り込みそうですが、割り込めば132.00円近くまで下値が伸びることもありそうですが、ツッコミ売りすると週末を跨いで大火傷もありそうなので、その場合は静観でしょう。

雇用統計発表前に200日線を割り込んでいた場合は、ポジションを持つなら発表直前の方が良さそうです。

いずれにせよ、やや行き過ぎ感のある値動きですし、雇用そのものは堅調なのでまずは買いからを想定していますが、雇用統計が弱い数字であれば底なし沼になりそうなので警戒したうえでトレードしていきましょう。

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image by:Ground Picture / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年12月2日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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