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日銀と政府が大喧嘩。黒田総裁「実質利上げ」と岸田首相「物価目標2%柔軟化」は日本株と円相場に何をもたらすか?=角野實

黒田日銀は20日の金融政策決定会合で、長期金利目標の上限を0.5%に引き上げることを決定。「利上げではない」と強調していますが、実質的な利上げでしょう。この決定の背景は、日銀と政府の喧嘩だと思います。今後のマーケットへの影響と合わせて解説します。(『 角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』)

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※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2022年12月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。

岸田首相「物価目標2%」変更検討の意味

岸田首相が物価目標2%の柔軟化を検討しているとの報道があり、 当メルマガ 当メルマガ でも数日前にこのことを取り上げました。

岸田政権が、政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めたことが17日、分かった。「できるだけ早期に実現する」としている2%の物価上昇目標の柔軟化を検討し、岸田文雄首相が次期日銀総裁と協議して内容を決める。

出典:岸田政権、2%物価目標の柔軟化検討 – 47NEWS(2022年12月17日配信)

賛成派の意見としては、10年間金融緩和を実施して、ちっともデフレ脱却できないのだから、ある意味「当然」。

反対派の意見、私の意見は、これは国際協調に反することであり、また訳のわからない判断を岸田さんは下した……という、2つの意見を記したと思います。

まず、財務省の考え方にこの国際協調という側面はあまりないだろうね、と思っていることが私の考え。理由としては、この物価目標2%が各国とも採用していることの意味を、財務省関係者からは聞いたことがないからです。

まず、各国、どこの国も物価目標を2%に置いているという意味から解説をしていきます。

どの国も物価目標が「2%」なのはナゼ?

黒田日銀になってから「物価目標2%」という言葉は誰でも聞いたことがあると思いますし、他方、「アメリカも2%」ということもマーケットに携わる皆さんは聞いたことがあると思います。

しかし、皆さんお感じになると思いますが、アメリカと日本ではまったく事情が違うのに、なぜ同じなの?という疑問がわくのが普通だと思います。

良い例が、コロナが発生した当初、トランプが「武漢ウィルス」と叫んだことを覚えている方は多いでしょう。その結果、アジア系への襲撃やテロが増えたことを覚えている方も多いと思います。現地の日本人が「怖い」と答えたことを覚えている方もいらっしゃると思います。

その一方で、バイデンはトランプの言質を否定し、今後「武漢ウィルス。中国ウィルス」と呼ぶことを禁止したのです。その結果、アジア系を米国で襲撃する事件が10分の1以下になったのです。

これはトップが、こういった言動をすると、民衆はそれに従う傾向がある……ということを示した事例です。

これを「物価目標2%」と各国も言い続けています。実際、アメリカはそうなった。しかし、日本は黒田総裁が言うように「デフレマインド」が抜けず、円安になってようやく2%になったのです。

じゃ、あなたなら、アメリカドルと日本円、どちらを買いますか?という問題です。

Next: 日銀と政府は喧嘩している?物価目標を下げたらどうなるのか



物価目標を下げたらどうなるのか

アメリカなら物価上昇が2%以上、物価が上昇するということはGDPも上昇し、将来は有望……と考え迷わずドルを選択するでしょう。

日本は、物価は0、GDPも伸びない、こんな通貨を誰が買うのか……ということになります。

実際、今回の円安は、日本人投資家が日本国内にめぼしい投資先がないということで、アメリカのビックテックなどに一斉投資したことが主因であると思われます。

そこに、岸田さんが、物価目標を仮に2%から1%に変更したらどうなりますか?

アメリカは2%を達成する可能性が高く、日本はその1%でも怪しい。となると、また今年の秋に起こったハイパー円安になってしまう、という危惧があったのです。だから、私は岸田さんのことを「音痴」と言い放ったのです。この説明を聞いて、私が音痴という理由にある程度は得心がいったと思います。

要は物価目標を2%以下にするというのは究極の円安政策であり、そんなことをすれば通貨の番人・日銀は反対するのに決まっているのです。

一方で、2%以下にすることに賛成する人たちも、10年間やっても、黒田はそのうち、そのうちと言っているけれどちっとも達成できない、こんな目標を撤廃しろ……というのは合理性があると思います。

でも、これをやれば、おそらく今度は150円ではなく200円の円安だろうね、ということが多分、私は内幕だと思っています。

このストーリーを実際に起こっていることに当てはめるとすべての事実と整合性があり、たぶん、間違いないだろうねと思います。

日銀の気味悪さ

今回のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策変更に関して、一番、気味が悪かったのは、「全員一致」でこのYCC政策の変更を賛成していることです。これ、おかしいよね?ということです。

まだ各委員のコメントがありませんのでなんとも言えませんが、黒田総裁がこれまで「YCCの変更はありえない」と言ってきたのに変更するのですから、1人や2人の反対がいてもおかしくないのに全員賛成。これ、なんか裏があるよね?と思うのが普通です。

参考までに、黒田総裁はマイナス金利も「導入しない」と言いながら導入し、そして今回も「YCC維持」と言って変更、誰も、今後は彼の言うことなど信用しないでしょう。私は、黒田総裁の記者会見の聞きにくい、痰を切る、声が小さい、言語不明瞭なのを見て、「この人はロクな辞め方をしないよ」と言っていたのですが、ほぼ、正解だろうと思います。それを10年前から言っているのですけどね。

おそらく、日銀の存在を政府に全否定をされたことによって、大きな亀裂が生まれているのだろうと推測することができます。

では、日銀はYCC変更によって何をしたいのか?ということを解説します。

Next: 日銀はYCC変更によって何をしたいのか?マーケットへの影響



日銀はYCC変更によって何をしたいのか

まず、社債の起債が円滑に行かなくなるので、今回の変更になったようですが、これは上げればわかると思います。まず、日本の金利はまったく魅力ではなく、そのうえに政府が2%目標を変更すると言っているということは、円安方針なのです。

金利が低くて、円安になる国の国債や社債など誰が買うのか?という問題です。だから、また今回の悪夢のような円安を防止するために、金利を上げたのであろうということです。

これが原因と考えれば、今後、円安が進行すれば、YCC誘導目標金利を変更するのであろうね、と考えるのが自然です。

これで、次回の利上げは円相場次第…ということです。黒田総裁は「変更はない」と言っていますが、誰が信用するか!ということです(笑)。

実質利上げでどうなる?マーケットへの影響

10年金利を0.25引き上げの効果を実際に考えてみてください。

100万円を10年借りて、毎年の金利負担がたった2,500円増えるだけの話です。1億円でも25万円。正直、物価上昇の方が大きいので「借り得」状態はまったく変わりません。だから、今後もYCC変更のリスクは必ずあります。

お金を借りても日本経済が盛り上がらないのは、このゼロ金利政策が間違っているということで、おそらく政府が日銀を全否定したことが全会一致の賛成になったのでしょう。「お前らは間違っている」と言われて面白いわけがないので、仕返しに利上げとやったのでしょう。ガキの喧嘩状態だよね、と思います。

この問題はともかくとして、実際の変化は何かありますか?ということです。つまり、放っておけば円安にも株高にもなるよ、ということなのです。あくまでも予測の段階で、円安・株高方針を撤回する必要はないと私は現時点で判断しています。<中略>

大きな流れでは日本株は安すぎますし、0.25上げてどれだけのコストアップになるんだよ、むしろ、今の3.6のインフレの方が深刻な問題だよ、というのが本音です。

ただ、車のローンや住宅ローンを抱えている人で、たった0.25%の上昇でも死亡者はかなり出るだろうね……ということです。そもそもそういう人たちは買ってはいけない人たちなのに、買わせた政府が間抜けなのです。それをまた税金で補填ですか?という展開になるのは見えています。

支持率が不安な岸田はそうせざるを得ないでしょうし、世論もそう言うでしょうね。やっていることは社会主義国家です。なんで自分が楽しむことに投資した人たちを政府が助けなければいけないのか、もうバカバカしいことこの上ないです。

冷静に考えてください。今回の利上げは、目先のインフレでのコストアップの方がひどい状況なのです。それでも日経は上昇した…という事実を考えれば、あまり影響はないでしょう。

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2022年12月配信分
  • 日銀と政府は喧嘩をしているのでしょ(笑)たぶん。(12/21)
  • 市場は何を間違えているのか(12/20)
  • インフレ目標2%の意味(12/19)
  • 今週の見通し(12/18)
  • 為替のキホン的な見方(12/17)
  • 円安は思い通りだが小売売上が・・・(12/16)
  • ドルの変調と円の変調(12/15)
  • おそらくドル円は二番天井を目指す(12/14)
  • 年末は荒れ相場になる見込み(12/13)
  • 何を基準に動くのかを考えるべき(12/12)
  • 大きな流れ(12/11)
  • 8日に株価があまりあがらない原因(12/9)
  • 7日転換を強化する(12/8)
  • なぜ7日で折り返すのかを考える(12/7)
  • 予定通りの円安です・・・が、株価は?(12/6)
  • 欧米はロシアにボロ負けだと私は考えています(12/5)
  • 来週の見通し(12/4)
  • さて問題の雇用統計(12/2)
  • ISM製造業指数の間違いやすい解釈を説明させてください(12/1)

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2022年11月配信分
  • FRBは何を基準に動いているのか?(11/30)
  • 景気が悪くても株価は上昇する(11/29)
  • インフレの対処法、金融政策(11/28)
  • ドルの計算方法を考えてみました(11/27)
  • 雇用統計は今から悪い、というのはわかっている(11/25)
  • さて、また動き始める(11/24)
  • インフレは終わるわけがない しつこい?(11/22)
  • なぜ中期的に円高になるのか、の話(11/21)
  • インフレが終わるわけがない理由(11/19)
  • インフレはなぜ続くのか?(11/18)
  • NATO攻撃の妄想劇場(11/17)
  • 今の状況はコロナショック前と同じ(11/16)
  • PPIと鉄板銘柄について(11/15)
  • どういう点に注意をしてマーケットにのぞめばいいのか?(11/14)
  • 週末特別号 今のマーケットはきちんとロジカルに理解するべきだと思います(11/12)
  • 今後の展開(11/11)
  • マーケットは事実でしか動かない(11/10)
  • 明日は消費者物価指数、インフレ指数(11/9)
  • 数字のマジックに騙されるなΣ(・ω・ノ)ノ!(11/8)
  • インフレの原因と結果 インフレの行方をみてみよう(11/7)
  • 雇用統計の見通し 予定通りの予測(笑)(11/4)
  • FOMC後のトレード戦略(11/3)
  • 未来をみるための裏技の話(11/2)
  • きょうはISM製造業(11/1)

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image by:Federalreserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons首相官邸ホームページ

角野實のファンダメンタルズのススメ 角野實のファンダメンタルズのススメ 』(2022年12月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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