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日本郵政の労組、待遇格差是正のため「正社員の有休削減」容認で広がる失望。モチベ低下が心配される現場には“叫びながら中指立てる”配達員まで出現

日本郵政グループの最大労組「日本郵政グループ労働組合(JP労組)」が、夏期・冬期の有給休暇を期間雇用社員に1日与える反面、正社員の有給休暇は1日に減らすという会社提案を、受け入れる方針を固めたと報じられ、大きな波紋が広がっている。

報道によれば、夏冬の有給休暇は現在、郵便業務につく正社員には3日ずつ、アソシエイト社員(期間雇用から無期雇用に切り替えられた社員)が1日ずつだが、期間雇用社員にはないとのこと。仮に会社提案の受け入れが正式に決まれば、正社員から期間雇用社員まですべて1日ずつになるという。

いっぽうでJP労組は、夏冬の有給休暇を減らす代わりに、正社員の基本給を月額で一律3,200円引き上げることを要求していたといい、これに関しては会社側が受け入れ、すでにこのうち1,600円分は、4月から実施されているという。

厚労省も問題視していない正社員の待遇変更

雇用形態の違いに関わらず、同じ仕事をする労働者は同じ賃金を得る“同一労働同一賃金”を唱えた「改正パートタイム・有期雇用労働法」が、中小も含めてあらゆる企業で適用されるようになったのが2021年4月のこと。

いっぽうで日本郵政に関しては、それに先んじること2020年10月、最高裁において「正社員と非正社員の待遇に不合理な格差がある」と認定されることに。

その判決を受けた日本郵政は22年1月、正社員の休暇を減らすことで待遇格差の是正を行うといった趣旨の案を、労働組合に対して提示。ところがそのことが広く報じられると、ネット上からは「ありえない!」との批判が噴出したのだ。

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そんな状況のなか、JP労組内では議論が続いていたようだが、最終的に夏冬の有給休暇に関しては、正社員の基本給を月額一律3,200円引き上げるという“交換条件”こそ引き出したものの、待遇格差是正のために正社員の有給休暇を減らすという会社側の提案を受け入れることになったようだ。

ちなみに、厚生労働省による「同一労働同一賃金ガイドライン」を見てみると、不合理な待遇差の解消にあたって留意すべき点として「正社員の待遇を不利益に変更する場合は、原則として労使の合意が必要であり……」との記載がある。

つまり厚生労働省としても、同一労働同一賃金の実現のために“正社員の待遇を悪くする”という手段を使うことは、問題視していないというか織り込み済みのよう。また今回の件も、日本郵政とJP労組との約1年半に渡る交渉の末でのことということで、一応のところはガイドラインに沿ったまっとうな形で待遇是正が達成されつつある、とも言えそうである。

「御用労組」との怒りの声も

とはいえ、普通“同一労働同一賃金”と聞けば、非正社員も正社員並みに待遇が改善されることを期待する人がほとんどといったところ。

しかしながら、実際のところは“みんな平等に貧しくなろう”といった方向になっていることに、SNS上からは「そこまでしてブラック化したいの?」「誰も幸せになれない」「御用労組」といった怒りの声が噴出。また「同一労働同一賃金やり始めた時に絶対こうなると確信していたわ」といった、端から期待などしてなかったといった、冷めた反応もあがっているところである。

いっぽうで、正社員が有休の1日減と引き換えに得た、基本給の月額3,200円引き上げ、年間だと約4万円弱のアップに関しては、「悪くない」といった反応もあるいっぽうで、「税金を考えたら有休のほうがお得?」「消化できない有休なら給料上がったほうが嬉しい」などと、様々な反応が飛び交っているようだ。

最近の日本郵政絡みの話題といえば、その傘下の各事業で働く人々のモチベーションがかなり下がっているのでは……との見方が度々あがるところで、その象徴として取沙汰されることが多い郵便物の廃棄や放置といった報道も、まったく止まることがないといった状況。

さらに、このタイミングで発覚したのが、バイクに乗った郵便配達員が一般の車両に対して叫びながら中指立てるという行為をしていたという不祥事。追い越しをされた腹いせだということだが、とはいえ仮にも勤務中にまるで煽り運転のような行動を取ってしまうことからも、配達員らが日々の業務のなかでかなり余裕がなく、相当荒んでいる状況なのでは……といったことも大いに想起されるところである。

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SNS上からあがる“外野の声”はおいとき、問題はこれらの待遇格差の是正を、その疲弊ぶりが伝わる正社員・非正社員を問わず日本郵政で働く当人らが、どう受け止めるかという点であることは言うまでもないことだるう。

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Image by: MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com

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