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アジア圏でも人気沸騰のシャトレーゼ。一見関連のなさそうなスイーツ&リゾートの2大事業がガッチリ噛み合い売上高は10年足らずで倍増以上の大躍進

菓子大手のシャトレーゼのケーキが、シンガポールなどの海外で大いに人気を博していると話題になっているようだ。

報道によれば、東京都と同じくらいの面積のシンガポールで、2015年の初進出から約8年ですでに42店舗を有するといい、同国内では随一の菓子チェーンとなっているとのこと。なかでも日本から空輸したいちご、白桃、さくらんぼ、ぶどう、柿などの季節の果物を用いた、いわゆる日本式のフルーツケーキが、現地では一番人気だという。

少子高齢化が進む日本のマーケットに危機感を覚えた末に決断したという同社の海外進出だが、今ではシンガポール以外でも、香港74店舗、中国4店舗、台湾1店舗、インドネシア23店舗、マレーシア17店舗など、アジア圏を中心に店舗網が広がっている状況のようだ。

「スイーツ界のユニクロ」との声も

ここ10年ほどの“街の洋菓子店”といえば、いわゆるコンビニスイーツの台頭によって苦境のところが増えたとされ、2019年には倒産数が過去最多になったというデータも。

しかしコロナ禍に突入すると一転、テイクアウトニーズにくわえて“プチ贅沢ニーズ”も拡大したことで、コンビニスイーツから客を奪うという傾向も。ただ、そのいっぽうでは小麦粉やバターなどといった原材料の価格高騰が、特に中小の洋菓子店にとっては利益圧迫要因となっている……という風に、世情に相当翻弄されているといった状況である。

そんななか、1954年に山梨県甲府市にて創業のシャトレーゼは、「低価格で高品質」を武器に好調を維持し続けており、近年では郊外だけでなく都内をはじめとした都市部にも進出。現在、全国に約750店舗、また海外にも160店舗を展開し、持株会社シャトレーゼホールディングスの連結売上高は、2015年が540億400万円だったのが、直近の2023年3月期では1,327億円と、まさに破竹の快進撃を続けているところだ。

またシャトレーゼといえば、国内外の同業他社の買収も積極的で、2012年にオランダの菓子製造会社「メートル・ポール」、2015年には九州地盤の菓子製造会社「さかえ屋」を、さらには2021年にはあのナボナで有名な「亀屋万年堂」も傘下に収めている。

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そんなシャトレーゼが低価格で高品質の商品を提供できる理由としては、契約農場から素材を直接仕入れ、自社工場でお菓子をつくり、それを全国の直売店に専用便で配送するといった、生産から物流、そして販売までコントロールする「ファームファクトリー」、さしずめユニクロやギャップのようなSPA(製造小売業)のスイーツ版といった仕組みの採用が大きいとされる。

実際、今回取沙汰されているシンガポールで人気の日本式のフルーツケーキに関しても、シャトレーゼが山梨県内の契約農家から年間を通して相当な量を直接買い付けていることから、フルーツを格安に調達できるといい、その分のコストを空輸に充てることで、新鮮なまま海外店舗に送ることが可能に。ゆえにフレッシュなフルーツケーキを現地で手ごろな価格で提供することができ、それが人気を博しているという格好のようだ。

スイーツ&リゾートの両輪でファンを囲い込み

いっぽうでシャトレーゼといえば本業の食品事業以外にも、2000年代からは各地の経営不振のホテルやゴルフ場などを精力的に買収するなど、リゾート事業にも本腰を入れるように。

その動きは、新型コロナの感染拡大が落ち着き、インバウンドが一気に復活し始めた今年に入りさらに加速しており、今年6月には甲府市内にある明治時代創業の老舗ホテルを買収し、自社ブランドのホテルにしたのに続き、7月にはJR長野駅の近くにも自社ホテルを開業。この長野市内の施設は、2022年に営業を終了した日本郵政系のホテルメルパルクの土地・建物を取得し、それを改装したものだといい、これでシャトレーゼ全体では国内10か所目のホテルになるとのことである。

ちなみにシャトレーゼでは、スイーツの購入金額によって溜まる独自のポイントサービスを行っているが、ポイントはこれらのリゾートの無料宿泊券とも交換できるようで、さらにこれらのホテルやゴルフ場では、シャトレーゼ製のケーキやアイスクリームなどのスイーツが食べ放題という、まさに甘党の方にとっては夢のような施設なのだという。

また同社では顧客会員向けに、グループのホテルに泊まっての工場見学や菓子づくり体験、さらにワインツアーなども企画し、人気を博しているということで、いわゆるシャトレーゼブランドの濃厚なファン層の形成にも余念がないというのだ。

10年に満たない短期間で、アジア各国においても知名度を上げることに成功したシャトレーゼだが、今後はそんな海外のファンが、インバウンドで同社のリゾートを大挙して訪れるという流れも、当然考えられるところ。スイーツとリゾートという、一見すると関連の薄そうな2つの事業を擁するシャトレーゼだが、その両輪は何気にガッチリ噛み合っているようだ。

Next: 「そのうち、シンガポールにもホテルできたりして」



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Image by:Sleepy Mandy / Shutterstock.com

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