今回は「投資1年目に知っておきたかったこと30選」をご紹介しようと思います。私も投資を始めてからけっこう年が経過しましたが、最初からこれを知っていたら、投資はずっと楽だったのではないかと感じることです。これを読めば、初心者の方は失敗を避け、投資の道をショートカットできるかもしれません。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
基礎知識編
<1. 単元未満株でも投資できる>
最初のポイントは、「単元未満でも投資できる」ということです。
株式投資を始めるために必要な金額について、よく「どれくらいから始めればいいのか」という質問があります。
昔は、株式を単元未満で取引することは一般的ではなく、取引可能な証券会社も限られていました。通常100株からの取引が基本で、例えば株価1,000円の株を購入するには1,000円×100株で10万円が必要でした。これは、一般の人々にとってはハードルが高いと感じられることがありました。1銘柄だけでなく、2銘柄や3銘柄を購入しようとすると、数十万円も必要になることもありました。
しかし、最近の証券会社の変化により、このハードルが下がりました。特にネット証券はその進化が著しく、例えばSBI証券など、いくつかのネット証券では買い付け手数料が無料という形態が一般的になりました。これにより、1株からでも手数料がかからずに投資ができるようになり、例えば株価1,000円の株を1,000円から購入できるようになりました。
これにより、多くの銘柄を購入することが可能になり、個人投資家にとってはステップアップや学習がしやすくなり、成功への道が開かれました。最初の段階からの投資ハードルが低くなり、手数料のかからない一株からの投資が可能になったことは、個人投資家にとって大きな利点となっています。
<2. 指値と成行の違い>
指値注文は、具体的な価格で購入または売却したい場合に、その価格をあらかじめ設定することです。一方、成行注文は、現在の市場価格で即座に購入または売却する注文です。
私は指値注文を好む傾向があります。なぜなら、できるだけ安く買いたいからです。
株式を購入しようと思っても、良いタイミングで購入することは難しいことが多いです。しかし、指値注文を設定しておけば、株価が指定した価格に下がったときに購入される可能性があります。これは待ち伏せ戦術のようなもので、焦らずに待つことができます。
売却の場合も同じです。急いで売却すると、株価が上昇する可能性があるため、指値注文を設定しておけば、価格が上昇したときに売却できるかもしれません。
もちろん成行の方が良い場合もあって、株価が急に下がって買い時だという時には、成行を使った方が良いということになります。また、単元未満株では指値注文が使えないこともあるため、注意が必要です。
指値と成り行きの違いを理解し、適切な注文方法を選択することが、投資を落ち着いて行うために重要です。詳細な注文方法については、投資を始める前に確認することをお勧めします。
<3. NISAは絶対に使え>
次に、NISA(少額投資非課税制度)について説明します。
通常の投資では利益の一部が税金で差し引かれますが、NISAを利用することで、その税金がゼロになります。これは投資を行う上で非常に魅力的な特典です。したがって、NISAを活用して投資を始めることをお勧めします。
昔のNISA(2023年まで)には制約がありました。通常のNISAでは、年間の投資額が最大120万円まで制限されており、一度購入して枠を使い切ると、その年は新たな投資ができませんでした。
しかし、2024年からは大幅に使いやすくなります。新しいNISAでは、一般NISAと積立NISAを併用でき、一般NISAでは240万円、積立NISAでは120万円まで投資できるようになりました。さらに、120万円までの制約から解放され、合計で1800万円までの枠が利用可能です。
つまり、NISAを利用する際に慎重に選択する必要は無くなり、とにかくNISAから投資すればよいということになり、判断が非常に楽になります。
また、注意すべき点として、銀行のNISA口座を開設している場合がありますが、これは個別株の取引には適していないことが多いです。個別株を取引したい場合、銀行のNISA口座では制約が多いため、SBI証券などのネット証券を利用するのが無難です。
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投資戦略と心構え編
<4. 金利に逆らうな>
投資を始める前に、私はかなりの勉強をしました。その中でよく耳にするのが、「相場を読めない」「市場を予想するな」という言葉です。
これには一理あると思いますが、一方で「金利に逆らうな」ということは確実性が高いと感じます。
金利は株価に影響を与える要因の1つです。簡単に言えば、金利が下がると株価が上昇しやすくなり、金利が上昇すると株価が下落しやすくなります。例えば、コロナショック時には金利を急落させた結果、株価が急騰しました。逆に、インフレが懸念されて金利を上げる必要があるときには、株価が下落しました。これは2022年の例です。
このような大まかなトレンドを捉えることが重要です。
金利が下がる兆候が見えたら、それに合わせて投資を検討することが賢明です。実際、アベノミクスなどの過去の経済政策でも、似たようなパターンが繰り返されてきました。細かいニュアンスは難しいかもしれませんが、大局的なトレンドを意識しておくことは重要です。
金利の動向を理解し、それに合わせて投資戦略を調整することが、成功の鍵となるでしょう。
<5. 大波には絶対乗れ>
大きな市場変動には必ず乗るべきだということです。
実際、投資は一直線に株価が上昇するわけではなく、波があるものです。株価が上昇し続ける期間もあれば、ほとんど上がらない期間や急激な変動があることもあります。この中で、大きな上昇波に乗らないと、投資からほとんど利益を得ることが難しくなります。
例えば、5年間のうちほとんど株価が上昇しない期間があったとして、その4年目に株式市場から撤退してしまった場合、その後の5年目の上昇を逃すことになりかねません。これはアベノミクスからコロナ禍の相場まで言えることです。
大きな上昇波が来たときに手を出しにくい心理的な障壁もありますが、この際、もし大きな波が来る兆候があると感じたら、少し遅れてでも参加するべきだと感じます。大きな波を逃すと、その波がしばらく再来しない可能性もあるからです。
常にすべてを株式に投資する必要はありませんが、大きな市場変動の可能性を頭に置いておくことが重要だということです。乗り遅れないように心構えを持つことが、投資の成功につながるでしょう。特にコロナショックの経験から、この点を強調したいと思います。
<6. 絶望の中に光あり>
絶望の中に希望がある、言い換えるならば、夜明け前は最も暗いということがあると思います。
株価が下落する時、実際には非常に絶望的に下がり続けることがあります。この状況では、「絶望」という言葉が相応しいと言えるでしょう。
株価が大幅に売られる理由は、投資家の動向に起因します。特に機関投資家は、損失を最小限に抑えたいと考え、急激な下落相場を早く脱したがります。なぜなら、下落相場に留まり続けることで、彼らのファンドのパフォーマンスが急速に悪化するからです。そのため、早く市場から離脱したいという考えが強まると、売り圧力が高まり、買い手が不足する状態が生まれます。
株価は買い手と売り手の相互作用に依存していますので、買い手不足の状態では、株価は継続的に下落します。つまり、下落局面では非常に強烈な下落が起こります。
しかし、夜明け前が最も暗いというように、売り圧力がピークに達し、売り手がほぼいなくなる段階に達すると、逆に買い手しかいない状況になります。これはつまり、株価が上昇する唯一の道となるわけです。
絶望的な局面ほど、その後に明るい希望がある可能性が高いと考えていただければと思います。
ただし、この際に購入する銘柄が実質的な価値を持っていることが前提です。バブル的な上昇後の絶望的な下落は救いようがないこともあるため、よく内容も見る必要はあります。
<7. 全部売らなくて良い、全部買わなくて良い>
相場ははっきりと予測できないことが多いのです。
先ほどの「絶望の中の希望」の話でも触れましたが、株価が下落したとき、底だと思って一気に買い込みたくなることがあります。しかし、実際にはその時点が底かどうかはわかりませんし、まだ下落の可能性もあるのです。
同様に、売る際も、株価が上昇したからといって、すべてを売る必要はなく、一部を残しておくことも検討すべきです。株価がまだ上昇する可能性があるなら、一部を保持しておくことは賢明な選択です。
人々は、0か100かという極端な考えに走りがちですが、中間の選択肢も存在することを忘れてはいけません。つまり、株価が下がったから少しだけ買う、ただし余力は残しておく、といった段階的なアプローチが、投資の安定感を高めるのに役立つのです。
売却の場合も同様で、株価が上昇してからすべてを売る必要はありません。一部を残しておけば、今後の上昇を期待できます。
私も投資家と接する中で、株価が大幅に下がった際、一気に多くの銘柄を買うかどうかについて迷うことがあります。しかし、根本的に、市場の底がどこかは予測できないのです。
したがって、段階的なアプローチが健全な選択肢であると考えています。
<8. 他の投資家の考えを想像する>
相場の話において、他の投資家の考えを想像することが重要です。
先ほど、株価が下がった際に売り手も買い手もいない状況について話しましたが、株価は基本的に売り手と買い手によって成り立っています。自分が買いたいと思ったとき、反対側の売り手がどのような気持ちで売ろうとしているかを考える必要があります。
株価が下落している場合、売り手の気持ちはさまざまです。たとえば、機関投資家は急激な下落に対応して損切りを考えるかもしれませんが、それは企業そのものが悪いわけではない場合もあります。
したがって、将棋のように相手の出方を伺いながら、相手の気持ちを考慮することは重要です。投資の売買も相手が存在し、相手の気持ちを想像することで、自分の戦略をより確かなものにすることができます。
<9. チャートも使いよう>
チャートを使う方法についてお話しましょう。
私は最初から長期投資を考えていたため、長期投資においてはチャートはあまり重要ではないと感じています。
確かに、チャートだけを頼りに投資をするのは難しいことが多いと思います。しかし、特に市場が極端な状況になったり、上昇や下降が急激な場合、チャートが重要な要素になることがあります。
たとえば、株価が急激に上昇して、その後にダブルトップやトリプルトップのパターンが形成された場合、2つ目の山が1つ目の山よりも低いとき、これは過熱感が収まりつつある兆候で、下落する可能性が高いことを示唆しています。このような場合、一時的な利確を検討することが重要です。
また、購入のタイミングについても、市場が静かで株価がしばらく変動しない状況が続いている場合、これを「岩の心電図」とも言いますが、このような時に買うことが多いです。なぜなら、静かな時期が過ぎると、通常は上昇する傾向があるからです。
要するに、チャートは、投資の判断材料の一部として検討するべきであり、特に極端な相場状況や過去のパターンが現れた際に役立つことがあるということです。
ただし、チャートに過度に依存することは避け、他の要因と合わせて総合的な判断を行うことが重要です。
<10. 物事には波がある>
物事には「波」があるということを考えてみましょう。
これは、有名な投資家ハワード・マークス氏が「投資で一番大切な20の教え」の中で強調している概念です。波とは、例えば景気の波や、半導体業界ではシリコンサイクルなど、周期的に上下する傾向があることを指します。これらの波は、さまざまな分野に存在し、周期的に繰り返される特徴があります。
金利の動きも似たようなもので、上がったり下がったりを繰り返します。こうした波の中で、特定の銘柄がどのように動くかを理解することは重要です。具体的な未来の出来事を予測するのは難しいことですが、波の存在を認識し、ある程度の仮説を持つことは可能です。
このサイクル的な考え方を活用することで、投資判断をより着実に行う手助けになるでしょう。
Next: 本当に良い銘柄は下がらない?理解しておきたい“銘柄選定”の大原則
銘柄選定編
続いて、どの銘柄を選ぶべきかについて解説していきましょう。銘柄選定において、特に「長期投資」にフォーカスした視点をお伝えします。
<11. 普通の銘柄で良い>
まず、大切なことは、普通の銘柄で充分だということです。
奇抜な銘柄や冒険的な投資を追求する必要はありません。有名な銘柄であっても問題ありません。一時的な価格の変動はあるかもしれませんが、長い目で見れば、それらの銘柄も成長し続ける可能性があります。
例えば、ユニクロのファーストリテイリングのように、過去にブームになった銘柄でも、現在でも安定的な成長を続けているものがあります。長期的な視点で考えると、このような銘柄に投資することは、十分に合理的な選択です。
特に長期投資の場合、極端に高値でない限り、これらの知名度の高い銘柄に投資することに躊躇する必要はありません。リスクを冒して理解しづらい銘柄に手を出すよりも、こういった知名度の高い銘柄が安定感があることを覚えておくと、投資判断に役立つでしょう。
<12. パクるのは「あり」>
他の人からアイデアを取り入れることは、私にとっても大いにありだと思います。
ただし、私もイナゴはダメだと思っています。「イナゴ」とは、上昇中または煽られている銘柄に無差別に投資することを指します。株価の単なる動きに追随することは好ましくないと思いますが、一方で、優れた分析を行っている人々から学び、そのアイデアを参考にすることは価値があると考えます。
私は、長期投資において、柳下さんという方をフォローしており、そのような専門家の意見を重視しています。また、投資信託についても、同じような考え方を持つ信託を参考にすることがあります。彼らはプロとしてしっかりと分析を行っており、その分析結果から銘柄を選定することは合理的です。
ただし、他人のアイデアを採用する場合でも、それを自分自身のものにすることが重要です。他人が売るタイミングを追随するだけでなく、その銘柄について自分なりに理解し、なぜそれを選んだのか、売ったのかを把握することが大切です。
他人のアイデアを参考にしつつ、自分自身が判断し、学んでいくことが、長期的な成功への道だと考えています。
<13. 本当に良い銘柄は下がらない>
さて、次に重要なことは、本当に良い銘柄は下がらないということです。
例えば、コロナショック時にも、それまでに注目していた銘柄がありました。私はできるだけ低い価格で購入したいと考え、そのような銘柄が下がることを期待していました。確かに、市場全体が下落することがあっても、これらの銘柄は本当にわずかな下落しかありませんでした。その後、これらの銘柄はむしろ上昇し続け、当時買わなかったことを後悔しています。
良い銘柄だと思った場合、その銘柄が下がらないのであれば、その瞬間に購入することが良いと思います。もちろん、下がることがあれば買いますが、大幅な下落を期待することは避け、少しでも下落があれば購入することを検討します。
下がらないということは、逆に安心感をもたらすことがあります。いい銘柄を見つけたら、遠慮せずにその瞬間に購入する姿勢が重要です。
<14. 下がったあとは「良い株」から上がる>
良い株は下がらないということと連動しますが、下がった後に上がる銘柄はその後の市場を引っ張る役割を果たすことが多いです。
<15. 「出遅れ株」を探すくらいなら「先導株」を買え>
出遅れ株を探すよりも、同じテーマの先導株を購入する方が、長期的な観点からも有益である可能性が高いと思います。
<16. 割安なものには罠>
一方で、割安な銘柄を見つける場合、その銘柄が割安に評価されている理由を徹底的に調査することが重要です。
バフェットが商社株を購入した例のように、割安の背後にある合理的でない理由を見抜くことが、成功のカギとなることがあります。
しかし、これを見抜くことは簡単ではないため、慎重に調査することが必要です。割安な銘柄には注意が必要であり、その中にはリスクが潜んでいることもあることを覚えておきましょう。
<17. 自分の目を信じること>
銘柄選定において、自身の直感を信じることは非常に重要です。
街で企業や商品について良いと感じる場合、それは信頼性のある情報です。なぜなら、株式投資は企業の成功に関連しており、消費者がその商品やサービスを支持することは、企業の良さを示す一因となります。
最近、私もこの考え方を実感しました。例えば、3coinsは実際に店にお客さんが多く、その結果、株価が上昇しています。アナリストの意見や評価も大切ですが、自分自身が信じることが何よりも重要です。
証券会社のアナリストは企業情報を提供しますが、これは二次情報であり、自分の経験や感覚に基づく一次情報とは異なります。消費者としての視点は、企業や商品の実際の魅力を理解するために非常に価値があります。
自分の感覚がアナリストの情報よりも役に立つことが多々あるのです。
Next: 投資の利益は我慢料?投資初心者が知っておきたい“リスク管理”
リスク管理編
<18. 天井3日底100日>
これは株式の特性の1つと言えますが、「天井3日底100日」ということです。
株式投資では、なかなか上昇しない期間が非常に長いことがあります。これは「敗者のゲーム」という本でも触れられています。株価が上昇するのは100日のうち3日ほどです。この3日を見逃すと、その後の上昇分はほとんど得られないということになります。
逆に言えば、100日くらいは鳴かず飛ばずということです。しかし、諦めてはいけません。株価が上昇する瞬間を待ち続ければよいのです。邱永漢さんという投資家も、「投資の利益は我慢料」と言っており、その通りだと思います。
必要なのは、上昇する3日を待つ忍耐力です。この3日が訪れるまで、じっくりとポジションを保ちましょう。その時が来れば、ついに報われ、幸せになることができるでしょう。
<19. 下がるときはとことん下がる>
株価の特性として、下落時は非常に厳しいことがあります。
投資家心理が作用して、株価が下落すると絶望感が広まり、さらなる売却が行われることがあります。「落ちるナイフを掴むな」という格言がありますが、冷静さを保つことも重要です。
上昇の機会を待つだけでなく、下降時にも焦らずに待つことが必要です。
<20. 下落トレンドでの上昇は「幻」>
下落トレンドでの上昇には注意が必要です。
これは私も経験したことがありますが、株価が急落した時にある銘柄が面白く見え、その銘柄が上昇すると、自分の考えが正しいと感じ、一部を購入することすらありました。しかし、その後さらに下落し、結局は元の価格の半分ほどまで下落しました。
これには「デッドキャットバウンス」という言葉が当てはまります。この言葉は、ダメになってしまった銘柄であっても、下落局面の途中で一時的に上昇することがあることを指します。
しかし、この上昇は実態が改善したからではなく、市場心理や取引の動きによるものです。通常、下落した銘柄には一部の投資家が空売りを行うことがあります。銘柄が一定程度下落すると、これらの投資家は利益確定を試みるために買い戻しを行います。この買い戻しによって株価が一時的に上昇することがありますが、実態は変わらず、再び下落する可能性が高いのです。
ただし、一部の例外では、これが大底になることもあります。この状況は通常、相場全体ではなく、個別の銘柄の不祥事や特殊な要因に関連しています。
したがって、このような現象に惑わされないように注意が必要です。
<21. 重要なのは「損切り」>
損切りは非常に重要です。皆さんには、投資家として成長するために、損切りの重要性を肝に銘じていただきたいと思います。
最初に買った銘柄が必ずしも良いものとは限りません。むしろ最初に買った銘柄を詳しく見ていくうちに、その銘柄の長所と短所が明らかになります。
多くの銘柄を見ていると、自分の中でどれが優れているかがわかってきます。優れた銘柄を見つけたら、明らかに劣る銘柄を保有し続ける理由はありません。より良い銘柄にシフトすることが重要です。
例えば、ウォーレン・バフェットでさえ、1994年から200銘柄以上に投資して、そのうち約150銘柄を売却しています。その多くは損切りであり、多くの銘柄に挑戦し、成功しなかった場合は他の方向に進む柔軟性が必要です。
これが、投資家として成長する方法なのです。
ただし、人々は心理的な理由から損切りをすることが難しいことがあります。この心理的な障害を克服することが、投資家としての成長に不可欠です。ですので、皆さんには損切りの重要性を心に刻んでいただき、投資家としての成長を目指してほしいと思います。
Next: 情報は遅くて良い?投資家として成功するための“情報収集”
情報源編
<22. 決算で重要なのは決算そのものではない>
決算と言えば、今年の売上が何%増加し、利益が何%増加したかなどの数字が注目されることが多いかと思います。
しかし、決算が良かったにもかかわらず株価が下落したことは経験したことがあるのではないでしょうか。
実は多くの投資家、特に機関投資家は必ずしも決算そのものに焦点を当てていないことが挙げられます。特に期末の決算については、過去の決算よりも将来の見通しに重きを置くことが一般的です。
つまり、昨年の決算が良かったとしても、今後の展望が不透明である場合、株価が下落することは珍しくありません。
また、KPI(Key Performance Indicators、主要業績指標)など、決算に直接現れないが将来の業績を示唆する指標が悪い場合も、株価に影響を与えることがあります。投資は基本的に未来を見据えるものであり、過去の数字も重要ですが、将来を予測するための材料であると考えるべきです。
企業は決算の際に今期の業績予想を発表しますが、これは将来を予測するものであり、長期投資においてはさらに2年や3年後の業績が重要です。将来を見越した投資戦略を考える際には、この点にも注意が必要です。
<23. 日経新聞はあまり役に立たない>
役に立たないという意味は、まったく使えないということではもちろんないですが、日経新聞を読んでいても、株式投資が上手くいくとは限りません。
その理由は、日経新聞が取り上げる銘柄は主に大手企業に焦点を当てているためです。確かに大手企業に関する情報は多くの人が知りたいことであり、関心が高いです。しかし、日経新聞に載る情報は既に広く知られていることが多く、新たな投資の機会や情報としてうまみはありません。
投資において有用な情報を見つけ出すためには、、一般の投資家やビジネスマンが見逃しがちな情報を探す必要があります。
<24. マネー雑誌は使いよう>
マネー雑誌には、個別の銘柄情報や投資家の取り組みが詳しく載っていることがあります。これらの情報は、日経新聞には掲載されていないことが多く、投資家にとって貴重な情報源となります。
また、掲載されている投資家の投資スタイルや特性をトレースすることで、自分に合った投資法を確立することにも役立ちます。自身の投資スタイルを見つけ、他の成功した投資家の取り組みを学ぶことで、投資において成功するための手助けとなるでしょう。
<25. 情報は遅くて良い>
特に長期投資において、情報は遅くても問題ありません。
投資は情報に基づく競争でもあるため、早い情報を入手したいと思うかもしれません。しかし、長期投資の観点からは、むしろ情報が遅くても構わないと思います。
長期投資において、短期的な情報は必要ありません。一瞬のトレンドに振り回されることなく、冷静に将来を見越した判断を下すことが大切です。たとえば、半年前に大きな注目を浴びていた銘柄が現在ではブームが去ったり下落していることがあります。しかし、その企業が本当に優れた企業であれば、その後も成長し続ける可能性が高いです。そのような場合、過去の情報を参考にして、安い価格でその銘柄を購入できるかもしれません。
このような視点からだと、時間的な遅れはむしろ有利に働くことがあると言えます。長期投資家としては、過去の情報や過去数年間の企業の活動をじっくり分析し、将来の成長ポテンシャルを見極めることが肝要です。
情報を適切に評価し、投資判断に結びつける能力こそが、長期投資家にとって重要です。
Next: 「他人と比べない」資産を増やし続けられる投資家の“メンタル”とは
メンタル編
<26. 自分の買値を考えるのは無駄>
自分の購入価格に固執することは無駄だと私は断言します。購入価格にこだわること、つまり現在の利益や損失を気にしすぎることは避けるべきです。
株価の動きは、あなたの購入価格を考慮しません。株式市場では、株価は供需に基づいて変動します。現在の利益や損失にとらわれず、単純に市場の動向や銘柄の実力を判断しましょう。
利益や損失に関わらず、「良かったら買う、悪かったら売る」に限ります。
<27. ナンピン買いを急ぐな>
ナンピン買いを急ぐことは避けるべきです。
前述したように、下落局面では株価はとことん下がることがあります。現在の買値よりも安いから買いたいという感情に駆られがちですが、グッとこらえることも大事です。
下落局面では、ますます安い価格で購入できるかもしれないという視点で待つことが大切です。現在の保有銘柄が損失を出しているかもしれませんし、平均単価を下げたい気持ちもあるでしょうが、平均単価を下げることそのものには意味がありません。
個別の銘柄よりも、全体的な投資結果が重要です。個別の銘柄が損失を出しても、全体で勝利できれば十分です。
下落局面では、ナイフ床に刺さるのをじっと待つことも良い戦略です。
<28. 上がってからでも買え>
逆に、上昇トレンドでは、自分の購入価格を超えていても、良い銘柄であれば積極的に購入することが重要です。
最初の購入価格に固執せず、市場全体の動向や銘柄の実力に注目し、冷静な判断を心がけましょう。投資は感情に振り回されないことが成功の鍵です。
<29. 成果をあげるのは一握り>
結局、成功するのはわずかな一握りです。
前述の通り、100のうち90銘柄が損失を出しても問題ありません。実際、複数の銘柄に投資する場合、収益を上げるのはその中のごく一部の銘柄に限られることがあります。
たとえば、ウォーレン・バフェットですら、200銘柄以上に投資しているものの、最近の利益の大半は「Apple」のようなひとつの銘柄に集中しています。
したがって、多くの銘柄を保有中でも、1つでも大きな利益を上げる銘柄があれば、それで充分です。そのため、損失を出した銘柄は損切りなどの手法を駆使して早めに切り離し、自信を持った銘柄に集中して育てることが大切です。損失を取り戻すために、損失を抱えたまま銘柄を保持する考え方は避けるべきです。銘柄が悪いと感じたら、その場で売却し、良い銘柄に資金を振り向ける方が賢明です。
最初に単元未満株を使うことを提案したのは、多くの銘柄を調べる機会を作り、その中から成功の銘柄を見つける可能性が広がるからです。
<30. 他人と比べない>
Twitterなど他人の成功を見ると、つい比較してしまうことがあります。他の人が成功しているのに、なぜ自分は上手くいかないのかと自問自答してしまいます。
しかし、他人の成功が持続する保証はありません。実際、成功は一時的なものであることが多いです。あなたが今、上手くいかないかもしれませんが、それも長く続かない可能性もあるのです。
成功は一時的なものであることを考えると、他人の成功を追いかけるよりも、自分の道を信じて進む方が良いです。他人と比べて焦ることは、成功の3日を逃すことにつながりかねません。また、他人が成功の時だけを見ても、全体像が見えません。成功も失敗も含めて、全体を見て学び続けることが重要です。
他人と比べることにはあまり意味がなく、自分の成長と進化に集中し、投資家として成長を遂げることが大切だというのが私の考えです。
最後に
30個、ご紹介させていただきました。1つでも、あなたに共感できる内容があれば幸いです。初心者の方は、ぜひこれを参考にして、自分に合ったアイデアを見つけていただければと思います。
長期投資の視点から述べていますので、短期投資をお考えの方には違うアプローチが必要かもしれませんが、その違いを議論することも、投資家としての成長につながるでしょう。
(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年8月21日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。