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ラーメン店の倒産、3.5倍に急増。燃料費・食材価格等が軒並み高騰するなか、背脂など「無料が当たり前」といった客層が相手ゆえに価格転嫁もままならず

2023年1-8月のラーメン店の倒産が、前年同期比で3.5倍に急増していると報じられ、ラーメンファンの間で衝撃が走っているようだ。

報道によれば、同期間のラーメン店の倒産(負債1,000万円以上)は28件で、前年同期比250.0%増に。2023年に入り、コロナ関連支援の縮小・終了にくわえ、食材価格や光熱費の高騰、人件費の上昇が深刻さを増したことが、倒産急増に繋がっているようだ。

資本金別では、「1,000万円未満」が26件と9割(92.8%)を占め、また従業員別でも「5人未満」が25件と約9割(89.2%)にのぼるということで、小・零細規模のラーメン屋さんの息切れが目立つ状況のようだ。

スープ仕込みなどでガス代が特に嵩むラーメン店

飲食店を巡る苦境といえば、つい先日には焼肉屋の倒産が、今年に入り急増しているとも伝えられたばかり。焼肉店もラーメン店も、食材価格の高騰にくわえ人件費の上昇がその経営を圧迫し、さらに中小零細規模の店がまず真っ先に息切れを起こしていることなど、その共通点は多い。

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いっぽうでラーメン店特有の原因ということでいえば、そもそもこの業態は営業中に麺を茹でるのはもちろん、店を閉めている時もスープの仕込みもしなければならないということで、とにかくガス代が嵩むのだという。それが近年のエネルギー価格の高騰による電気・ガス代の値上がりで、より経営を圧迫する事態となってしまっているようだ。

さらにラーメン店といえば、以前から“1,000円の壁”というワードが大いに取沙汰されているように、「ラーメンは安価な庶民の食べ物」といったイメージが客側も店側にも依然強い。そのことから、物価や人件費などが高騰した分を価格に転嫁するということが、他の飲食店と比べてもかなりやりにくいといった点も、その経営に暗い影を落としているよう。

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そもそもラーメン業界といえば、客単価の低さに関わらず市場規模が大きいことから、客の利用頻度が非常に高い、すなわち1人の客が様々な店に食べに行くといった傾向があるとされる。そのため、他店との比較が他業種よりもされやすいうえに、さらには客がある意味で“プロ化”しやすく、それに伴って求められるラーメンのクオリティも上がっているといった状況。

それだけに店側も、物価が高騰するなかでもおいそれと材料費をケチったりすることができず、しかも値上げするのは憚られるとあって、それゆえにどんどんと儲けが薄くなり経営体力が削がれていく……といった負のスパイラルに陥っていくというのだ。

“背脂論争”で表面化した店と客との意識の齟齬

そんななか、つい最近だと「ラーメン店の背脂トッピングは有料、それとも無料?」といった議論が、SNS上で大いにヒートアップしたのも記憶に新しいところ。

論争のきっかけとなったのは、“背脂有料”の記載がないのにも関わらず、追加料金を取られた事に対して、どこかのインフルエンサーが不満を示す投稿を行ったこと。それに対し、とあるラーメン屋の店主が「本来は無料な事が感謝されるべき。有料なのは当たり前。くらいの感覚でいるべき。勘違いするな」と声を上げたのだ。

いわゆる二郎系ラーメンなど、世にあるラーメンの種類によっては、背脂の追加が店側のサービスとして無料となっているものも存在する。ただ、背脂の原材料となる豚脂も当たり前だがタダのものではなく、ここ近年は他の食材と同様に価格が高騰しているといい、2年前と比較すると2倍以上の価格になっているとのもあるようだ。

このように昨今は背脂のみならず、無料サービスや無料トッピングの維持がコスト的に明らかに厳しくなっており、そのことは客側にも、ましてや自称ラーメン通といった手合いなら、漏れ伝わっていてもおかしくもないところ。にもかわらず、それでも「無料サービスは当たり前」とばかりに、この件に関しても「有料ならメニューに書いておくべき」といった、あくまで店側の責任を問う意見もかなり多いというのだ。

事の是非はともかくとして、そういった店側と客側との意識の齟齬も、物価高騰分の価格への転嫁を難しくさせ、ひいてはラーメン店の経営を苦しめる一因となっているとも言えなくも無さそうである。

Next: 「値上げしたらもう終わりなんやろな」



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