安倍さんは一昨年「再び(増税を)延期することはない、ここで皆さんにはっきりそう申し上げます」とおっしゃいました。一国の総理が果たしてこれほど露骨な形で、国民との約束を反故にしてよいものなのでしょうか。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
日本経済にプラスに作用するかどうか疑わしい消費税の増税再延期
反故にされた国民との約束
どうやら消費税の引き上げが、また先送りされたようですね。
安倍さんは一昨年確かにおっしゃいました。
「再び(増税を)延期することはない、ここで皆さんにはっきりそう申し上げます」
リーマンショックや大震災級の出来事がない限り、という注釈が付いていましたが、どう考えても現状がリーマンショック級の危機だとは思えません。
一国の総理が果たしてこれほど露骨な形で、国民との約束を反故にしてよいものなのでしょうか。
私にはなぜ安倍さんが、そこまで増税の先送りにこだわるのか理解できません、何か特別の思惑でもあるのでしょうか。
純粋に経済に与える影響だけを考えても、果たして増税の延期がプラスに作用するかどうか…この点すら疑わしいと思います。
確かに消費税の引き上げは、大半の国民にとって心地の良い決定かもしれません。
日本人は楽天的ではない
でも、心理の奥底をのぞき込めばどうでしょう。
一時的には税金が助かりますが、我が国の財政が相当ヤバイことになっていることなど小学生でも知っています。
本来上げなければならない税金を上げなかった場合、この国の将来がどうなるか、多くの国民はすでに気づいているはずです。
そのような状況において、安倍さんが目論むように、増税見送り→景気の下支えと上手く運ぶものでしょうか?
日本人はそんなに楽天的ではないと思います、むしろ逆に将来に備え、ますます消費を控える可能性すらあると思います。
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参院選後に払うツケ
安倍さんは7月の参院選で勝つかもしれませんが、その先が心配です。
(前回同様に)増税延期の効果は出ず、そればかりか日本経済が元のデフレ状態に戻る可能性すらでてきたと言ってよいでしょう。
あいかわらず構造改革に本腰が入らず、金融政策頼みが続くのではないでしょうか。
その結果日銀の黒田さんへの負担が強まり、マイナス金利や紙幣増刷(QE)への圧力が強まることになるでしょう。
これだけQEを続けたにもかかわらずデフレに戻るようなことがあれば、果たして次に打つ手はあるのでしょうか。
日銀への信頼が低下すれば、金利は上がり、円は売られることになります。つまりは円という貨幣への信認の喪失です。
私は危機を煽るのが好きではないのですが、今回の増税延期には強い危機感を持たざるをえません。私たち個人は、しっかりと自衛の手段を用意しておく必要があるのではないでしょうか。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2016年6月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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