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消費増税延期は大正解! バブル的上昇へとスタートを切った日本経済=児島康孝

消費税の増税は延期以外にありません。いまの日本は、北欧などと比べて生活の最低保証部分が少ないぶん消費税の影響が大きく、ストレートに貧困化に繋がるからです。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

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現状は厳しい日本経済、しかし若手正社員は一足先に景気上昇中

これからの景気はバブル的に上昇へ

日本経済は、長いデフレから反転し始めています。

現状の理解は、マクドナルドが格安のハンバーガーを販売した時期、今から10年~15年前を考えるとわかります。

あの当時、ハンバーガーなどの価格が下がって、消費者には「朗報」でした。

価格破壊という言葉が流行り、モノが安く買えるということで歓迎ムードさえありました。

当初は、賃金のデフレが時間差を置いて進む前でしたから、時間差が機能して良い面だけが出ていたのです。

現在は、まさにこの反対です。

デフレから脱却する当初は、あまり景気が良くなくて、賃金や雇用もなかなか良くなりません。

物価の上昇が、一部、先行もするでしょう。

収入が増えない中での物価上昇は「悲報」です。

しかし、これは時間差の問題ですから、今後は景気が上昇し、賃金や雇用も回復することになります。

日本経済は長かったデフレから、ようやく反転する時期に来たのです。

転換点はマイナス金利の導入

転換点となったのは、マイナス金利の導入です。

マイナス金利を導入するまでは、最低金利がゼロとなり、これより下げることができませんでした。

つまり、デフレで物価が2%下落した場合、実質金利は名目がゼロでも、実際はプラス2%(物価がゼロ%の前提)と同じことです。

ですから、実質金利でみますと、ゼロ金利は金融緩和になっていなかったのです。

このため、大企業はキャッシュをため込み、事実上の実質高金利を享受しました。

キャッシュのまま持っていると、年月の経過とともにキャッシュの価値が増す(=物価の下落で購買力が増す)という時代だったのです。

そのような時代には、何かにつけて、設備投資や雇用よりも、キャッシュをため込むことが経済的に合理的で重要、ということになります。

これが、アベノミクスが機能しなかった理由です。

しかし、マイナス金利を導入しますと、実質金利の調整が可能となります。

デフレ(物価の下落)が5%なら、金利はマイナス3%にして調整できますし、デフレが8%なら、金利はマイナス6%というように対応できるわけです。

これがゼロより下げられないと、デフレの場合、なすすべがありません。

例えば、デフレが(物価下落)が5%で、金利が0%なら、実質金利はプラス5%。高度経済成長の時期と同じような高い金利では、不況期の経済の刺激はできません。

Next: 若手正社員は一足先に景気上昇中、好景気は他世代にも波及へ



若手正社員の好景気は他世代にも波及へ

マイナス金利の効果で、景気は上昇に転じています。

このため、若手20歳とか30歳の正社員については、雇用は好転しています。

日本の場合、アメリカと違って一部の年齢に雇用が集中する傾向があり、すぐに他の年齢層に拡大するとは考えにくいですが、着実に景気上昇は始まっています。

こうして、20歳、30歳の雇用が満たされれば、40歳、50歳へとゆっくり波及してゆきます。

すると、これまで人員削減や非正規化ばかりを進めていた企業に、逆のことが起きます。

正社員でないと採用ができないし、人員削減をしてもライバル企業が雇用を吸収し、逆にやられてしまう、ということになります。

もちろん、ブラックバイトやブラック企業は、成立しにくくなります。

マイナス金利を批判する論者は多いようですが、マイナス金利を導入しないと、いつまでもデフレの暗い社会が続くことになります。

その場合、戦争でデフレから回復というのが、過去の歴史的なパターンです。

ですから、マイナス金利の批判論者には、「それでは、戦争でデフレから回復するのが良いのですか?」と聞いてみたいですね。

消費増税は延期以外になし!

消費税の増税は、延期以外にありません。

まだ、そこまで日本経済が強くないためです。

また、消費税については、今後の日本の姿をどうするのか、ということも絡んできます。

つまり日本は、支出と収入の出入りが大きい生活状況です。

出入りが大きいということは、収入で入ってきても、家賃を支払ったり、学校の授業料を支払ったり、お金の動きが激しい構造です。

こういう構造のままで消費税を上げますと、お金の動きのたびに課税されることになりますから、経済の動きに「重り」をつけたように作用するわけです。

お金が動くたびに、動きが削がれる、という状況です。

一方、欧州、とくに北欧などでは、学費が無料、保育料が無料だったり、貧困の最低生活の保証があったり、年金生活も保証されたりしています。

つまり、お金の出入りが少なく、生活の中で無料の部分が多いので、消費増税はあまり影響しないのです。

むしろ、高額の消費税でも売れるものを、ということで、消費税の高さを超えてデザインや付加価値が高いものが売れる社会であり、これが北欧の企業の競争力にもなっています。

消費税が高くても、売れるものを販売する企業は、世界的な競争力も高くなります。

ところが、日本の場合、生活の最低保証部分が少ないので、ストレートに貧困化が進みます。

貧困化で、生活費を何とかしなければならない人が増え、低賃金であっても仕事を求めざるを得ませんから、賃金デフレや非正規雇用化が加速するのです。

昔は、定年まで勤める「終身雇用制」が主流でしたから、こうした問題は企業の保護・保証でクリアされていました。

それが、日本企業の強みでもあったのですが、「終身雇用制」を放棄し、崩壊してしまったわけですから、公的なセーフティーネットを新設しなければ、個人消費は底抜けし、貧困化が進むというわけです。

ですから、消費税について考える場合は、日本の今後について、カネの出入りが少ない北欧型にするのか、あるいは、カネの出入りがある社会(税負担が少なく、公的な保証も少ない社会)がいいのか、じっくり議論する必要があるでしょう。

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2016年6月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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