年末年始、注文が薄い中でドル円は乱高下となっています。そして、月に1度のお祭り相場と言われる雇用統計ですが、FRBの利下げの織り込みが焦点となる中で、いつも以上に重要な意味を持ちますから、しっかりこの記事を読んで取り組んでいただければと思います。(ゆきママ)
️利下げ3月スタート、今年6回の利下げ織り込みは行き過ぎなのか?
年明けのマーケットが急激に巻き戻されたのは、1月1日の能登半島地震による日本の早期マイナス金利解除期待が後退したことによる円売り。
そして、もう1つがFRB(米連邦準備制度理事会)による、3月利下げ開始、合計6回(1.50%相当)の引き下げは織り込み過剰である、という懐疑的な見方が増え始めたことによるドル買いがあります。
米ドル/円 日足(SBI証券提供)
このドル高に関しては、年末に売られ過ぎたことによる反動や、年明けの起債ラッシュに伴う金利高も影響していますが、やはり一番大きいのは米国の利下げ見通しというテーマでしょう。
昨年末、Fedウォッチャー(FRBの金融政策の動向を予測するアナリスト)のニック・ティミラオスは、PCEコア・デフレーターを直近6ヶ月分を年率化すると1.9%になっていると指摘しました。
この経済指標はFRBが最重要視するインフレ指標であり、2.0%のインフレターゲットを下回っているということで、話題となりました。
The core PCE price index rose 3.2% in November from a year earlier.
Over the last six months, the core PCE price index rose 1.9% at an annualized rate.
(Over the previous six months, it rose 4.5%, annualized.) https://t.co/Is7poxn3Te pic.twitter.com/z2ExPiHBEn
— Nick Timiraos (@NickTimiraos) December 22, 2023
これを踏まえると、米国の5%超という現状の金利は高すぎるということになり、一気に利下げの思惑が加速し、ドル安となりました。
しかし、年明けからの雇用関連の経済指標は、いずれも底堅いか予想を上回る数字となっており、雇用が強く賃金も高いままではインフレ懸念が拭いきれないということで、市場の織り込みは行き過ぎでは、という見方が強まってドルが買い戻されています。
したがって、今日の雇用統計が弱い数字であれば、もはやインフレ要因はほぼなくなりますし、FRBの2大目標は物価の安定と雇用の最大化ですから、利下げを迷う必要はほぼなくなるということで、ドル安となるでしょう。
逆に、強い数字が出るのであれば、ドル円は上値の限界を試す展開になると予想されます。
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️労働指標は改善傾向!強い数字を織り込む流れに
民間会社の雇用指標であるADP社の雇用報告が上振れしたこともあり、雇用統計発表後の金利上昇を意識したオプショントレードが散見されているとの報道もありました。
やはり、今夜の雇用統計が強い数字になるとの警戒は強いようで、それがまたドル買いの背景となっています。
雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
久々のオールブルー、直近の雇用指標はすべて改善傾向を示しています。こうなると、強気予想が増えるのも当然といったところでしょう。
ただ、ハードル的にはかなり高いですし、織り込んだ動きになっていますので、さらなるドル円の上昇には、最低でも予想より良い数字が求められることになりそうです。
️強い数字が予想されているので逆張りもアリ!
予想を上回る数字が出れば、ドルはもう一段上昇しそうです。それでも、先ほども指摘した通り強い数字が織り込まれている部分もかなりあるので、その点には注意。
具体的には、非農業部門雇用者数が+20.0万人の大台レベルを超えてくるかどうかが焦点。このレベルをしっかり上回れば、ドル円は一段高で146.00円を試していくことになるでしょう。
最近は注目されていた失業率も、3.8%レベルなら問題ないでしょう。流石に3.9%となってくると、雇用者数が予想を上回っていても問題視されてドル円の上値を重くしそうですが。
インフレ要因として重視されていた平均時給も、インフレそのものが後退しているという見通しがあるため、よほどブレがない限りは重視はされにくそう。
とにかく、雇用環境の悪化、雇用者が大きく減少しそうだという兆候がなければ、ドル円は短期的に底堅い値動きを続けそうです。
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今夜の想定は1ドル=142.00〜146.00円
145.00円という大平節目や、テクニカル的にも146円台はかなり重たそうなので、目を見張るような強い数字でも出ない限りは、一気に上値を攻略していくのは難しいでしょう。
ドル円チャート(日足)
したがって、予想が困難でサプライズになりやすい雇用統計という側面を踏まえれば、事前にポジションを持つのであれば弱い数字のショック商状を期待してショート一択でしょう。
雇用統計は逆張りが有利な面もありますからね。雇用者数が+10万人をしっかり下回るのであれば、1〜2円幅の下げも期待できそうです。
また、安全策で行くならば、数字を確認してから戻り売り・ショートを試したい。予想並の数字であれば、インフレは十分後退しているわけですし、採取的に利下げは時間の問題という見方になりがちで、金利の上昇トレンドが継続する可能性は低いですからね。
もちろん、雇用者数が+20.0万人を大きく上回った場合は、上値の限界を試して147円というシナリオをも考えられますので、強い数字が出た場合は素直にロングで追っかけて50銭から1円幅を目標に値幅を狙っていきましょう。
こんな感じで、大きく狙うなら弱い数字に期待して事前にショート。安全策で行くなら数字を確認して、ショートを少しずつ積み重ねるか、ロングで短期的な値幅を狙っていくかといったところです。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2024年1月5日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による