2024年から新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まりました。銘柄選択も重要ですが、「どこで投資を始めるのか」はそれをはるかに上回る大命題。それ金融投資せよとせかされて簡単に乗ってみたら、大儲けになりましたとさ……というほどこの世界は簡単ではありません。ここから新しいNISAをはじめようとする方は、くれぐれもその点にご注意いただきたいと思います。(『 今市的視点 IMAICHI POV 今市的視点 IMAICHI POV 』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2023年12月31日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
新しいNISA(少額投資非課税制度)開始
いよいよ2024年から新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まりました。
岸田政権は当初「所得倍増計画」といったことを口にしていましたが、米国からの強烈な要請もあったのか、いつのまにやら「資産所得倍増計画」に変更になった様子。
ついに「貯蓄から投資へ」の時代が始まろうとしています。
すでに新型NISAの利点は本邦の証券会社がいやというほど告知していますので、今さらほじくり返してご説明するまでもないと思いますが、ごく簡単にまとめてみると次のように利便性が高まっています。
<非課税保有期間の無期限化>
新型NISAでは、非課税期間が無期限となりました。これにより、長期的な資産運用が可能となります。
<年間投資枠の拡大>
年間の投資上限額が最大360万円まで増額されました。これにより、さらに多くの資産を非課税で運用することが可能となりこれが最大のメリットになっているとも言えます。
<つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能>
新型NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」をどちらも併用できるようになりました。
<非課税保有限度額の再利用が可能>
売却による再利用が認められているため、投資意向の変化やマーケット環境に合わせて保有資産を調整することも可能です。
……ということで、本邦の証券会社に言わせればもういいことしかないようにみえる新型NISAですが、我々利用者としては、根本的に忘れてはならない大原則を考える必要があります。
株は安いところで買って値上がり益を確保するもの
2023年米国株に投資した本邦の個人投資家は、米株自体の値上がりとともに年間で円安が進んだことから、株価と為替の両方の効果で確実に利益を得られた方が多かったといわれています。
仮にハイテク爆上げ株を買っていなくても、為替が年初来から152円をつけるあたりでは16%も上昇し、2023年年間で考えても7%以上も上昇したわけですから、円からドル転して米株を買った向きは少なからず利益のご相伴に預かることができたはずです。
この経験ができた向きは、新型NISAの登場で2024年も引き続き大きな儲けを得ていきたいと考えているはずです。
ちなみに29日で昨年の最終取引を終えた米株3指数は、S&P500が年初来23.79%、NASDAQ100では52.43%、NYダウでも13.70%値上がりしています。
そのため、よほど下手な投資をしないかぎりは皆ハッピーな結果を得られたであろうことが窺われる状況です。
しかし米国株は、2024年11月の大統領選まではバイデンが手練手管で下げないようにするからまだ大丈夫との見方が広がってはいるものの、相当な高値圏にあります。
ここから積み立てを開始するなどはいくらドルコスト法を口にしても最悪のタイミングで、本来はもっとも下げたところで買うという基本原則に従うほうが、制度ができたから飛び乗るというよりは絶対に意味のある投資法になることは間違いありません。
そういう意味では、2024年年初からの新型NISA利用は時期的に非常に大きな問題を抱えていることが見えてきます。
Next: 重要なのは「いつ」買うか。高値買いは息の根を完全に止める愚かな行為
高値買いは投資行動の息の根を完全に止める愚かな行為
ご存じのとおり日本株は、日経平均が89年末に最高値をつけてから、35年近くかかってもまだそれを抜けていないのが現状です。
また、これだけ上昇した米国株でも、大幅下落の前に高値で買った銘柄がもとに戻るには14年近くかかっていますので、とにかく高値で買って塩漬けせざるをえないという状況に陥ることは基本的に投資行動の破綻を示唆しているといえます。
銘柄選択も重要ですが、「どこで投資を始めるのか」はそれをはるかに上回る大命題。
ここから新NISAをはじめようとする方は、くれぐれもその点にご注意いただきたいと思います。
投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットも直近では株買いは限定的で、直近の四半期では株の配当よりも短期債と預金の金利収入の方が多かったという話が伝わってきています。
このご老人、暴落で周囲の市場参加者がほとんどの資金を失ってしまったときにおもむろに現金を出してきて、焼け野原で草木も生えない状況下で暴落株を買っては、その後に回復して劇的な利益に預かる……というやり方を何度も行って成功しています。
それぐらい株価の投資タイミングは重要になるのです。
政府に勧められるままに投資をはじめて大丈夫か
すべての投資行動は完全に自己責任です。どう考えて行うかはすべからく貴方の判断次第ということになります。
まあごく一般的な話ではありますが、国が全力を挙げて国民に貯蓄から投資へシフトするように勧めてくる、しかもその影に米国様からの圧力の姿もちらつくということでは、それを利用する国民としては相当慎重かつ懐疑的に状況をみていく必要があると思われます。
それ金融投資せよとせかされて簡単に乗ってみたら、大儲けになりましたとさ……というほどこの世界は簡単ではありません。
またBuy&Holdという発想も残念ながらほとんど嘘であることは、過去の相場実績から浮かび上がるところです。
とにかく腕まくりしてこの手の投資に前のめりになろうとしている方は、ぜひとも一呼吸おいて、落ち着いたところではじめるかどうかを冷静にご判断されることが重要です。
日柄的にはまったくいいタイミングではないことはよくご理解いただいて、それでもやるかどうかをお考えいただきたいと思います。
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『
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』(2023年12月31日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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