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日米「選挙相場」展望~選挙前後の株式市場と注意すべき想定外=山崎和邦

現在のアベノミクス相場は「老年期相場」にある。これの本質は中間反騰であって、下り行く趨勢の中での反発だから、決して以前の大天井は抜かないものだ。ただし例外もある。(山崎和邦)

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今後の相場を占う選挙戦/選挙イヤーに起きた米国の「120年ぶり」

現在の水準は「老年期相場」

アベノミクス相場は、青春期相場(開始から2013年5月まで8千円上がって15,943円天井)→壮年期相場(2015年6月の20,952円大天井)→老年期相場(2015年12月1日の20,012円天井)という流れで推移し、その間、何回かの中間反騰があった。

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老年期相場の本質は中間反騰であって、下り行く趨勢の中での反発だから、決して以前の大天井は抜かないものだ。

ただし、例外もある。例えば小泉相場の時は、老年期相場が前年の大天井を抜いて18,261円という高値を出した。アベノミクス相場においても、今後さらに一相場あるとすれば、そこに「選挙」や「政治」の要素が絡んでくるのは間違いない。

選挙前後の株式相場~2012年12月を振り返ると

2012年11月、安部さんに詰めよられて、時の総理野田さんが衆院解散の意向を議会で話さざるをえなくなった、その瞬間にアベノミクス相場は始動した。

無論、その時は「3本の矢」はなかったし、どんな政策が出るかも分からなかった。しかし少なくも政治不作為の素人衆から、「55年体制」を構築し57年を経た自民党という玄人の手に政権が移るという“期待”だけで大相場は始動したのだ。

選挙前にイイトコロが出尽くして買われていれば、選挙後はかえって安い、という場合も多いが、市場から期待されている政権の場合は選挙後が本格的に高い。2012年選挙の場合もコレで、本格的な上昇相場は選挙後に始まった。

では現在の安倍政権はどうか?株価連動政権と揶揄されるほど株価と景気に気をつかう内閣だから、仮に「自民圧勝」なら選挙後も高いかもしれない。ただ常識的には、現在はすでに「老年期相場」であり相場は若くはないのだから、事前に出尽くすと考えるのが穏当である。

正確に表現すればこうなろう。選挙前と選挙後の相場は、その時の株式市場の緊張状態によって上下いずれにでも動く。

その時の株式市場が選挙後の政策期待先行により目一杯に買われて、風船に例えれば空気が一杯に詰まってパンパンの状態に膨らんでいたとすれば、その風船は机の角に触れてだけでもパンクする。逆に風船がユルユルの状態で半ば萎んでいたら、相当の力が加わってもパンクしない。

この風船の例は『ウォール街の物理学者』(ジェームズ・オーエン著、高橋璃子訳、2014年 早川書房刊)から採ったものだが、選挙前後の株式市場とはそういうものである。

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選挙イヤーに起きた米国の「120年ぶり」と日本の「66年ぶり」は何を意味するか?

NYダウ創設以降120年間に一度もなかったことが起きている。これまで大統領選挙の前年は例外なくNYダウは年足陽線だったが、昨年は陰線だった。この「120年間ぶり」は何を示唆するのか。

戦後初めての出来事がもう1つある。東京市場で、正月明けの大発会から5日連続安ということは戦後、東証開所以来66年間なかったが、それが今年生じたのである。しかも6日連続安を記録した。この「66年ぶり」は何を象徴しているのか。

ここで脳裏をよぎるのは1990年大発会からの大暴落である。あっという間に1万円下がって半値になった。この史上初の事件は、その後の「失われた20年」を予告する警鐘シグナルだったのだ。

当時それを見抜いていた人は世界にただ一人、元野村総研の高尾義一氏であった(『平成金融不況』中公新書)。しかも副題は「その中間報告」となっていた。

お笑いだったのは同時期に日銀理事出身の野村総研理事が『日本経済、陽はまだ高い』を著していたことだ。噂によればコトの真相を早くから見極めていた高尾氏は野村総研の中でホサれていたという。

それでもガリレオと違って存命中に自らの言い分の正しさが事実で証明されたのだから、高尾氏よ、以て瞑すべきであろう。

Next: かつて市場を賑わせた「選挙対策銘柄」「政治銘柄」の話



かつて市場を賑わせた「選挙対策銘柄」「政治銘柄」の話

日本版SEC(証券取引等監視委員会)などまだ存在しなかった時代。当時の大蔵省理財局が、監督官庁としてやっと証券局に昇格されて5年目、昭和45年春頃のことである。

当時は、次の首相の座を巡る「角福戦争」(田中角栄VS福田赳夫)が勃発していたが、そこに大手船会社、三光汽船のオーナー社長・河本敏夫氏(元郵政大臣)が一枚噛んでくるというウワサが市場に伝わった。

政治資金作出のために仕手筋が動いて、三光汽船は大暴騰するであろうという話である。

昔はこの手の話が選挙の都度、多かれ少なかれ市場に出てきて、これを「選挙対策銘柄(センタイ銘柄)」または「政治銘柄(マルセイ)」などと呼んだ。

当時も内部情報者取引禁止の制度はあったが名ばかりであったし、現在の金融商品取締法で言うところの「風説の流布」など実質的には取り締まられていなかったが、そこで情報を早く仕入れて全財産を投入する者は、大抵は大失敗して早々と市場を去っていったものである。

筆者は、そういうネタをまるっきり信用していなかった。「早耳情報」なんてものはない、「マル秘情報」なんてものはない。自分の耳に届くくらいなら、それは市場にも行き渡っていて織り込み済みだ、と信じていた。

ところが、センタイ銘柄としての三光汽船は、地相場60円~70円のところ100円にまで急騰した。私はここで、生涯忘れえない大失敗を犯したのだ。

野村本店営業部で当時としては異端派であった空売りによる大商いを敢行し、肩で風切っていた筆者は、和歌山支店に異動後、100円まで暴騰した三光汽船を顧客に大々的に空売りさせた。するとさらに暴騰したからナンピン売り上がった。売り続けた。

その結果、追証に耐えられず強制決済が迫り、口座の資金がゼロに帰すならまだしも不足必至の状態に陥った。これは顧客の並々ならぬ尽力で何とか切り抜けたが、いまでも年に何回かはその時の悪夢にうなされる。この時の結果的に三光汽船は2530円まで上がった。カラ売りしてから25倍である。

このエピソードの詳細は、全担保を賭けて仕手株をカラ売り~投機家Kさんの運命は?でも詳述したからご一読いただきたい。

ヒトは株式市場では失敗から学ぶ。成功体験は嬉しがって終わるだけで勉強にならないどころか、場合によっては却って毒にさえなる。この悪夢から体得した「鉄火場の掟3カ条」は今も毎日、拳拳服膺している。

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山崎和邦(やまざきかずくに)

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)、近著3刷重版「賢者の投資、愚者の投資」(日本実業出版)等。

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