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相場はアートだ/6月利上げは困難も、米ドル・豪ドルは押し目買い好機=田嶋智太郎

本メールマガジンでは数ある投資先=選択肢のなかから、この金曜に考える “マイ・ベスト”(複数となることもあります)を極力簡潔にご披露させていただくこととしています。はてさて、今週は一体何が飛び出しますやら…。気楽にお付き合いいただければ幸いです。(『田嶋智太郎の「金曜に考える!当面の投資ストラテジー」』田嶋智太郎)

※『田嶋智太郎の「金曜に考える!当面の投資ストラテジー」』は、毎週金曜日発行です。興味のある方はぜひこの機会に定期購読を。

米利上げと為替相場~金曜に考える!当面の投資ストラテジー

“ドル高の修正の修正”が進んだ5月

6月に入り、前月(5月)の米ドル相場を振り返ってみると、ユーロ/ドルは5/3が月間の高値で5/30が月間の安値、逆にドル/円は5/3が月間の安値で5/30が月間の高値ということになりました。言うなれば、5月は“ドル高の修正の修正”が進んだ月ということになったわけです。

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また、ユーロ/ドルは一目均衡表の日足「雲」下限で下値がサポートされ、一方でドル/円は日足「雲」上限で上値を押さえられることとなりました。まさにセオリー通りの展開であり、だからこそテクニカル分析は決して軽視できないものと言えるのです。

米ドル/円 一目均衡表日足(SBI証券提供)


ユーロ/米ドル 一目均衡表日足(SBI証券提供)

実は、ユーロ/ドルの5/3高値は「昨年12/3安値と今年3月安値を結ぶサポートラインに平行して2/11高値を通る(アウト)ライン」に上値を押さえられる格好となりました。言わば、5/3高値は昨年12月初旬から形成されていた上昇チャネルのちょうど上辺水準で上値を押さえられたのです。

さらに言うと、このアウトラインは「昨年3/13安値と7/20安値を結ぶサポートラインの延長線」と一致するもので、換言すれば「かつての上昇チャネルの下辺=サポートラインが、今度は上昇チャネルの上辺=レジスタンスラインとして機能した」ということになります。

相場はアート、そしてドラマ

かねて、筆者は「相場はアートである」と考えてきました。これは、一目均衡表の「雲」やトレンドラインなどが相場と織りなす関係性と、そこで描き出される形状のことを言っています。

なかには「そんなものは偶然に過ぎない」などと一笑に付す向きもないではありませんが、その“偶然”が幾度も幾度も繰り返し見られるとなれば、それはもはや偶然とは言えません。

また、筆者は「相場はドラマである」とも考えています。人気のあるテレビドラマには、必ずと言っていいほど全編に渡って一貫したカバーストーリーというものがあります。毎回、一話完結のストーリが展開される一方で、登場人物の過去や主人公との意外な関係などが全話を通じて徐々に明らかにされ、そこに視聴者は惹き込まれて行くのです。もちろん、最初からネタバレのケースも少なくありませんが、それはそれで良いのです。

外国為替相場で言えば、米国経済の成長加速に向けた時間の流れと当局の利上げ方針、ドルの強みの復活などというのが一つのカバーストーリーということになるでしょうか。一話一話のなかでは、まったく逆の方向に進んでみたり、裏切りや思わぬハプニングが生じたりするものの、最終的には一つの方向に向かい、そこで一つの結末に行き着く…。

つまり…「相場はアート、そしてドラマ」なのであり、そうした目線で短期・中期・長期の戦略をしっかり練り上げることが勝利のツボであると思っています。

Next: 6月の米利上げが難しい理由/要注目の重要指標・要人発言等



6月の米利上げが難しい理由

正直、6月の米利上げは難しいと考えています。やはり、最大の要因は英国の国民投票です。その行方は未だ定かではなく、結果を見定める前に政策を変更しなければならないほど、物価上昇のリスクが強まっているとも思えません。

また、6月はFOMC後に記者会見が設けられています。だからこそ、むしろ6月である必要はないと思うのです。仮に今回は利上げを見送っても、会見できちんと説明することができます。そこで少々タカ派的なコメントを残し、7月のFOMCにつなげば、7月のFOMCに会見が設けられていないことは利上げ実施の障害にならないでしょう。

きっちりと市場の期待を7月につなげば、他の要因がよほど大きく絡んで来ない限り、当面のドルの下値は限られたものになると考えます。

もちろん、6月のFOMC(14-15日)に相前後して一旦は思わぬドル安・円高に振れる場面もありえなくはないでしょう。そこは基本、中期的に押し目買いのスタンスで臨みたいものと考えます。

要注目の重要指標・イベント・要人発言等

4月の米PCEコア・デフレーター=前年同月比+1.6%

FRBが注目している消費者物価の関連指標です。昨年中は前年同月比で1%台前半の伸びに留まることが常でしたが、今年に入って1%台後半での推移を続けています。

この点について日本経済新聞は「利上げを後押しする材料になりそうだ」としていました。その通りと思いますが、個人的には、まだ少し力強さに欠けるようにも思います。

米石油掘削リグ稼働数=404(5/27時点)

北米の米石油掘削リグ稼働数が、5/27時点において前年同期比471基減の404基と半減したことを米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが明らかにしました。

足下では原油の過剰供給リスクが大幅に低減しており、同時に原油価格の急落リスクも足下で低減していると見られます。

Next: 今週のマイ・ベスト戦略~豪ドル/円の押し目買い



今週のマイ・ベスト

豪ドル/円の押し目買い

5月初旬以来、豪ドル/円は78.50円-80.50円のレンジ内を往ったり来たり…。今後、ドル/円がもう少し下押しする可能性もあると考えられますが、5月初旬にドル/円が105円台半ばまで下げたときも、豪ドル/円は78.20円近辺で下げ止まって、ほどなく80円台半ばまで一旦は戻ることとなりました。

昨日(6/2)OPEC総会を無難に通過し、とりあえず原油価格が大きく値を下げていないことも資源国通貨にとっては追い風になるものと見られます。

豪ドル/円 日足(SBI証券提供)

来週7日に豪準備銀行(RBA)の政策員会が行われる予定であり、今回は政策を現状維持とする(追加利下げはない)見込みであることも一定の戻りを試す展開につながるものと見ます。

※上記内容はあくまで、執筆者の個人的な見解です。常にストップロスの設定を忘れずに、ポジション管理は厳密に行うように心掛けていただきたいと思います。最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

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田嶋智太郎の「金曜に考える!当面の投資ストラテジー」』(2016年6月3日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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これまで20年余り、経済アナリスト・投資ストラテジストとしての活動を続けてきました。自身も一人の投資家であり、株式現物・信用、指数先物、投信(含むETF)、FX、商品現物・先物、CFDまで幅広くカバーしています。そんな自身の経験をもとにファンダメンタルズ、テクニカルの両面から広く金融相場を分析し、その時々に最も有望と思われる投資対象、選定理由、具体的なストラテジーなどを考えて毎週金曜日に公開させていただきます。「果たして、今週は何が飛び出すか?」 楽しみにしていただければ幸いです。

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