大切な親が亡くなり、埋めることのできない喪失感を抱えながらも、故人が遺したものを整理しなくてはいけないときがやってくる。そのなかで、場合によっては「認知症の親の遺産相続」が原因で兄弟・姉妹の間でトラブルになるケースがあるようだ。実際に親が認知症だったときの相続について揉めた経験のある人たちに話を聞いてみると、悲しい結末になってしまったこともある様子。そんなトラブルを避けるためにも、当事者たちは遺言書を作成していればと後悔しているようだ。
認知症だったら勝手に生前贈与しないでほしかった
プロフィール
- 当時の年齢:35歳
- 職業:会社員
- トラブルの内容:父の相続で兄と揉めた
父が認知症を患っている中で、兄に多額の生前贈与をしていたことが発覚しました。私は、父が兄に言われるがまま贈与に応じたのではないかと疑念を抱き、相続分の不公平感から兄と争うことになったんです。当時の父の判断能力には疑問があったため、生前贈与の有効性が争点になりましたが、兄と話し合いの場を設けた際、平行線をたどったため弁護士を立てて調停を申し立てを行うことに。
しかし調停委員からは、父の意思に基づく生前贈与と認定され、遺産分割に生前贈与分は含まれないとの結論になりました。私からすると「父の意見なんてわからないのでは?」と思いましたし、今でも納得はできません。結果として父の意思能力が衰えていたことを立証するのは困難で、法的には覆せなかったけれども、父の判断力に疑問が残る以上、モヤモヤとした気持ちは拭えません。
また、父は遺言書を作成していなかったので、今回のようなトラブルになったのだとも思っています。せめて遺言書があれば、父の意思を明確に知ることができたかもしれません。それと認知症の親の財産管理について、家族でルールを決めておくべきだと後悔もしています。判断能力が怪しくなってきたら、「成年後見制度」の利用も検討すべきなのでは、といまさらながら思いました。生前贈与は公正証書で記録に残し、親の意思を明確にしておくことが重要ですし、遺言書の作成も必須。相続人同士のコミュニケーション不足が招いた悲劇の始まりだった気もします。
最終的に2,000万円ほどの相続財産を得ましたが、弁護士費用などを差し引くと、思ったより少ない金額でした。父の遺産を巡って兄と争ったことで、兄との関係性は悪化。現在は音信不通の状態が続いており、これからも関係改善は難しいです。
介護をしていた姉が「母の預貯金を全て相続したい」と申し出て…
プロフィール
- 当時の年齢:52歳
- 職業:自営業
- トラブルの内容:母の相続で姉弟3人で揉めた
母は認知症を患っており、姉が10年以上介護していました。姉は「介護の代償として、母名義の預貯金を全て相続したい」と主張しましたが、弟と私は納得できませんでした。結局、遺産分割協議が整わず、調停を申し立てる事態に発展。調停委員の助言もあり、最終的には預貯金の6割を姉が、残りの4割を弟と私で等分に相続することで合意しました。しかし、姉との関係は修復不可能なまでに悪化。それまでは仲の良かった姉弟でしたが、母の葬儀以来、一切連絡をとっていません。
母の預貯金は3,000万円ほどあり、調停の結果、姉が1,800万円、弟と私が600万円ずつ相続しました。しかし、姉からすると10年にも及ぶ介護の代償としては不十分だったかもしれませんし、一方で、遺産を独占するのは法の趣旨に反するため、こちら側も歩み寄るしかありませんでした。
母の介護を一手に引き受けていた姉は、弟や私が面倒を見ない事に不満を抱いていたようですが、それに対して私たちは姉が母の預貯金を管理している事に疑念を感じていたんです。母の意思は定かではありませんが、私と弟への生前贈与は一切ありませんでした。認知症が進行する前に遺言書を作成しておけば、無用な争いを避けられたかもしれませんが、事前の対策を怠っていた結果だとも思います。
母名義の自宅マンションは、姉が相続して住み続ける事になりました。ただ、老朽化が進んでおり、今後の修繕費用などを考えると、必ずしも姉は得をしたとは言えないかもしれません。だからこそ売却して代金を分割した方が良かったではないか?と提案したのですが、結果としてその話はなしになりました。
被相続人の意思を尊重しつつ、相続人同士が納得できる遺産分割を話し合うことが重要だと感じます。感情的にならず、冷静に話し合える環境を作ることも大切で、もしもそれが難しいなら、早い段階で専門家に相談するのも一つの方法だと思います。
姉が勝手に不動産の名義を変更…話し合いでは怒鳴り散らす始末
プロフィール
- 当時の年齢:50歳
- 職業:会社員
- トラブルの内容:母の相続で姉と揉めた
認知症を患っていた母の介護を長女である姉が一人で行っていました。母が天国へ旅立ったあと、相続について姉妹で話し合う機会があったのですが、母の遺言書がなく、当初は法定相続に従うことになりました。しかし姉は自分が母の介護を一手に引き受けていたことを理由に、相続分を多くすべきだと主張。一方、私は平等に分けるべきだと主張し、対立することになってしまいました。
当時、話し合いの時に姉は感情的になり、怒鳴り散らすことも何度かあり、冷静な対話とは言えませんでした。私としては落ち着いた上で話し合いたかったのですが、感情論で話す姉の態度に業を煮やし、口論になってしまったことも何度もあります。結局、第三者を交えての話し合いの場を設けてそこでようやく決着がつきました。
母の遺産は預貯金が中心でおよそ2,000万円ほど。姉が介護費用などの立て替え分を上乗せし、残りを平等に分けることになり、私が相続したのは800万円ほどです。ただ、遺言書がなかったため、母の本当の意思が分からず、姉妹でそれぞれの主張が対立しましたし、特に介護をしていた姉は、自分が犠牲になったのだから当然多くもらえるはずだと思っていたようです。
もちろん介護をしていた姉にはとても感謝していますし、本当に助かりました。でも母が所有していた不動産は、生前に姉名義に変更されていて……。いまさらながら親が元気なうちに、遺言書を作成したり、財産分与についてよく話し合っておくことが大切だと感じました。感情的になると、余計にこじれてしまうことを感じたので、「まさか自分が」と当事者になる前に、親族で何かしら決め事などをしておく方がいいのではないかなと思います。
Next: 認知症の親の遺産相続、どうするのがベストだった?
X(旧ツイッター)の反応
40代。50代の人に告ぐ。「とにかく遺言書を、今すぐに書いたほうがいい」認知症は、40代でもなります。そして認知症になってから書いた遺言書は無効になることがあります。だから、今書くんです。家族の為と自分の為に行動しましょう。自分が死んでから、家族が揉める姿を見たくありません。
— てれたす®︎ (@teretasu) April 24, 2022
「こんな仕打ちありますか…」肩を震わせる初老の男性。認知症の義父を夫婦で介護してきた。子供のいない彼ら。『落ち着いたら旅行しよ』と語り合った矢先に妻が他界。悲しむ暇もなく圧し掛かる介護。さらに義父の認知症で妻の相続が滞る。「せめて妻の遺言書があれば」悔しそうな顔が脳裏から離れない
— はしトモ🖋歌う ゆいごん司法書士 (@tomohiro_smile) September 14, 2022
予防法務。
遺言書を書く動機は、年齢と病気が多い。認知症になった後では遅いことを説明。
ただ、行き過ぎると長男や長女などが親に遺言書を書かせるような場面が出てくる。遺言者本人の意思確認が大前提。
その際、親族は同席させない。銀行も同じ。下手すると、裁判所の調停。現に、その例がある。— 週末行政書士 遺言・相続 (@jetstarlight36) June 28, 2022
認知症が酷くなってきて遺言書を作れるか微妙なラインでしたが、公証人に自宅まで出張してもらい祖母(93才)の遺言書作成が無事に終わった
出張費もろもろで24万円程度かかったらしいけど、遺言書が作れたので高くない出費だったと思う— MORITA (@sangokusinohito) November 14, 2019
独身の身内が認知症の末亡くなった時
認知症の酷くなる前に弁護士でなく司法書士に遺言書を託していたため、相続等その内容の執行を全て行ってくれたということがありました
遺言は10年弱ほど前のものでしたが当然有効です
法定相続人がいなければ遺言で遺贈者を指定することは可能です— capybara水豚 (@_capybara_bara) November 29, 2023
「遺言書を作成したい。妻が認知症なので私が亡くなったらあとが大変だと聞いた」
そのとおりである。遺言書がなければ、配偶者と子との遺産分割協議が必要となる。配偶者が認知症であれば遺産分割協議には参加できない。
よくぞその情報を仕入れ、ここに足を運んでくれたものだ。もう大丈夫。
— はっちん@行政書士&先祖調査📜#さぬき (@homecom8235) April 6, 2020
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