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オリエンタルランド、クルーズ事業参入にファンは沸くも投資家は冷静。就航数年後に売上高1000億円の“皮算用”も3300億円の初期投資の回収を不安視か

東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドが、大型客船を活用したクルーズ事業「ディズニークルーズ」に参入することを明らかにし、大きな話題を呼んでいる。

報道によれば、すでにアメリカのディズニー社とライセンス契約を締結しているといい、就航予定は2028年度中。新たに船を建造することなどを計画していて、投資額はおよそ3,300億円に上るということだ。

オリエンタルランドの会長兼CEOは、「主力事業のテーマパークとホテルに加え、会社を支える3つ目の柱として取り組む。パーク全体を抱え込んだような特別な滞在体験を提供する」と述べている。

日本国内でも広まりつつあるクルーズ旅の魅力

今年6月には、東京ディズニーシーに8番目のテーマポート「ファンタジースプリングス」を、総投資額約3,200億円という巨額出費により完成させたばかりのオリエンタルランドだが、それに比類する投資額による新事業ということで、俄然注目が集まっている今回の件。

日本を取り巻くクルーズ業界の動向といえば、近年ではコロナ禍の影響でその市場が一気に収縮してしまったものの、2022年12月の国際クルーズの再開、また2023年5月のコロナの5類移行によって、急速に市場が回復中。

なかでも日本国内においては、ダイヤモンドプリンセスやMSCベリッシマなどといった大型の外国船が、国内各地の都市を数~十数日かけて巡る、いわゆる日本発着クルーズが、船旅にしてはリーズナブルな価格設定や日本人向けのきめ細かいサービスの存在などもあり、中高年世代を中心に大いに人気を博している状況だ。

さらに最近クルーズ業界で話題になったのが、今年3月に俳優の大泉洋さんがファンクラブ会員を対象に行ったという、日本が誇る豪華客船「飛鳥2」を貸切ってのクルーズ企画プランに応募が殺到するという人気ぶりに。比較的若い世代にもクルーズ旅の魅力が伝わる機会となったようなのだ。

こういった日本のクルーズを巡る状況下で、オリエンタルランドが始めるという新事業なのだが、どうやら首都圏の港を発着し、主に2泊から4泊といったプランを中心に想定しているよう。

どこかの寄港地に立ち寄って観光というわけではなく、船内において豪華なショーや食事を楽しみながらゆったり過ごすといった趣向なわけだが、そういったショーなどのコンテンツといえばまさにディズニーの強み中の強み。

また、それ以前にディズニーというコンテンツ自体が、すでに熱狂的なファンを抱えるだけあって、2028年度中を予定している就航時には、相当な人気となるのは間違いないだろうとの声が今から大いにあがっている状況なのだ。

日本籍では過去最大となるクルーズ船を新建造も…

もちろんオリエンタルランドとしても、そんな人気ぶりを十分に見越してか、クルーズ事業への参入にあたって、自前で新たなクルーズ船を建造するということなのだが、この新造船の大きさというのが総トン数は約14万トン、客室数は約1250室という巨大さで、1回のクルーズで最大およそ4,000人の乗客が楽しめるというものに。

現段階における日本籍で最大の豪華客船といえば、先述した「飛鳥2」なのだが、こちらが総トン数約5万トンということで、それを遥かに凌駕するサイズ。またディズニーが、フロリダやカリブ海で運行している「ディズニー・クルーズ・ライン」に所属するクルーズ船のなかでも、大きめのクラスだというということである。

オリエンタルランドとしては、今の舞浜地区におけるTDRの規模拡張がいよいよ限界を迎えつつあるとあって、それに依存しない新たな事業の確立・育成はまさに悲願ということで、今回のクルーズ事業への参入には並々ならぬ気合いを感じさせるところ。

実際、就航後は訪日客などの需要も見込み、数年後には年間で乗客約40万人、売上高約1,000億円を見込んでいるとのことなのだが、しかしそのいっぽうで市場の動きをみてみると、発表から明けた10日の株価はほとんど横這いで終わるなど、その反応は少々冷ややか。

【関連】オリエンタルランド株価低迷は買いの好機か?業績好調も売られる理由、長期投資家が見るべきポイント=佐々木悠

投資家からすれば、やはり3,300億円に上る巨額投資が実るかどうかという点が、大いに心配といったところのようなのだが、果たしてどうなるのか。ディズニーファンと投資家がそれぞれ異なる思惑でもって、2028年度中の就航を待つといった状況のようだ。

Next: 「カリブからディズニークルーズ船が日本に来て航路を開拓するんじゃなく…」



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Image by:Dan Komarcha / Shutterstock.com

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