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成功率はどれくらい? 日本人が沸いた「海外不動産投資ブーム」の栄光と挫折

日本でも一般的になってきた感のある海外不動産投資ですが、その歴史はまだ浅いです。中国不動産ブームに端を発するその歴史を紐解きながら、今後の勝ちパターンを探ります。(『海外不動産Labo』)

各国ブームの変遷に学ぶ「成功する海外不動産投資」のヒント

日本における海外不動産投資の歴史

近年、日本でも一般的になってきた感のある海外不動産投資ですが、その歴史はまだまだ浅いです。下記に、日本における海外不動産投資の歴史を簡単にまとめてみます。

2002年頃~:中国の不動産価格が上昇
2008年頃~:リーマンショック
2010年頃~:東南アジア(タイ・マレーシア)ブーム初期
2014年頃~:東南アジア(フィリピン・カンボジア)ブーム
2016年頃~:ASEAN経済統合により、東南アジアの不動産価格は上昇中。先進国(アメリカ等)の投資も増加中

日本で海外不動産投資が一般的になってきたのは、2010年頃からです。リーマンショックにより、不動産に不安感が生まれたことも関係し、海外不動産投資のセミナーに多くの人が集まるようになりました。タイやマレーシアのセミナーには、1回のセミナーで100人以上の人が押し寄せるなど、ブームとなりました。

日本国内では不動産価格は購入したら下がっていくのが一般的ですが、新興国の不動産価格は上昇していくという考え方が一般的です。それもあり、タイやマレーシアの不動産(コンドミニアム)は飛ぶように売れていきました。価格も1,000万円程度で購入ができ、マレーシアでは現地の銀行でローンも組めたので、ハードルが低いというのも特徴です。

その後、マレーシアは外国人からの投資が多く入りすぎたこともあり不動産価格が高騰したため、2014年に100万リンギット(約3,000万円)以上の物件でないと外国人は購入してはいけないという規制を作りました。

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この規制により、1,000万円程度の手頃な物件で、なおかつ今後の経済成長と物件価格上昇が見込める国ということで、2014年よりフィリピンとカンボジアへの投資ブームが訪れます。

2015年末にはASEAN(東南アジア諸国連合)経済統合が行われ、東南アジアの経済成長への期待から不動産価格は上昇しており、現在も東南アジア新興国への投資は注目を集めています。

また、アメリカやイギリスなどの先進国の不動産投資も、一般的になってきました。新興国不動産のような価格上昇よりも、節税メリットや安定した高い利回りが目的となります。

ブームに乗って投資して儲かった人もいれば、損をした人の話もたくさん聞きます。

Next: 3,000万円で買って1億円以上で売れた、中国不動産投資ブーム



中国不動産投資ブーム

今でこそ、中国不動産は価格が高騰しすぎでバブルで崩壊寸前だなどと言われておりますが、2002年頃からの不動産価格は上昇の一途をたどっておりました。

2010年以前から海外不動産投資を行っている日本人の不動産投資家は、中国の不動産を購入しているケースが多いです。「3,000万円程度で中国の不動産を購入し、1億円以上で売れた」などという話を投資家からたくさん聞きます。2倍どころじゃないですね。

1998年にそれまでの住宅の現物支給を終了させたことにより、住宅価格が市場メカニズムによって決定されるようになりました。

ブームの原因

住宅価格の高騰が一気に加速したのは、2003年以降です。人口ボーナス期を迎えて経済成長が著しかったことはもちろんですが、2005年に中国の通貨である人民元が、固定相場制から管理変動相場制へと移行したこともあり、為替メリットの面も大きかったです。

このタイミングで利益を得た投資家の存在が、後の東南アジア投資ブームを生み出す原因のひとつとなりました。

マレーシア不動産投資ブーム

2010年頃になると、日本ではマレーシア不動産投資セミナーが活発に行われ、多くの人が集まるようになってきました。1回のセミナーに200人近く集まった、などということもあったようです。

今、日本で10年前くらいから海外不動産の販売を行っている業者は、この時期にどこもこぞってマレーシアの不動産を販売しておりました。フォーランドリアルティや、ステイジアキャピタルグローバルプロパティなどが有名です。

ブームの原因

マレーシア不動産投資のブームが起きた背景には、いくつかの原因があります。

また、日本と距離が近い中国不動産の価格上昇により、大きな利益を得た投資家が日本国内にいたこともマレーシア不動産投資ブームの後押しとなったと考えられます。

ブームのその後

マレーシア不動産には世界中から投資マネーが集まり、クアラルンプールの不動産価格は数年間で倍以上に高騰した例がいくつもあります。

マレーシア政府は不動産価格が高騰しすぎて国民が購入できる金額でなくなっていることを懸念し、2014年に外国人に対する投資規制を実施いたしました。これにより、100万リンギット(約3,000万円)以上の不動産でないと、外国人は購入できなくなりました(一部例外のエリアもあります)。また、この規制に合わせて、現地の銀行の外国人に対するローンも急に通らなくなったと聞いております。

この規制により、日本でのマレーシア不動産投資ブームは終了いたしました。

Next: 人口ボーナスによる高度経済成長に期待感、フィリピン不動産投資ブーム



フィリピン不動産投資ブーム

このタイミングで、1,000万円前後で購入でき、経済成長により不動産価格の上昇が期待できる国として、マレーシアと入れ替わるような形でフィリピンの不動産投資ブームが始まりました。フィリピンの不動産投資は、そのわかりやすさが魅力でもありました。

ブームの原因

フィリピンはちょうど人口ボーナス期の入り口を迎えており、かつての日本の高度経済成長を予感させるような時期にさしかかっています。

ブームのその後

フィリピン不動産は、マレーシア不動産のように規制が入ったわけではなく、現在でも投資先として人気です。フィリピンで不動産投資先として注目されたエリアは、首都のマニラに加え、リゾート地として有名なセブ島も同じくらい人気がありました。

現在は、一時ほどの人気はなくなってきています。その原因が、供給過多と言われています。特に首都のマニラでは、投資家向けに1,000万円前後の1ベッドタイプのコンドミニアムが同時期に大量供給されたため、賃貸が思っていたようにつかない状態になっている物件もあります。現地の一般的なフィリピン人の収入では、まだ投資家が持っている不動産を購入できるような状態にないのです。

順調に経済は成長しているので、長いスパンで見れば価格上昇の期待は大きいのですが、短期的には同グレードの物件が供給されすぎているため、高い利回りやキャピタルゲインを手に入れている投資家があまりいないのが現状です。

これにより、日本の投資家は、国の経済成長力だけでなく、不動産の供給量やターゲットを考えることが必要だということを学びます。つまり、特定のターゲットに対して供給が足りていない状況にある不動産に投資しよう、という考えになるのです。

Next: 住宅供給量で投資エリアを決めるのは正解か? タイ・シラチャ不動産投資ブーム



タイ・シラチャ不動産投資ブーム

フィリピン不動産投資の後にブームとなったのが、タイ・シラチャの不動産投資です。

シラチャエリアでは1990年代以降、周辺から日系の工場の進出が進んでおり、日本人駐在員が一気に増えて街には日本語の看板が多く見られるようになりました。日本人駐在員が一気に増えてきたため、駐在員用のクオリティが高い不動産が足りないという状況になっているのです。

数少ない高クオリティの駐在員向け不動産の賃料は高騰している状況です。そのため、単純に周辺相場から考えてプレビルドのコンドミニアムが想定利回りで10%を超える水準となっておりました。この特殊な状況が、不動産投資先として大人気となりました。

住宅の供給量で投資エリアを決めることが正解か?

ここまでの海外不動産投資先のブームの流れを整理いたしましょう。

まず、中国の人口ボーナスによる経済成長に乗った不動産価格の高騰がありました。

次に、経済成長の期待が高いマレーシアフィリピンが中国のように不動産価格の高騰が起きるとの期待から投資を集めました。ですが、供給過剰もあり、現実的には期待していたような利益を得ている投資家は少ない状況となっています。

それをふまえて、不動産供給量が足りていないエリアとして人気になったのがシラチャです。そろそろ、シラチャでも投資物件が完成してきていますので、本当に当初の想定通りに投資家が利益を得られているのかが判明してくると思います。

シラチャに投資した投資家が期待通りの利益を得ることができていると、海外不動産投資のポイントは「そのエリアの住宅の供給量」ということになってきます。逆に言うと、シラチャの投資が期待したような利益を生まなかったということになると、「経済成長」にテーマが戻るのか、もしくは全く新しいテーマでブームが生まれてくるかもしれません。

シラチャの今後の予想

個人的には、シラチャの不動産投資は本当の初期に購入された投資家だけが期待したような利益を得る、というような形になると思います。限定された小さなエリアなので、住宅の供給が足りてくると、高騰していた賃料価格は下がっていくことが予想されるためです。

そのタイムスパンは、フィリピンと比べてもかなり短いことが予想されます。現に2016年になるとシラチャの不動産販売の話は日本ではほとんど聞かれなくなっています。

この状況を踏まえて、今後は「購入タイミング」というのがテーマになってくるのではないかと思います。
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海外不動産Labo』(2017年2月15日、20日、27日、3月6日、13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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