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FPは見た!資産運用に失敗した人々がハマった3つの罠=梶原真由美

私は個人コンサルティングを手がけるファイナンシャルプランナーとして働いて8年になりますので、今まで数百世帯の個人資産状況を見てきました。今回はその中でも「ああ、これは失敗しちゃっているなぁ」と感じた既保有運用商品を取り上げ、なぜ、そういった商品を選択してしまうのかの背景、そうならないための対策をお伝えしたいと思います。(『億の近道』梶原真由美)

プロフィール:梶原真由美(かじはら まゆみ)
ファイナンシャルプランナー。日本ではまだ珍しい顧問契約制のFP会社である株式会社マネーライフプランニング所属。1976年千葉県生まれ。40歳で出産、12歳年下の夫と長女の3人家族。

数百世帯を見てきたFPが「失敗だな」と感じた資産運用の3パターン

(1)節税目的の「新築マンション投資」

不動産投資を否定するわけではありません。お客さまの中には、不動産投資で素晴らしいキャッシュフローを生み出している方もたくさんいます。しかし、新築マンション投資をフルローンで行っている方の多くは、収支マイナスのキャッシュフローです。持ち出しが毎月、毎年あるんです。

それを指摘すると、返ってくる答えは「でも節税効果もあるんです」です。言い分としては「節税効果も加味すれば収支はトントンだから、最終的に不動産は資産として残る」です。

ふむふむ、そうかもしれませんね。では、シミュレーションは引いてみたんですか?と聞くと、99%の方が「NO」なんです。または、不動産業者(売り手側)の提示してきたシミュレーションを鵜呑みにしています。

いただいた情報を元に、私がシミュレーションしてみると、ひどい結果になります。売却したくても、売却価格でローン残債を相殺できない、いわゆる「担保割れ」状態。しかし手持ちのキャッシュもないという状況です。

まだ部屋が1つならマシなのですが、こういうタイプの方は大抵3~8部屋をお持ちです。なぜなら、売り手側からしたら「とってもいいお客様」なので、当然売り込みも激しいワケです。そこには、サブリース契約もしっかり入っています。

できれば、購入前に将来の賃料減少、空室、修繕、そして出口戦略(売り時、売値、誰が買うか?、相続等)を現実的に捉えてシミュレーションに反映させ、投資に値するかを熟考してみるべきです。本当に優良物件なら、サブリース契約はそもそも必要なのか?も併せて考えてみてください。

内閣府が発行している「高齢社会白書」平成28年度版によると、日本の人口は2050年に1億人を割り込むと予想されています。そして人口の45%は60歳以上です。

国内の不動産投資は、今後ますます「難しく」なっていくのではないかと思います。

Next: (2)アクティブ投信の回転売買に注意。乗り換え時に検証すべきこととは?



(2)アクティブ投資信託の回転売買

初めてお会いした時に、既に投資信託をたくさん保有している方もいます。その保有商品を見てみると「やられちゃってるかも?」と思う時があります。さらに、今までの保有歴をヒヤリングしてみると「かも?」が「やっぱり!」に変わります。

傾向として、保有商品はアクティブ型投資信託で、テーマ型(資源・エコ・SRI・IT等)が多いです。

そして3ヶ月~半年置きに銀行・証券会社はせっせと「売りたい」商品を開発&導入してくるのですが、新発売の投資信託が出ると「この投信を売却(利益確定・損切り)して、新しい商品を購入しませんか?」といった提案をされて受け入れています。

結果、新しい投資信託を購入する度に購入時手数料を3%前後抜かれ続けるので、たとえ購入した投資信託の運用成績が悪くなくても手元の資金は増えていかないという結果になります。

原因ですが、売り手の問題もあると思います。テーマ型アクティブ投資信託は、誰もが知っているキャッチーなテーマを投資信託に取り入れることで、銀行・証券会社の販売員が「売りやすい」「説明しやすい」商品として開発されている印象があります。

投資信託を乗り換えるのであれば、以下を検証して下さい。

  1. 利益が出ているのであれば、利益に20%課税される(NISA口座内は非課税)
  2. 新しい投資信託の購入時に手数料(仮に3%)を支払う

(1)と(2)を合計したコストより、新しい投資信託が魅力的であれば乗り換えを検討すべきですが、そうでなければ乗り換えの判断自体を考え直す必要があります。

Next: (3)「みんな入っているから…」と盲目的に加入する学資保険が危ない



(3)盲目的に加入する学資保険

生まれたら学資保険」と思っている方が多すぎませんか?

加入(または加入希望)の理由を聞いてみると「自分の親も学資保険に入ってくれていたから」「みんな入っているから」がダントツです。

私たちの親が学資保険をすすめる理由は、自分たちは加入していて良かった(お金が殖えた)からなのです。確かに親世代(昭和30年代~平成2年頃)の保険予定利率は6%前後でした。対して、現在(平成28年)の保険予定利率は1%前後です。平成29年4月よりさらに引き下げられる予定です。

こうなってくると、学資保険の最大のメリットはお金を殖やすことではなく「保険機能を利用した積立預金」です。貯蓄が苦手な方は、強制的に毎月保険料として口座から引き落とされるので便利かもしれないですね。

ただ、お金を貯めながら運用したいなら、もっと合理的な選択肢はあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

どちらにしても「みんな入っているから」「親が入れというから」といった加入理由はやめましょう。

なぜ資産運用しているつもりがやられてしまうのか?2大理由

今回挙げた例は一部で、他にも「やられちゃってるなぁ」と思うことは多いのですが、なぜ、そういった失敗をしてしまうのでしょうか?

<1.投資商品ではなく「人」「企業」を信じてしまっている>

販売員や販売会社が良いかということと、その商品が良いかは「別の話」です。これを混同してしまい、「この人(企業)が勧めてくれる商品なら、良いものに間違いないはずだ」といった思考停止が起きてしまっているのだと考えます。

心理学的には「認知バイアス」と呼ばれていて、人が間違いを犯す要因と言えます。感情を入れずに、その商品を客観的に分析する目を持ちましょう

<2.資産運用の明確な目的と戦略を持っていない>

何のために運用をしているのか?といった目的とともに、運用期間・期待リターン・想定リスク等の運用戦略を持たずに投資を始めると、運用商品の選択肢ばかり広がってしまい、情報処理が間に合わず選択ミスを犯しがちになります。

運用目的や戦略をしっかりと持つと、運用商品の選択肢は絞られますので、選択ミスも減ると思います。

いかがでしたでしょうか? 人は「自分の選択がミスであった」と認めて損切りすることがなかなかできません。だからこそ、第三者へ相談し、時には背中を押してもらうことが必要なのかもしれませんね。

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億の近道』(2017年3月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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