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暴露された米CIAの「監視・盗聴技術」と森友スキャンダルを繋ぐもの=高島康司

ウィキリークスが、米CIAの監視・盗聴技術を暴露する極秘文書「Vault 7」を公開した。折しも日本では、安倍首相の森友学園スキャンダルが大問題となっているが、これは米国で急速に進行する情報リークや、影の支配構造の変化と連動した動きなのだろうか?(『未来を見る!ヤスの備忘録連動メルマガ』高島康司)

※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2017年3月10日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。3月17日に配信された最新号もすぐ読めます。

なぜ今、アメリカと日本で同時に「疑惑」が噴出しはじめたのか?

抑制が効かなくなった情報リーク

森友学園の土地不正払い下げ問題で揺れている安倍政権はその典型だが、いま、アメリカを中心にあらゆる方面で、これまで隠されてきた情報の大変なリークが起こっている。まさにごみ箱をひっくり返したような状態だ。これは、これまで情報を操作していたシステムと体制全体が崩壊しつつあることを示している。

さまざまなことが同時に起こっているので、ひとつひとつ整理しながら解説する。

トランプ・タワーが盗聴されていた?

これまで、ジュリアン・アサンジのウィキリークスや、元NSAの契約職員だったエドワード・スノーデン、さらに、米陸軍のブラッドリー・マニングなどの人々によって、政府や軍、そして情報機関の持つ極秘情報の公開とリークが進む流れができている。

それにより、これらの組織や機関が行っている国民を無差別に標的にした情報監視や、情報操作の実体が明らかになってきた。

しかし、昨年から今年にかけての状況はこれまでとはかなり異なる。「ディープステート」などと呼ばれるCIAやNSAを中心とした情報機関とトランプ政権が本格的に衝突し、熾烈な戦いを繰り広げているため、情報機関の存続さえ危うくさせるような情報のリークが進みつつある。

そのひとつは大統領選挙でトランプが勝利した直後から、トランプ・タワーが盗聴されていたとする疑惑である。もともとこれは以下のように、いつものトランプのツイッターから始まった。数日前から時間をおって紹介する。

トランプ大統領のツイート(日本語訳)

いま入った情報:ジェフ・セッションズと会ったロシア大使は、オバマのホワイトハウスを22回も訪問している。昨年だけでも4回だ。

ジェフ・セッションズのロシア大使との最初の会談は、100名の大使の教育プログラムのためオバマが準備したものだ。

神聖な選挙期間中、私を盗聴していたオバマ大統領はどれほどレベルが低くなってしまったのだろうか?これはニクソン政権のときのウォーターゲートだ。とんでもなく悪いやつだ。

オバマ大統領が私の電話を盗聴していたことは、よい弁護士だったら大事件にするだろう。選挙直前の10月だぞ!

現職の大統領が選挙前にレースの状況を盗聴することは合法なのだろうか?先に裁判所によって拒否された。とんでもないレベルの低さだ!

ひどい!私の勝利の前にオバマはトランプ・タワーを盗聴していたことを発見した。なにも見つかっていない。これはマッカーシズムだ!

このようにツイートし、選挙直前にトランプ・タワーが盗聴されていたとして、オバマ大統領を激しく非難した。

「証拠」の存在を指摘する声

民主党や共和党の一部、そしてアメリカの主要メディアはこれを、ジェフ・セッションズ司法長官のロシア大使接触疑惑の追求から世間の目を逸らすためにトランプが考えた何の根拠もないツイートだとして、非難の的にしている。

クラッパー元国家情報局長官も、FBIなどはトランプ・タワーの盗聴はまったく行っておらず、オバマ大統領もこれを命令した事実は絶対にないとして、トランプ大統領への非難を強めている。日本の主要メディアも、ほぼ同じような報道をしている。

しかし、NSAやCIAの職員だった内部告発者から、トランプ・タワーの盗聴は実際にあり得ることだとして、トランプのツイートを支持する声が上がっている。

その1人は、NSA(国家情報局)が米国民を無差別に監視していることに抗議し、2001年に辞任して内部告発者になったビル・ビニーだ。彼はNSAに36年勤務し、「シン・スレッド」と呼ばれる監視システムを担当していた。

ビニーはFOXニュースに出演し、「トランプの電話や、電子的なコミュニケーションはすべてモニターされている」と述べ、トランプのツイートに十分な根拠があるとした。

この証言ではトランプ・タワーが盗聴されていた可能性を指摘するだけで、具体的な証拠は提示していない。しかし、はるかに具体的な事実を指摘し、トランプ・タワーが盗聴された可能性を指摘したのが、CIA元エージェントのラリー・ジョンソンだ。彼はロシアの国営メディア、ロシア・トゥデイに出演し、おおよそ次のように証言した。

私が内部のよき友人から得た情報では、トランプ・タワーはオバマ政権によって本当に盗聴されていたようだ。盗聴を実行したのは実はイギリスの情報機関である「政府コミュニケーション本部」だ。ここが盗聴で得た情報は国家情報長官のジム・クラッパーとCIA長官のジョン・ブレナンに渡され、オバマ政権内部で回覧された。

情報機関やFBIの一部が、トランプが周囲の人々と行っていたコミュニケーションを盗聴していたことは間違いない。これに関してはトランプが言っていることは正しい

トランプが勝利した直後、NSAのマイケル・ロジャース長官はトランプ・タワーを訪問した。ロジャースは、NSAなどの情報機関がトランプを引き下ろすためにトランプ・タワーを盗聴していたことを知っており、自分を弁護するための訪問であったと思われる。しかし、この訪問の直後、ロジャースはクラッパーに呼び出され、解任された。

だから、トランプがオバマ政権の盗聴をツイートしたことは、正しい行動だった。警告したかったのだと思う。トランプは盗聴の証拠も握っているはずだ。

ラリー・ジョンソンという元CIAのエージェントはこのように発言し、オバマ政権がトランプ・タワーを本当に盗聴していた可能性がかなり高いことを指摘した。

Next: ウィキリークスが暴露した、米CIAのとんでもない監視・盗聴技術



ウィキリークスがリークしたCIAの極秘文書「Vault 7」

もし、ラリー・ジョンソンの証言が正しければ、トランプ政権は、情報機関がオバマ政権のもと、実際にトランプ・タワーを盗聴していた証拠を提示する可能性が高い。トランプを引き下ろすためにCIAなどの情報機関や、FBIの一部が行っていた盗聴の事実が明らかになってくるだろう。

このような情報のリークは。もはやコントロールできない水準にまで達している。このコントロール不能になったリークによって、これまで極秘にされてきた情報の開示がどんどん進むという状況は、あらゆる側面で起こっている。

トランプ・タワーの盗聴疑惑とほぼ同じタイミングで、3月7日、今度はウィキリークスがCIAの極秘文書を大量に公開した。資料のコード名は「Vault 7」である。資料の第1部「Year Zero」には、バージニア州、ラングレーにあるCIAのサイバーインテリジェンスセンターの機密ネットワークから得られた8761個の書類とファイルが含まれている。

これらの資料はCIAの契約企業とも共有されており、そうした企業に勤務する職員が、スノーデンのように良心の呵責からウィキリークスに情報提供したという。

また資料には、2012年から現在の大統領選挙戦にいたるまで、CIAがフランスの政党と大統領候補の情報を集めていた実態が含まれている。

明らかになったとんでもない情報

ウィキリークスの主催者、ジュリアン・アサンジは、情報のリークは今回が第1弾で、これからどんどん続くとしている。今回のリークの内容も驚くべきもので、大きく分けると次の6つの種類の情報が含まれている。

(1)CIAは、アンドロイドやiPhoneなどのスマホのほか、あらゆるコンピュータに侵入することができる

アメリカの情報機関は、アンドロイドやiPhoneのほか、WindowsやmacOS、そしてLinuxなどのあらゆるオペレーティングシステムに侵入するためのスパイウェアやマルウェアを共同で開発している。侵入すると、これらのデバイスのスイッチを入れたり切ったりできるほか、ユーザーの送信したすべてのメール、位置、マイクロフォンが拾ったすべての音、カメラが撮ったすべての画像を見ることができる。

(2)CIAは、ロシアが開発したマルウェアを自分のものとして使いハッキングした。マルウェアはCIAが使ったとしても、開発者がロシアであることを示す指紋を残す

もしこのウィキリークスの情報が正しければ、民主党本部のサーバがロシアによってハッキングされ、その情報がウィキリークスに流されたという非難はでっちあげである可能性が出てくる。ロシア製マルウェアをCIAが使っているのであれば、民主党本部のサーバをハッキングしたのは、実はCIAである可能性がある。

(3)シグナル、テレグラム、ワッツアップのようなメッセンジャーアプリの暗号化技術はすべて無効にできる

OSそのものに侵入できてしまうと、メッセージを暗号化する仕組みが作動する前に送信内容を見ることができてしまう。

(4)テレビを盗聴デバイスに変えることができる

インターネットに接続可能なスマートテレビにアクセスし、それを周囲の音を聞き取るための盗聴器に変えることができる。これは「ウィーピング・エンジェル」と呼ばれるプログラムで、テレビのスイッチが入っていなくてもアクセス可能になる。

(5)車をハッキングしてこれをコントロールし、暗殺に使うことができる

このテクノロジーが開発されているのかどうかははっきりしないが、CIAは明らかにこうしたテクノロジーの開発を模索していることは、ウィキリークスの文書から読み取れる。

(6)CIAは発見したデバイスの脆弱性を企業に渡さなかった

アップル、グーグル、マイクロソフトなどが販売している製品には、外部からアクセス可能な脆弱性がある。CIAはこうした製品の脆弱性を知りながら、企業にこれを教えなかった。そのため、企業はこうした脆弱性を直すことができなかった。

CIAが発見した脆弱性は外国の情報機関もハッキングのために使えるものである。企業に教えなかったことで、CIAは外国の情報機関を実質的に支援している。

これはすべてのデバイスが影響を受けるので、米政府、米議会、企業のCEO、システム管理者、セキュリティ担当者などがターゲットになる。

Next: 日本も無関係ではいられない、加速度的に進む機密情報のリーク



民主党サーバをハッキングしたのはCIAか?

3月7日に公開された今回のリークで、これまでのところ明らかになったのはこうした内容だ。リークされた文書は8378ページもあるので、本格的な調査と分析はこれから進むと見られる。ウィキリークスは文書を広く公開し、情報の分析に協力するよう求めている。

そして今回公開された文書は「Vault 7」と呼ばれる文書の「Year Zero」という部分に過ぎない。全体は6つあり、これはその一部である。ジュリアン・アサンジによると、さらにこれから大量の文書が公開され、それは情報機関に関する史上最大のリークになるはずだという。

ところで、現在までのところ公開されたリークで、今後大きな問題になると考えられるのは(2)だ(=CIAは、ロシアが開発したマルウェアを自分のものとして使いハッキングした。マルウェアはCIAが使ったとしても、開発者がロシアであることを示す指紋を残す)。

CIAが、ロシアの開発したマルウェアを使っており、それがロシア製であるとの指紋を残すとすれば、いま民主党と主要メディアがさかんに攻撃している「ロシアによる民主党全国委員会サーバへのハッキング」は、実際はトランプを引き下ろしたいCIAが行った可能性が出てくる。

いまトランプは、オバマ政権によるトランプ・タワーの盗聴を告発しているが、この盗聴もCIAが行った疑惑が深まることは間違いない。

コントロール不能の情報リークと日本の状況

さて、このようにあらゆる方面で情報のリークが加速度的に進行している。これらのリークを通して、民主主義の建前の背後で、エリート層の政治支配を可能にしているシステムの全体像が暴かれる方向に向かっていることは確かだ。

これは、情報機関を敵に回し、熾烈な戦いを繰り広げているトランプ政権がもたらした結果である。

この状況は日本でも変わらない。以前の記事でも解説したように、これまで日本の影の支配構造の骨格のひとつであったジャパン・ハンドラーがすべて放逐された。

これは、トランプ政権のもと、レックス・ティラーソン国務長官の指令で、1000名を越える国務省高官の解雇とともに行われた処置だ。

このとき、公然と「影の政府」と呼ばれている国務省内の「第7階の人々」も一緒に解雇された。「第7階の人々」とは、政権が代ってもアメリカが政策の一貫性を維持できるように、外交政策を一括して立案する高級官僚の集団のことである。

もちろんこの目的は建前にすぎない。「第7階の人々」はCIAなどの情報機関と連携し、アメリカの政治的な利害と目的を実現するために、影で外交政策を実行していた。この集団には歴代の政権も手を出すことができなかった。

日本に例えて言えば、いわばこれは、外務事務次官から始まって、外務省の局長以上の役職をすべて解雇したような状況かもしれない。外務省はジャパン・ハンドラーと連携し、時の政権とは関係なく日本のアメリカ依存の外交政策を実行してきたことはすでに明らかになっている。

2009年に成立した民主党政権は、外務省によって徹底的に阻害され、最終的には崩壊を余儀無くされたことは記憶に新しい。

しかし、「第7階の人々」もろともジャパン・ハンドラーが放逐されたことは、外務省が連携して維持してきた日本の影の支配構造が本格的にほころび始めたことを示唆している。

そして、それとともに、この支配構造によって管理されてきた情報が、コントロール不能になりつつあることを示している。

一挙にあらゆる情報がリークされ、表面に出るようになった。抑圧されたものの噴出である。

Next: 電通の過労死告発、そして森友学園問題も…すべては繋がっている?



すべては繋がっている?

それを構成する一連の動きこそ、昨年の12月から始まった電通の過労死告発や、ジャパン・ハンドラーが日本政府を操っていたこと、スノーデンが証言した日本のインフラに仕掛けられたマルウェアについての主要メディア報道などだ。

こうした情報は、ジャパン・ハンドラーと外務省が連携していた状況では、表面に現れることができなかったものばかりだと思われる。

そして、それに続き大きな問題となっているのが、安倍首相の森友学園スキャンダルである。これは、アメリカで急速に進行している情報リークと連動した動きではないだろうか?

もしそうだとすれば、森友学園スキャンダルは、ほんの始まりにすぎないと見てよいだろう。

これまで隠されてきた情報のリークがどんどん進んで、ジャパン・ハンドラーの支持を背景に長期政権化した安倍政権を本格的に追い詰めるかもしれない。安倍政権の命運は案外早く尽きる可能性がある。
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・中国を軍事的、経済的に牽制するための道具
・THAADで牽制
・自衛隊を米軍に組み込む
・さらに広大な構想、軍産複合体の再編成
・報告書、「未来の鋳型」
・北朝鮮の脅威は好都合
・キムジョンウンはスイスで教育


※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2017年3月10日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。3月17日に配信された最新号「第424回 北朝鮮の攻撃はやはり行われない?軍産の新たな計画」もすぐ読めます。

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ(2017年3月10日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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