株価は史上最高値を更新し続けている。だが、多くの人が「景気の良さを感じない」と口にする。物価は上がり、給与は伸びず、家計は苦しいままだ。一方で、株式や不動産を保有している人は確実に資産を増やしている。いまの日本経済では「資産を持つ者」と「持たない者」の差が決定的に広がっている。なぜ株価が上がっても生活は楽にならないのか。そして、どうすればこの格差の波に取り残されずに済むのか。(『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』鈴木傾城)
※有料メルマガ『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』2025年10月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
盛り上がる株式市場…あなたは恩恵を受けているか?
株式市場が日米共に上昇機運にある。あなたは恩恵を受けているだろうか?
先日、新聞の報道で以下のような内容の記事があった。
「日経平均株価が連日で史上最高値を更新している」
「一方、市民からは恩恵を実感できないという声」
「専門家は国内経済そのものが成長していないと指摘」
物価の上昇や家計の圧迫を嘆く声はかなり大きい。逆に給与が大幅に伸びたという実感を持つ人は少ない。株価は上がっているが、生活は悪化している。
なぜ株価の高騰と市民の生活実感がこれほどまでに乖離しているのか。
日経平均株価 日足(SBI証券提供)
別に不思議なことではない。株価は企業業績や金融政策、世界的な投資マネーの動向などによって動く。つまり、株式市場の値動きはかならずしも国民生活の豊かさや経済全体の成長と直結していない。
国内がインフレだと企業は商品やサービスの価格を上げるので必然的に名目売上は上昇する。売上が上昇すると、株価は当然上がりやすくなる。つまり、インフレは株価も押し上げることになる。
さらに輸出大手の自動車メーカーや半導体関連企業などは、「円安」の恩恵も受けて海外での収益を増加させているわけで、それもまた株価を押し上げている。
国民の生活と関係ないところで株価は動いているのだ。
その利益が国内の従業員の賃金に還元されればいいのだが、企業はそういうことをしない。賃金を上げると利益が減る。企業は利益を積極的に減らすわけがない。
そんなわけで、インフレの時代になっても賃金が上がらず、社会全体の消費に十分還元されない。
物価上昇を加味すれば労働者の購買力は低下している。名目賃金がわずかに上がっても、食品やエネルギー価格の上昇に追いつけず、生活の余裕は失われる。これが「株価は上がっているのに生活は楽にならない」という声の原因である。
ぼーっとしていたら、やられるばかりだ。
さっさと投資家になっていればよかったのだ
日本の経済成長率は長期にわたり低迷している。実質GDP成長率は1%台にとどまり、人口減少と高齢化の影響もあって潜在成長率は0%台だ。株価が史上最高値を更新する一方で、国全体の経済は停滞したままである。
そうなれば、国民の感覚からすれば、たしかに株価高騰のニュースは「どこか遠い国の話」のように映ってもしかたがない。
だが、株式を長期で保有している人は違う。
Next: どうすれば生活は楽になっていた?資産を持たない者が今やるべきは…
株式市場の上昇は、株を保有している者に利益をもたらしている。恩恵を受けているのだ。それも大きな恩恵だ。投資家は、大きな値上がり益や配当収入を得ている。今まさにそれが起きて投資家を潤し、経済格差を広げようとしている。
日本の家計金融資産の過半は現金や預金に偏って、株式や投資信託に資金を振り向けている層は限定的だ。このため、株高の利益を享受できる人と、まったく恩恵を受けない人の差が拡大するばかりとなる。
どうすれば良かったのかは明白だ。株価が上昇する前に、株式を保有しておかなければならなかったのだ。
このメルマガでは「株を保有していないと、現在の資本主義では生きていけない」と書いているのだが、株式市場が最高値を付けてている今になってそれに気づいても遅い。株式市場が上がる「前」に、そこにいなければならないのだ。
株価が上がったら企業が従業員にトリクルダウンしてくれるなど思ってはいけない。企業は粛々と内部留保を積み上げ続けている。要するに、企業は利益を労働者に分配するよりも、投資や将来の備えに回している。
結果として、株主には配当という形で資金が還元されるが、従業員の実質賃金には反映されず、事実上の「無視」である。つまり「株を持っているか否か」が経済的な格差を決定する要因になっている。
株を持たない層が「恩恵を実感できない」と感じるのは当然である。株高の果実は投資家に分配される。とすれば、さっさと投資家になっていればよかったのだ。もう一度言う。
この状況を見越して、さっさと投資家になっていればよかった。
株や不動産といった資産を持たない層は?
株式や不動産といった資産の価格が高騰すると、それを持つ者と持たない者の差は一気に広がる。これが、資産インフレの本質である。
現在の日本は、まさにその局面にある。
株価は史上最高値を更新し、都市部の不動産価格も上昇を続けている。国土交通省が発表した公示地価では、全国平均は前年比で3年連続の上昇となり、特に東京都心や大阪など大都市圏では商業地の価格が急騰している。
こうした資産価格の上昇は、すでに保有している人の資産を膨らませる一方で、これから買おうとする人を遠ざける。資産を持っているか否かが、生活の安定度や将来の見通しを決定づける。
問題は、この資産バブルが社会全体に均等に振り分けられないことだ。
株式を持たない層は株高の恩恵を直接受けることができない。さらに、住宅を購入していない層は不動産価格の上昇により持ち家を持つ機会を奪われる。家賃も上がっていくだろうが、それは大きな負担となって家計を圧迫する。
資産を保有している人は資産価値の上昇でさらに豊かになる。だが、資産を何も持たない人は、生活の余裕を失っていく。
Next: 格差は広がる一方。何も行動しないことのリスクは大きい
統計も格差の拡大を示している。厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、日本のジニ係数(所得格差を示す指数)は長期的に上昇傾向にある。政治家が無能なので、うまく分配することができず、今後も格差は拡大する一方となるだろう。
資産を持つ者と持たざる者の差は、一時的な株高や不動産高騰だけの問題ではない。それは今後の生活水準、教育機会、老後の安定にまで影響を及ぼす構造的で長期的な問題である。
株や不動産といった資産を持たない層は、取り残される。これは、私がこれまで、メルマガでも、ブログでも、書籍でも、繰り返し繰り返し書いてきた結末だ。とうとう、絶望的な格差拡大が始まったのだ。
何も行動しないことのリスクは大きい
株式を持っていない層にとって、いまの日本経済の現実は厳しい。
株価や不動産価格の上昇は資産を持つ人に利益をもたらし、持たない人との格差を拡大させている。給与は実質的に伸び悩み、現金や預金を保有するだけでは物価上昇に対応できない。資産を持たないままでは、確実に取り残される。
では、どうしたらいいのか。選択肢は――
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- 株価が史上最高値でも恩恵がない?いや、さっさと投資をしておくべきだったのだ(10/12)
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『
マンさんの経済あらかると
マンさんの経済あらかると
』(2025年10月12日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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