金融資産を保有していない世帯は、日本ではおよそ3割にのぼります。若いうちだけの話ではありません。統計を見ると、20代でゼロだった人の多くは40代になってもゼロのままで、時間が解決してくれるという前提はそもそも成立していないのです。では、何も持たない人が人生を変えたいなら、何をすべきなのでしょうか。(『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』鈴木傾城)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
金融資産ゼロでも悲観するな。何も持たない人が人生を変えたいなら、これをしろ
東南アジアのスラムを歩くと、そこで暮らす人たちの大半が「現金を持っていない」ことにすぐ気づく。「持っていない」というのは「少ない」という意味ではない。明日の食費を除けば手元に何も残らない。
彼らは不運な事情もあって稼ぎが少なく、「貯める」ことがなかなかできない。ほとんどが日雇いかそれに近い働き方で、収入も不安定だ。貯めようとしても、ケガや病気が一度でもあればカネは消える。
日本にも似た場所がある。大阪のあいりん地区や横浜の寿町の人たちは、日雇い労働で得たカネを、宿代と食費と自暴自棄の酒で使い果たす。
カネをほとんど持っていないと言えば、私はギャンブル依存症で多重債務に陥った人たちも見てきた。彼らはギャンブルに取り憑かれ、カネが入るたびにパチンコや競艇で大金を賭けて失う。
生活費が足りなくなると消費者金融でカネを借り、カネが入るとその借金を返し、ふたたびギャンブルで賭け、数日後にはまた借りる。貯金などする余地もない。
メンタルの問題で借金から抜け出せない人も知り合いにいる。働けない時期があり、その期間の生活費は借り入れでしのぐので、体調が戻って働き始めても積み上がった返済に追われて手元には何も残らない。
彼らは特殊な人たちなのだろうか? 普通に暮らしているとそう見えるかもしれない。だが、ギリギリの生活から生活破綻に落ちてしまうのは「彼らだけではない」ことに気づく必要がある。
金融広報中央委員会の調査によれば、金融資産を保有していない世帯は二人以上世帯で24.7%、単身世帯で36.0%にのぼる。つまり、日本人のおよそ3割が金融資産ゼロなのだ。これは無視していいような数字ではない。
金融資産ゼロと聞いて思い浮かぶのは、社会に出たばかりの若者だろう。実際、20代の非保有率は二人以上世帯で36.8%、単身世帯で43.9%と、どの年代よりも高い。収入が少なく、貯める余裕がない。ここまでは理解できる。
問題はその先だ……。
ただ年齢を重ねただけでは金融資産は増えない
この調査を年代別に見ていくと、単身世帯の非保有率は30代で34.0%まで下がるものの、40代では40.4%とふたたび上昇し、50代でも38.3%にとどまる。
二人以上世帯も似た動きで、30代28.4%、40代26.8%、50代27.4%と、20代から8ポイントほど下がったあとは、ほぼ横ばいのまま動かない。60代で21.0%、70代で19.2%まで落ちるが、それでも5世帯に1世帯はゼロのままだ。
この数字が示すことは、はっきりしている。
ただ年齢を重ねただけでは金融資産は増えないのだ。時間が解決してくれるという前提が、そもそも成立していない。20代でゼロだった人の多くは、40代になってもゼロなのだ。そして40代でゼロの人が、それから急に貯蓄に目覚めることも稀だ。
40代ともなれば、20代の頃よりも収入が高いのだから貯金はしやすいと思うかもしれないが、実際はそうではない。なぜなら、収入が増えると支出も同じだけ増やしてしまうからだ。
年収が上がれば家賃の高い部屋に移り、車のグレードを上げ、外食を増やす。そして、生活水準は一度上げると下げられない。だから手取り20万円の人も40万円の人も、月末に残る額はどちらもゼロに近づく。
年収600万円台で金融資産がない世帯が珍しくないのは、これが理由だ。
金融リテラシーがない人は、手元にある現金を使い切るように行動する。先に貯金しておいて残った現金の範囲で生活するのではなく、先に使ってあまった現金を貯金しようと考える。これだと貯金は増えない。
依存症や借金を抱えている人の場合はなおさらだ。
借金の返済は毎月確実に出ていく支出で、しかも利息の分だけ元本より多く払わなければならない。ギャンブル依存症であれば、入ったカネが貯まる前に消える。こうなると、貯蓄以前にカネが出ていく穴をふさぐことが先になる。
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ゼロから抜け出すために目指すべき金額は100万円
私たちは資本主義社会で生きなければならないのだから、とにかく金融資産ゼロという危険な状態から早めに脱しておく必要がある。
日本人なら、最初に貯めるべき金額は100万円であると私は考えている。
単身者の手取りを月20万円とすれば、100万円はおよそ5か月分の生活費に相当する。仕事を失っても、病気で働けなくなっても、5か月あれば次の手を打てる。逆に手元が10万円や20万円しかなければ、同じ出来事が起きた瞬間に借入に頼るしかない。
ギリギリに生きている人と、普通に生きている人の経済的な相違点があるとしたら、まさに「何かあったときの緩衝材があるかないか」なのである。分かりやすく言うと、収入が途切れたときに数か月分の現金があるかどうかで、その後が分かれていく。
100万円は誰もが目指せる金額でもある。
給料をもらったら、とにかく真っ先に決めた額を強制的に貯金することを「先取り貯金」と呼ぶ。この先取り貯金で月3万円を積み立てれば約2年9か月、月5万円なら1年8か月で到達する。
1000万円や1億円という数字は、ゼロの人間にとっては現実感がない。だが100万円なら、期間が読めて、途中経過も見える。資産形成でもっとも多い失敗は金額の大きさではなく、途中でやめることだ。
到達できる目標を置くことには、それだけで意味がある。
コツコツと貯めた100万円は、棚ぼたで手に入った100万円とはまた違う感慨がある。それは自分の忍耐と継続心の象徴である。だから、苦労して100万円に到達したら、それは取り崩すことができない塊(ブロック)となる。
重要なのは、100万円という塊を作った時点で、金融資産を持たない約30%の層から明確に抜け出したことだ。
調査上のゼロという区分は文字通り0円を指すが、数万円程度では冠婚葬祭や家電の故障で簡単に消え、すぐにゼロへ戻る。数万円と0円のあいだに実質的な差はない。
だが、100万円は明らかに違うのだ。
一度の想定外の出費があったとしても容易に消えず、これまでの蓄積が習慣化したのであれば、翌月にはまた積み上がっていく。ゼロへの逆戻りが起きなくなり、むしろそこから本格的に「増えていく」のが100万円という水準なのだ。
100万円に到達する人は、順序を変えている
100万円を目指すなら、もっとも確実で着実なのが――
『
鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編
鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編
』(2026年8月30日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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弱肉強食の資本主義が蔓延し、格差が急激に広がっていき、いよいよ日本人の間にも貧困が蔓延するようになってきています。経済暴力の中で日本人がどのように翻弄されているのかを、危険なまでの率直さで取り上げ、経済の分野からいかに生き延びるかを書いているのがこのメルマガ編です。