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【株価展望】全体相場はやや売り/『ポケモンGO』任天堂は最後の押し目近し

先週の市場はポケモン一色でしたが、話題の任天堂が金曜夜間に『ポケモンGO』の業績への影響を否定する開示。任天堂の株価は、米国ADRの日本円換算で金曜終値から13%程度安い水準となっています。ただこれは第二上昇波に向けた良い押し目でしょう。(『KA.Blog』)

アナリストにも任天堂自身にも分からない「社会現象」の行く末は?

週末の日経平均は反落。任天堂を除けば閑散

日経平均は金曜反落。前日のNYはインテルの決算が悪かったことや、原油価格の下落などを受けて軟調。また黒田総裁によるヘリコプターマネー否定のBBC報道を受けて(ただし6月17日に収録されたもの)、為替が1円以上円高に振れて返ってきました。

それを受けた日経平均は朝方から大きく売りが先行。結局前日の上げ分を帳消しにして始まり、その後もじり安の展開になりました。休日を前にした様子見ムードも蔓延。後場は日銀のETF買いなどもあって下げ渋ったものの、16600円台を回復するのがやっとでした。

売買高は16億株弱、売買代金は2.4兆円程度でしたが、超話題の『ポケモンGO』の国内配信が遂に開始されたことでまたまた大活況となった任天堂<7974>だけで7000億円の売買代金をこなしているため、それを差し引くと閑散でした。

週明けは金曜終値近辺でスタートへ

投資判断は「やや売り」。金曜のNYは通信大手の好決算を受けてしっかり。S&Pは終値ベースでの最高値を更新しました。それを受けて日経平均先物は16620円ということで、月曜は概ね金曜終値近辺でのスタートになりそうです。

しかし先週のトルコのクーデター未遂に続いて金曜もドイツで銃乱射事件があり、本当にここ最近毎週のように金曜は何か起きますね。

トルコは地理的にも、東と西を繋ぐ重要な地点で、ここが安定化するかどうかは世界情勢にとても重要です。不安定化すれば次第にギリシャに浸食し、イタリアを浸食し…と次第に世界の不安定要素が拡大していく可能性にもなります。軍事的にも経済的にも。なので今回被害が拡大しなかったのは、とりあえずは幸いでした。ここから何がどうなるかはまたわかりませんが…。

公的年金の売りで上値は重い

消去法的にも安全で、自民党の支持が強く世界で一番政権が安定しているのが日本。その背景もあってか先週の投資主体別売買動向では外国人の買いが圧倒的で、現物・先物合計で8811億円の買い越し。日経平均5連騰の原動力となりました。

一方それに大して大いに売り向かったのが個人投資家で、計5589億円の売り越し。これで流れが変わった…のかどうか。

特に公的年金の動向を示す信託銀行は売り越しに転じていますから、外国人がきちんと買ってくる状況にならないと、上値はGPIFの売りに抑えられてしまいます。このあたりは特に注意して見ておくべき流れです。

海外動向

Brexitショックからかれこれ1ヶ月が経過しますが、イギリスなんて「Brexitって何?食べれるの?」くらいにとぼけてシレシレっと年初来高値を更新しています。不動産に対する警戒感やイタリアの不良債権問題も何のその。まあイギリスの場合は確かにポンドが急落したので、むしろ輸出で稼ぎやすくなったという面もあるのかもしれません。

ちなみに「離脱になったらポンドが20%急落する」と言っていたジョージ・ソロス氏は、残留に賭けてポンドを買い込んでいたのだとか。正直どこまでがポジショントークなのかわかりませんが、相変わらず台風の目(この場合イギリス)は風が穏やかなんですね。

アメリカ株も雇用統計が前月とは打って変わって良かったところから連日の高値更新波動。空売りの買い戻しも巻き込んでボーナスステージ入りという感じです。

原油はアメリカでは夏のドライブシーズン入りということでのガソリン需要もあり、例年7月か8月に高値を付ける傾向が強いです。昨年はむしろ7月以降ダダ下がりでした。足元でも50ドルの壁が意識される中、限月交代があっても下落が続いており、簡単に上がっていくような環境ではなさそうです。

Next: 週末ADR株価急落の任天堂、第二上昇波に期待できる理由とは?



どう見る、任天堂のADR株価急落

市場はもうポケモン一色でしたが、話題の任天堂が金曜夜間に業績への影響を否定する開示。それを受けてPTSは止まりましたが、アメリカのADRでは日本円換算で金曜終値から13%程度安い水準となっています。

まあ任天堂に関しては遅かれ早かれ業績期待に対する淡い夢から覚める第一上昇波動の終了は時間の問題でした。

第一波が終わればしばらく現実を見るモードになると思います。それは具体的には決算を受けて、経営陣の感触を聞き出そうとアナリスト達が色々質問し、それが会社のHPや証券各社のレポートなどで色々書かれ、投資家の目線が理想から現実に引き戻されるモードです。

押し目と『ファイアーエムブレム』

ただ私は押す場面は第二上昇波、つまり今度は「業績への影響度を冷静に見極めた上で投資家が投資してくる新波動」に向けた良い押し目だと思います。

と言うのも、任天堂はポケモンだけではないからです。その他にも『マリオ』『どうぶつの森』『ファイアーエムブレム』『ゼルダの伝説』といった、超人気IPを豊富に抱えています。今回の成功で学習したことを次のシリーズに使うことができます。

特に『ファイアーエムブレム』は今ここにきてアメリカで人気だそうで、私も好きなシリーズなんですけど、これはかなり期待が持てます。

ちなみに『ファイアーエムブレム』と『どうぶつの森』のスマホゲームも秋に出すと既に発表済みです。これらは今回のNianticが開発した『ポケモンGO』とは異なり完全な自社製作のゲームなので、丸々売上が自社のものになります(厳密には運営はDeNA<2432>が行うので、いくらか取られます)。

ですから正直ガンホーのパズドラの比ではないんですね。例え『ポケモンGO』のブームが一旦下火になっても、次のタイトルでまた大ヒットを出すことができます。そして例えば『ポケモン』で育てたキャラを『どうぶつの森』で使うことができる、などといったキャンペーンを張ることで、いくらでもユーザーを任天堂の手のひらから外に出さず、回遊させることができます。

「社会現象」

そもそも『ポケモンGO』の配信が始まってこの2日間、町は夏休みということもあってあちらを見てもこちらを見ても、スマホ片手に歩いている老若男女が目立ちます。今までスマホはポケットに入れて歩くものでしたし、そもそも私の地元のような田舎では車ばかり走っていて歩行者はまばらですが、一気に歩行者が増えました

いくら『パズドラ』が大ブレイクしたといっても、こういう姿や現象を目撃したことがあったでしょうか?地元の公園や神社なんて、いまだかつてないほどの人が集まっていました。

これ自体が巨大な広告塔であり、パワーなんです。下手すると普通にスマホを見ている人ですら「ポケモンやってるんじゃね?」と思うほど。ユーザーが増えれば増えるほど課金も大きな威力を発揮します(より他人を凌駕した時の快感が得られるため)。

これらの行く末をアナリストは元より、任天堂自身が果たして全て把握できるかどうかは甚だ疑問です。最初はバイオ株同様、期待値が先行するのは当然ですし、そもそもそれが株式投資の醍醐味とも言えます。

不確定要素は新型ゲーム機NXと為替レート

一方、新型ゲーム機NXはまだ未知数です。もっと言えばポケモンも未知数でしたが、実際こうして結果を出したので株価材料になりました。良いように転がれば、これが今度のNXに対する期待感にも結び付いて、さらに相乗効果を出すかもしれない。それが時価総額が1兆円以上増加した裏付けになってきます。

ただ任天堂の業績面に目が向き始めた時にどうしても気になるのが為替です。任天堂は売上の7割が海外で、また海外資産の多い会社なので(しかもヘッジをしない)、為替変動が大きく影響してくる超外需企業です。1円の円高で数十億円の為替差損に繋がると言われています。

ですから足元円安に急速に振れたことも強烈な追い風になり、さすがに106円台まできたところで一段の上昇は難しそうですが、為替もまた夏以降落ち着いてきたら追い風になると思います。

逆に言えば円高がドンドン進んでしまうと、いかにポケモンがヒットしようが苦しいということにもなりそうです。

そう考えると、今回の任天堂のリリースは27日の決算発表時、むしろ円高による下方修正を行うための布石なのかもしれませんね。そこが最後の押し目になるのかもしれません。個人的には任天堂も良いですが、やはり周辺株を狙っていくパターンが一番無難と思っています。

Next: マザーズ先物が最初から終了モード…新興市場は「売り」



新興市場は「売り」

新興市場は「売り」。金曜は各指数共に軟調。マザーズは先物が始まって以降軟調な推移が続いていますが、その先物の出来高も金曜は遂に684枚と超閑散。最初くらいはせめて盛り上がると思いましたが、最初から終了モードですね。LINE<3938>の上場や任天堂の盛り上がりと重なったというのも、多少の不運かもしれません。

ただ従前でもマザーズコア上場投信<1563>を空売りすればマザーズに対しての空売りは可能でした。ほぼこのコア指数採用銘柄とマザーズ先物の指数寄与度の高い銘柄は重なりますし。ただ残念ながら流動性が極端に少ないので相手にされていませんでした。それと同じ歴史を繰り返している感じです。取引時間が長い分、先物の方が余計薄まっている感じがあります。

こうなってくると裁定取引をしようとしていた業者はアテが外れ、変に無駄な在庫を抱えていたくはないはずですから、その処分売りも足を引っ張りそうです。

ポートフォリオ銘柄

日本セラミック<6929>は反発。なんだかんだでじわりと上値追いが続き、水曜には終値ベースで01年以来の高値水準となりました。為替水準が落ち着いてきたことに加え、世界的に自動運転の車の開発が進んでいることで、センサーの搭載点数が増えていることが強み。また今月末にはTOPIX浮動株比率の変更による買い需要もあります。引き続き注目。

三菱製紙<3864>は反落。低位で株式併合の銘柄は併合の権利落ちまで下がるというパターンが多いので、同社もその流れに乗ってしまっています。ただPBRは0.5倍割れで業界再編の機運が強まる紙パ業界ですから、低位株物色の相場展開でも始まれば、突発高することもありそうです。ポケモンティッシュでも出してくれれば良いのですが…(そればっかり)。

あさひ<3333>は続落。折角良いスタートを切りましたが、進んでいく円安に加え、16日にサイクリング中に転倒した自民党幹事長の谷垣氏の容態が重いと月曜夜間に伝わった辺りから、一気に売られる流れに。うーん、谷垣さん大丈夫でしょうか。

自転車とポケモンは周囲に十分注意しながら乗りましょう…ってまた無理矢理ポケモンに絡めてみました。

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KA.Blog』(2016年7月23日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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