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【7月米雇用統計】前月反動で弱めか。ただし100円割れの場面では慌てずに=ゆきママ

材料出尽くしで早くも夏枯れといった相場展開になりつつありますが、本日発表される7月分の雇用統計はイギリスのEU離脱(Brexit)後の数字であるため、いつも以上に注目されています。今回も展望などについてしっかり解説していきますので、ぜひお読みください。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

今夜の値動きは限定的、想定レンジは99.50~102.50円

雇用者数は反動の反動、夏場の減少傾向に要注意

Brexitなどの影響が見極めにくいため、結果を予想するのはなかなか難しいのですが、わかっていることから順番に、丁寧に確認していきましょう。

今回のポイントとしては、まず「前回6月分からの反動に注意すべき」ということが挙げられます。前回の6月雇用統計における非農業部門雇用者数は、前々回の5月分が非常に弱かった反動もり、事前予想の+18.0万人を大きく上回る+28.7万人という結果になったことは記憶に新しいことでしょう。

雇用者数はあくまで前月比なので、弱かった月の翌月に強い数字が出ることは往々にしてあるのですが、逆もまた然りということです。弱い月の反動は誰もが期待するのですが、なぜか強い月の反動というのは無視されがちなので、お忘れなく。

また、アメリカでは夏場に雇用が低迷しやすいといった話がありましたので、実際に過去10年(2006~2015年分)の非農業部門雇用者数を調べ、以下のようにまとめました。

過去10年分の非農業部門雇用者数における各月の中央値(単位は万人)


かなりバラツキがあるため中央値で比較してみましたが、確かに6~8月がワースト3となっていて落ち込みが顕著でした。季節要因から、今回の7月分は弱めの結果となりやすいこともポイントでしょう。

設備投資を控える企業!賃金の上振れはなさそう?

では、雇用者数以上に利上げ動向に影響する平均時給(賃金上昇率)がどうなのかといえば、こちらも厳しそうです。

というのも、先週末に発表された米4-6月期GDPにおいて、企業の設備投資は-2.2%という低調さを記録しており、リスク回避姿勢が明らかとなりました。こういった状況下では、企業は解雇しやすい安価な労働者を雇用するという選択をとりがちです。

ちなみに、大統領選が終わるまでは積極的に投資をしたくないといった事情もあるようです。民主党のクリントン、共和党のトランプという両候補者が争っていますが、重視する経済政策などは当然に異なりますから、どちらか決定するまでは動きたくないとのこと。

これに加えてBrexitもありましたから、ますます企業はリスクを取りにくくなりました。さらに、ポンド安の影響で相対的にドル高になったため、特に輸出系の製造業を中心に雇用は厳しくなりそうで、他業種と比べて製造業関連の賃金は高いことを考えると、上振れは難しそうな情勢となっています。

Next: 先行指標はイマイチ。カギを握る「平均時給(賃金上昇率)」予測値は



先行指標はイマイチも、ハードルは低めな印象

先行指標に関しては、以下の表にまとめました。ADP雇用報告以外は今ひとつな内容となっています。

青字は改善、赤字は悪化(数値はいずれも速報値)

ISM製造業の雇用指数が50ポイントを割り込んでいることが気がかりでしょうか。先ほども書いたように、製造業は賃金にも大きく寄与しますので、この下振れは痛そうです。

とはいえ、イエレンFRB議長は昨年末から「+10万人程度の雇用増で新規労働者は吸収できる」と述べていますし、カプラン・ダラス連銀総裁も今月2日に「+8.0~12.5万人を越えれば健全な雇用水準」としています。やはり完全雇用に近い水準ということで、+20万人超という水準で雇用が伸び続けることは当局も想定していません。

したがって、非農業部門雇用者数は現在+18.0万人という事前予想値となっていますが、+10万人前後といった下振れがあったとしても、初動のみで一過性の動きに終わる可能性が十分あるでしょう。エコノミストも指摘している通り誤差がかなりありますから、本来は数か月単位でトレンドを見るべきですからね。

むしろ、Brexitの影響がテーマとなっているため、最終的な方向としては平均時給(賃金上昇率)の動向がカギを握ることになるのではないかと考えています。ちなみに、賃金上昇率の事前予想値は前月比+0.2%、前年比+2.6%となっています。

気になる想定レートは1ドル=99.50~102.50円

まず、よほどのことがなければそれほど動かないでしょう。今のドル相場における最大のテーマは利上げ動向ですから、これに大きな変化をもたらすような結果にならなければ値動きは限定的と思われます。

FF金利先物市場の動向から算出される利上げ確率であるFedウォッチの最新情報を見ると、9月が10%程度、12月が40%程度となっていますので、これらの見通しが大幅に変更されるような内容でない限りは、トレンドが発生するような状況に至らない可能性が高いということです。

仮に今回の7月分の雇用統計が強い内容となったとしても、9月に予定されているFOMC(連邦公開市場委員会)の前には8月分の発表がありますから、まずはそれを見るまでは結論が出せないということになります。また逆に弱い結果となったとしても、雇用者数に関してはハードルの低さとブレの大きさから、さほど問題視されないでしょう。

つまり、上下に抜けるようなよほどの結果というのは、上方向であれば賃金上昇率がFRB当局の目標の下限値である前年比+3.0%を超えるような数字、下方向であれば前月を下回ってマイナスになることが求められそうです。

大体こんなところでしょうか。これまで書いてきたことを踏まえると、雇用者数、賃金上昇率はいずれも強い数字になることは考え難いため、基本的には下目線です。ただし、100円を割り込めばそれなりに買いも出てきそうなので、雇用者数や賃金上昇率がマイナスとなるような結果でなければ、深追いは避けたいところでしょう。

それから、事前予想値を多少上回る程度のそこそこの数字となった場合は、戻り売りのチャンスかと思います。とりわけ、初動は雇用者数の数字が影響しますから、雇用者数の数字が予想を上回り、賃金上昇率が予想を下回るパターンは大きなチャンスとなりそうです。

Next: 雇用統計にまつわるアノマリー「ジブリの日」。今夜は『もののけ姫』放送



忘れちゃいけない?今日はジブリの日です!

これは余談になりますが、雇用統計にまつわる日本独自のアノマリーとして、『ジブリの日』と呼ばれるものがあることはご存知でしょうか?冗談でもなんでもなく、実はWSJ(ウォールストリートジャーナル)の海外紙などでも取り上げられたほど有名です。

相場におけるアノマリーとは、理論的に説明できる明確な根拠はないものの、よく当たるという経験則のことを意味しますが、ジブリの日はというと、日本テレビ系列で金曜21時から放送される「金曜ロードShow!」でジブリ作品が放映されると相場が大荒れとなるとされています。

多くの場合は雇用統計の結果が下振れし、リスク回避から株価が急落、大幅なドル安(円高)となることから、『ジブリの呪い』とも囁かれるほどです。

そして、今日はなんと「もののけ姫」が放映されますから、まさにジブリの日となります。念のため(?)警戒しておくと良いかもしれませんよ。

まぁ、個人的な見解としては、このアノマリーはジブリ作品がそもそも子供の夏休みを意識して、夏場に放映されやすいことに起因していると思いますけどね。そもそも、新作公開もほぼ夏ですし。夏場の雇用者数の下振れのしやすさは前述した通りですから、こういった分析もしながら楽しく雇用統計に臨んで頂ければ幸いです。

【関連】日経平均16,938円を抜けず/2016年は円高趨勢、為替相場の注目点=山崎和邦

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年8月5日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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