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「年金」を巡る漠然とした不安。日本で年をとることの何が心配か=山田健彦

一般論として65歳から頼りになるのは年金です。国からの年金は主として自営業者の人が入る国民年金、会社員が入る厚生年金がありますが、年金の受給額はその人の年金掛け金の納付期間、納付金額により大きく異なります。(『資産1億円への道』山田健彦)

貯金5,000万円では足りない、日本人の「豊かな老後」のゆくえは

「宇宙空間に到達した」日本の借金

財務省のHPによると、国の財政は、支出が税収等の収入を上回る財政赤字の状況が続いていて、収入と支出等の差額を借金で埋め合わせた結果、普通国債残高は年々増加し、平成28(2016)年度末で838兆円程度に上る見込みということです。

838兆円ってどのくらいのものか想像がつきますか? 1万円札を積み上げたら、この838兆円ってどの位の高さになるでしょう?

1万円札を積み上げると1千万円分で約8センチだそうです。そうすると1兆円でおよそ8千メートル。これって世界で一番高い山といわれているエベレストとほぼ同じ高さです。

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1兆円でエベレストとほぼ同じ高さですから、838兆円ってエベレストを838個上に重ねたのと同じ事になります。

さすがに月までは届きませんが、これってすでに大気圏を脱出している高さになります。高度1万メートルで水平飛行する旅客機なんて笑っちゃうくらい遙か下を飛んでいることになります。

この宇宙にまで飛び出した借金を誰がどうやって返すのでしょうかと質問されたら、思わず「う~ん…」てなっちゃいますよね。

同じく財務省のHPからですが、支出の中で社会保障関係費が約3分の1を占めているそうです。これって早い話、我々が社会の第一線からリタイアしたときの年金や医療・介護費用です。

「年金は大丈夫か!?」「医療費の膨張を押さえろ!」という報道も分からないわけではありませんね。

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引退後にかかる費用は1億円超!?

厚生労働省が発表した日本人の平均寿命は男性が81、女性が87です。100歳以上の人は6万人を超えました。100歳を超えると政府からお祝いの銀杯が出るそうですが、政府はこの銀杯を純銀製から銀メッキに変える予定と言われています。

総務省統計局の調査によると、社会の第一線から退いた夫婦の消費支出は60代で月に約30万円70代以降で約24万円とのことです。

これに税金などの消費支出以外の経費を勘案すると、65歳の人が90歳まで生きる場合、約8,500万円が最低必要となります。ある程度のゆとりある生活を望むなら、もっと資金を用意する必要があります。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」では、夫婦の「ゆとりある老後に必要と思われる生活費」は、1ヶ月あたり35万4千円となっています。65歳から90歳までの25年なら1億円を超える額となります。

こんな莫大な金額をどのようにすれば捻り出せるのでしょうか。

Next: 年金だけでは貧乏まっしぐら?医療費支出の半分以上は70歳以降!



年金だけでは貧乏まっしぐら?

一般論として65歳から頼りになるのは年金です。

国からの年金は主として自営業者の人が入る国民年金、会社員が入る厚生年金がありますが、年金の受給額はその人の年金掛け金の納付期間、納付金額により大きく異なります。

日本年金機構の統計(2014年8月)では、厚生年金受給者の平均受給額は月14万7508円、国民年金の場合は月5万3418円となっています。

これらの情報をもとに、年金以外の自分自身の蓄えの必要額を計算すると、厚生年金加入者でも最低限、4,000万円くらいは自分で用意する必要があります。もし「ゆとりある老後」を過ごしたいなら、自分で約6,200万円を用意しなければなりません。

退職金が2,500万円としても、やはり自分で1,500万円~3,700万円を用意する必要があります。

しかもこの数値以外に、諸物価の上昇や家屋のメンテナンス費用、家電の買い換え、さらには病気で入院するときの費用などを別途考慮しなければなりません。

結構大変な時代になってきました。

生涯を通じた医療費支出のうち半分以上は70歳以降に

厚生労働省のHPに「健康寿命の延伸に向けた取組」という資料があります。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、介護不要で健康的に生活できる年齢の上限のことです。

それによると、2013年現在で健康寿命は男性が71.19歳、女性が74.21歳です。日本人の平均寿命は男性が約81、女性が約87ですから、男性の場合で約9年、女性の場合は約12年超、さまざまな医療・介護費の支出に直面することになります。

生涯を通じた医療費支出のうち、その半分以上は70歳以降という試算もあり、今は健康な人でも医療費支出に備えた蓄えも必要です。

Next: 漠然とした不安の正体は「年金制度の大前提の崩壊」にあった



年金制度の前提が崩壊している

ところで、今の年金制度は、1961年の国民皆保険制度が施行されたのが始まりとされていますが、その頃の平均寿命は、厚生労働省の「簡易生命表」によると男性が65.21歳、女性は69.88歳でした。

当時の定年は55歳なので、男性ですと引退してから10年くらいで寿命を迎えたことになります。

10年くらいであれば、退職金と年金とを合わせて貯蓄を取り崩しながら、何とか老後の資金ショートは免れたかもかもしれません。しかし今は、60を過ぎてから平均で20年以上も生きるので、何もしないでいると資金ショートとなる可能性が増えてきます。

日本の年金制度は、ご存じのように現役世代の人々が引退した世代を支えていく仕組みになっています。この仕組みは、常に人口が増えていくという前提で機能しますが、現実はそうなっていません。

仮に今からずっと、爆発的に赤ちゃんがたくさん生まれたとしても、その人達が働いて年金保険料を納付できる年齢に達するまでには最低16~22年の期間が必要です。出生率を上げるといっても、年金制度が再び軌道に乗るまでには相当の忍耐期間が必要となります。

一方、厚生労働省の統計では、平成26年度分の国民年金納付率は68.0%。ただ、所得が著しく低い等の理由で保険料の納付を免除されている人を考慮すると、実際の納付率は40%くらいという推計があります。

このような低い納付率で制度が存続できるとは思われません。今後ますます、高齢者が生きていくための保険である年金制度は怪しくなっていきます。ならば、その年金を補完するものは何なのでしょうか。

預貯金の金利がほぼゼロなので、個人向けの年金保険、家賃収入をもたらす不動産投資、株式等の有価証券への投資、夫婦共働きの期間を伸ばす、いろいろとあるとは思いますが、いずれにしても何か自分からアクションを起こす必要があります。

次回以降は、投資に直結するような世の中の動きやその見方についてお伝えしていきます。

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資産1億円への道』(2016年8月4,12日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

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