北朝鮮情勢が緊迫していますが、投資家が何かを予測する際にはリスクを定量する必要があります。今回は日本株への影響を念頭に、半島有事の確率を考えてみましょう。(『バフェットの眼(有料版)』八木翼)
結論:アメリカが北朝鮮に先制攻撃しないほうが不思議である
リスク=発生確率×損失額
北朝鮮情勢が緊迫していますが、アメリカに住んでいるマーケットハック執筆者の広瀬氏によれば、極東は、シリアと同レベルの文脈で語られているようです。
何かを予測する際には、リスクを定量する必要があります。リスク=発生確率×損失額 です。最初に、何に対する損失額なのかを決定する必要があります。
私たち日本人のなかには、日本株で運用している人も多いと思います。そのため今回は、「日本株に与えるリスク」を定量していきたいと思います。
過去、アメリカはどうやって戦争に参加してきたのか
まずは、アメリカが過去にどのような時に攻撃を仕掛けたのかを考えます。
<第一次世界大戦にどうやって参戦したのか?>
さて、Wikipediaで「第一次世界大戦」を調べてみると、下記が記載されていました。
各国はドイツ・オーストリア・オスマン帝国・ブルガリアからなる中央同盟国(同盟国とも称する)と、三国協商を形成していたイギリス・フランス・ロシアを中心とする連合国(協商国とも称する)の2つの陣営に分かれ、日本、イタリア、アメリカ合衆国も後に連合国側に立ち参戦した。
アメリカは、あくまで後から戦闘に参加している国です。さらにしっかりと議決をとってから参戦しています。
ちなみに第一次世界大戦では、
上院:82対6
下院:373対50
となっており、圧倒的多数の票を取得して戦争に参加しています。
<第二次世界大戦にどうやって参戦したのか?>
第二次世界大戦のきっかけは、Wikipediaによれば下記とされています。
1939年9月1日、ドイツ軍がポーランドへ侵攻したことが第二次世界大戦の始まりとされている。
ということで、こちらもアメリカが原因というわけではありませんね。
きっかけは皆さんもご存知の通り、日本が1941年12月8日(日本時間)にマレー作戦と真珠湾攻撃を行って、イギリスとアメリカなどの連合国に宣戦布告したことです。こちらもアメリカは、まずは攻撃を受けてから戦争を仕掛けるスタイルとなっていますね。
過去のデータを見るかぎり、アメリカは基本的に攻撃を仕掛けられてから戦争をする国と言えます。ただし今回は、それに反してシリアに先制攻撃を仕掛けており、その事実を北朝鮮がどう解釈し、選択肢が限られる中でどう行動するかが重要となってきます。
Next: 北朝鮮側のオプションは3つ。最悪シナリオの可能性はどの程度か?
北朝鮮側のオプションは3つ。最悪シナリオの可能性はどの程度か?
では、北朝鮮が攻撃を仕掛けてくる可能性はどの程度あるのでしょうか?
北朝鮮のオプションとしては、下記の3つがメインでしょう。
- 米国との対話に応じ、核兵器を放棄する(制裁を解除。体制は維持)
- 米国との対話に応じるふりをし、核兵器の実験を続ける(制裁解除。体制は維持)
- 米国との対話に応じず、戦争をする(制裁そのまま。体制崩壊)
そう考えた時に、どう考えても(2)が一番適当だと思います。
米国は先制攻撃することはあまりないのですが、シリアでは見事な先制攻撃をして、ロシアの機嫌を損ねています。そう考えると、今の米国は本気である可能性が非常に高いです。
漫画『HUNTERXHUNTER』(ハンターハンター)のゲンスルーというキャラクターが、交渉において大事なことを言っています。「いかに冷静でイカレてるか相手に理解させるのがコツだ」。トランプは、シリア攻撃でこれを印象付けることに成功したように思います。
北朝鮮はかなり追い詰められていますね。そこで、最初に北朝鮮が取る行動として3つのオプションを考えると、それぞれの確率は、だいたい以下のようになるでしょうか。
- 10%
- 40%
- 50%
これにアメリカが攻撃する確率をかけ合わせてみましょう。
北朝鮮が(1)を選んだ場合、アメリカが攻撃する確率は0%です。
北朝鮮が(2)を選んだ場合、アメリカはそれが明るみになり次第100%攻撃します。これは、ほぼ間違いなくバレると思います。
北朝鮮が(3)を選んだ場合、アメリカはほぼ間違いなく応戦します。
こう考えていけば、かなり高い確率で戦争がはじまります。
日本を見ていると、なんとなく戦争にはならないような雰囲気を感じますが、私は十分に注意すべき案件だと思っています。戦争が行われれば、日本は不景気になるように思われますが、北朝鮮が孤立した中で戦争となれば、決着はすぐにつきます。問題は、中国がどこまでそれを許容するのかという部分でしょう。
もしかすると、「米国 vs 北朝鮮」という認識ではなく、「米国&日本&韓国 vs 北朝鮮&中国&ロシア&シリア」という、長期戦で考えていく方が現実的なのかもしれません。
Next: 北朝鮮は1年以内に小型核弾頭を完成させることができるか?
北朝鮮は1年以内に小型核弾頭を完成させることができるか?
アメリカが原子力空母を日本海に配置させるのは、間違いなく焦っているからです。
北朝鮮は、2006年10月に初めて核兵器のテストを行ったと報告しています。それからすでに10年が経過しています。世界ではすでに核の技術が発達しているうえ、お金に糸目をつけなければ、世界中の技術者を北朝鮮にヘッドハンティングできるはずです。その人たちが集まれば、「10年間で核の開発はできない」とは言えないでしょう。
BBCによれば、北朝鮮はすでに核兵器の開発自体は成功しています。あとは、その核兵器を小型化し、核弾頭として実用可能になれば、いつでも核ミサイルを発射できるレベルまできているのです。
※参考:北朝鮮の核兵器開発 どこまで進んでいるのか – BBCニュース(2016年9月9日配信)
この1年で、核の小型化が可能になる可能性は十分にあります。その上で、
- 米国は、北朝鮮が核兵器を手にする前に叩く
- 北朝鮮は、自国を守るために核兵器を手にしたい
- 1年以内に北朝鮮の核弾頭が完成する可能性は十分にある
これらの事実を踏まえると、アメリカが北朝鮮に先制攻撃しないほうが不思議だと感じるのは、私だけでしょうか?
史上初の核戦争が起きるかもしれないというのに、世界はのんきですよね。アメリカは北朝鮮が核兵器を持つことは容認しないと思いますが、もし容認したとなれば、それはそれで平和な世の中が来ると思います。世界中の誰もが動けなくなる状態ですからね。
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※本記事は、『バフェットの眼(有料版)』2017年4月24日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『バフェットの眼(有料版)』2017年4月24日号より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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