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秋の大型上場! JR九州「時価総額5000億円規模」は買いなのか?=炎

JR九州(九州旅客鉄道)が10月25日に上場することが決まったようです。すでに本州のJR3社(東日本、東海、西日本)が上場していますが、これに次ぐ4社目の上場となります。昨年の郵政3社のIPOに次ぐ公共セクターからの大型上場となります。

時価総額は5000億円規模という評価が出始めていますが、果たしてそうした評価が妥当なのかを検証してみたいと思います。売り出す方(国)からすれば高く売れるに越したことはないのですが、投資家としてはそれが果たして妥当なのかを考える必要があります。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)

プロフィール:炎のファンドマネージャー(炎)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。

JR九州が10/25新規上場へ。「時価総額5000億円」の妥当性は?

JR3社との比較で考える、JR九州の企業価値

JR3社のうち最も収益性、効率性が良いのは東海で、今期の売上高経常利益率は30%が見込まれます。3社の平均売上高経常利益率は、今期予想ベースで18.2%。これに対して同社は14.1%と見劣りしますが、JR西日本の11%に比べると収益性は高く、今期は535億円を見込んでいます。

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規模の比較では圧倒的に東日本です。総資産が7兆7897億円、自己資本2兆4421億円に対して同社の総資産は6467億円、自己資本は3003億円と10分の1の規模となっています。

売上高も東日本は今期2兆8780億円、東海が1兆7360億円、西日本が1兆4500億円に対して同社は今期3788億円の水準です。

時価総額の水準は利益とほぼ連動しますが、特に金融収支等を加味した経常利益で比較してみると良いかと思います。

経常利益については最大の東海が今期5200億円で、東日本は3930億円、西日本は1595億円となっています。

こうした見通しに対して時価総額は8月末時点で東海が経常利益の6.4倍と最も低く、東日本は8.9倍、西日本は7.2倍となっています。

3社を平均すると7.5倍となり、同社の評価もこの程度が妥当かと見られます。

そうすると、今期予想経常利益535億円に対して7.5倍とすれば約4000億円という評価ができます。ですから市場で言われる5000億円規模というのはやや無理がありそうです。

もちろん今期の業績が期初公表された予想よりも良く、更に上方修正されるということであれば評価も変わりますが、同社は熊本大地震の影響を5月20日の今期業績公表時点では織り込んでいないとしていますので、むしろマイナスの影響を受ける可能性があります。

Next: JR九州の株価を左右するさまざまな要素。外国人投資家の関心は?



JR九州の株価を左右するさまざまな要素

個人投資家の評価は地元の投資家を中心に、安定した配当とともに優待制度を活用しようということで変わってきます。またJR3社は225に採用されていて外国人投資家からの関心が高く、3社平均で前期末は31%にも達しています。

上場時の評価は安定性に加え、将来の成長性と配当金、優待制度(現状は配当、優待とも未定)、225採用の可能性などによって違ってきます。

同社は規模的には私鉄大手との比較がなされる可能性もありますが、利益規模では近鉄グループ(今期予想経常利益500億円)とほぼ同じ水準となっています。

近鉄グループの時価総額は7500億円となっており、極端なことを言えば、この程度の時価総額があっても良いものと考えられます。但し、妥当な評価はJR3社に近いものとなるのは明らかです。

同社の上場は10月25日ですが、その時までの日経平均に象徴される株式相場動向がどうなっているのかにもよります。

日経平均は当面1万7000円台乗せから1万8000円を指向しつつあると考えられますが、昨年の高値水準2万900円台に向け動くかどうかは為替次第であります。

JR3社はいずれも昨年の高値から30%以上下落しており、また昨年高値に戻るという可能性があれば同社への評価も単純比較で30%高まる可能性があります。

つまりJR3社が現状の株価に対して見直されることになれば、同社の4000億円程度が妥当と見られる時価総額も5000億円以上に評価される可能性もあります。同社の上場を契機に3社が改めて見直されることによって同社の評価も高めることも考えられます。

いずれにしてもJR九州は地方創生、インバウンド需要、熊本復興の中核企業といった好印象も手伝い、秋の観光シーズンの中で関心を呼ぶものと期待されます。

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億の近道』(2016年9月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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