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みんなが知らないFXの「真実」(上)~勝てるのは上位20%だけ、しかも…=俣野成敏

本記事は、日経CNBC『マーケッツのツボ』(2016年9月6日20時放送予定)と連動し、俣野成敏氏の人気有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』のメインコンテンツを1号分まるごと無料で公開するものです。

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プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。

※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2016年9月1日号の一部抜粋です。

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イントロ:「FX市場」と「株式市場」のシステムの違い

今、世の中が大きく変わろうとしていることは、あなたも肌で感じていることと思います。

「フィンテック(金融とITとを組み合わせたシステム開発)」や「IoT(アイオーティー:ものとITを接続・活用するためのオートメーションシステム)」、「AI(人工知能)」など、さまざまな情報や技術がITと融合し、ものすごいスピードで、日夜発展しています。

こうした変革の波は、当然ながら投資業界にも訪れています。

たとえば、東京証券取引所には2010年より、富士通製の「アローヘッド」という、新型株式売買システムが導入されています。これにより、従来は1取引に2~3秒かかっていた売買注文が、現在では0.005秒以内で完結でき、情報配信は0.01秒以内、1日の注文処理件数は2億7000万回が可能になっています。

このアローヘッドとは、もともとは、大口注文によって株価の乱高下を防ぐために、注文を分散化させたり、株価が割安になった際には、自動で買い注文を出せるようにとプログラミングされたシステムです。しかし、そのスピードは、すでに人間の目で追える速度ではありません。

アローヘッド導入をきっかけに、株式市場では、高速・高頻度取引(HFT)が本格化しました。HFTを取引に利用している主な業者とは、証券会社やヘッジファンドなど、一部の専任トレーダーです。

自動システムによって、株価が急落しても、売られ過ぎを感知したコンピューターシステムによって買いが入れられ、突出した安値は、「たまたま指値を入れていた」参加者以外の、ほとんどの参加者は、安値に気づくことさえできないうちに売買が終了している、といった現象が起きています。

ロイター通信の報道によると、2014年の日本株取引の約6割はHFT取引が占めるまでになっているということですが、HFT業者同士の競争が激しいために、必ずしも各社が大儲けできているわけではないようです。今後は、HFT業界再編の動きも加速していくのかもしれません。

株式売買市場では、アローヘッドの導入によって、1日あたりの注文件数が、2010年平均の820万件から2013年は平均2170万件まで増加。これは、アベノミクスが始まった影響もあると思われますが、それも「受注にも耐えられるシステム」があってこその取引増加だといえるでしょう。

どんなものにもメリットとデメリットがあります。高速取引が開始されたことによって、市場の流動化が促され、取引量が増加し、市場の活性化に寄与しているのは確かなようです。

ところで、本日の特集である「FX業界」についてはいかがでしょうか?

現在は、FXにもオートトレーディングの波は押し寄せてきてはいます。

インターバンク市場とは、金融機関相互間で行われている、短期資金の貸借市場のことです。取引されているのは、主に1ヶ月未満の短期資金です。

株式市場の取引は、一般にシステムを通じて行われていますが、インターバンク市場では、株式市場のように市場での取引以外に、銀行間の相対取引もあります。HFTは為替市場でも、大きなパイを占めています。

インターバンク市場には、基本は金融機関しか入れないため、当然FX業者も入れません。多くの場合、FX業者は自社の取引銀行を通じて、市場に参入しています。

実は、FX業者には2種類あり、「店頭取引」という「擬似市場」のオンライントレードシステムを導入している業者と、正式に「市場取引」を行っている業者の2種類です。店頭取引型のFX業者は、各銀行のレートをもとに、自社独自のレートを算出しています。現在、日本にあるほとんどのFX業者は、この店頭取引型を採用しています。

このように、株式市場とFX市場は、やることは同じ「チャートを画面で追って注文を入れる」という作業ですが、両者の仕組みには、いろいろ違う点があります。

ところでFXというと、「怪しい」「どういう仕組みなのかがよくわからない」「楽して儲かる?」など、あまりいいイメージを持っていない人も多いのではないでしょうか。

投資の雑誌などを見ると、「短期取引で儲ける」「初心者でも、コツさえつかめば勝てる」といった言葉が誌面を賑わせていますが、実際のところはどうなのでしょうか?スマホとパソコンだけで、一般人にもできるものなのでしょうか?

今回の特集は、「みんなが知らないFXの「真実」(上)」と題して、「FXのウソとホント」に迫ります!

さて、あなたは、そもそも「FX」とは何の略なのか、ご存じですか?

「Foreign Exchangeのことでしょ?」と答えたあなたは80点。

正式には「margin Foreign exchange trading」といい、日本語に訳すと「外国為替証拠金取引」のことです。内容はご想像の通り、ドルやユーロなどの外国通貨を取引することによって、得られる「差益」を目的とした金融商品です。

実際の外貨取引が行なわれている「インターバンク市場」についてですが、実は「市場」といっても、株式市場のような公の取引所があるわけではなく、電話やインターネットなどで構成されたネットワークに過ぎません。

先ほどいった通り、インターバンク市場の参加者は金融機関に限定されていますから、一般投資家が外貨を購入したい場合、現金で仕入れる以外だと、外貨預金やFXなどの金融商品を通じて擬似的に購入することになるわけです。

1. 投資と投機の違いとは?

「デイトレーダーか?買ったら寝かせるタイプか?」

FXって、いかにも投資の代名詞のようなイメージがありますよね。多くの画面を見ながら、注文を入れていくプロのデイトレーダーの様子を、思い浮かべる人もいるかもしれません。

でも、それって本当に投資なんでしょうか?

「投資」とよく似た言葉に「投機」があります。たった1字の違いですが、両者は「似て非なるもの」です。今回はまず、この「投資」と「投機」の言葉の違いを明確にすることから始めましょう。

では早速ですが、投資と投機の違いって、一体何でしょうか?「勝ち負けにこだわること?」「長期と短期?」「ゼロサムかそうでないか?」いろいろな考え方があると思います。

まずは「投資の定義」からお話しますと、投資とは、一般的には「生産的なものを、より発展させていくためにお金を投じる」ことをいいます。わかりやすいところでいうと、土地や株式などです。

土地でいうなら、「投資」とはお金を投じることによって、その土地の価値を上げることです。価値を上げるためには住宅をつくったり、人が集まりそうな施設をつくったりするわけですが、何よりまずは「将来的に需要を見込めそうな場所」を選ぶことが大切なのは、いうまでもありません。

対する「投機」とは、基本的には「自分のお金を増やすためにお金を投じる」ことです。投機の代表といえばFXですが、たとえば株式でも、投機を行っている人はいます。株式で投機を行う場合は、購入する会社の将来性や事業などはさほど考慮せずに、もっぱら相場の数字をもとに判断し、比較的短期で売買を繰り返します。

FX取引も同じで、購入する際に「外貨を買えば、この国の成長の助けになるだろう」といったようなことは考えず、「どうやったら利益を出せるのか?」という観点から投機を行います。

このように「お金を投じることによって、投じた先がどうなっていくのか?」ということに対する見方の違いが、投資と投機の大きな違いになります。

続いて「時間」についていうと、投資は中長期的な考え方を基本とします。対する投機は、短期的な考え方が基本です。投資は自分も利益を得ながら、「案件を育てる」という意味合いが強いため、普通は長期的な発想になります。しかし投機の場合は、「効率的に利益を出す」ことが目的となるため、どうしても短期的発想にいき着きます。

先ほど株式の例を挙げましたが、同じ株式の売買であっても、「投資」として見ている人と、「投機」として見ている人がいたように、必ずしも「商品」や「投資期間」から、「これは投資」「これは投機」と分けることはできません。目的はどちらも、最終的には「自分の資産を増やすこと」ではありますが、両者の重要な違いとは「どこを見るのか?」ということです。

投資は時間が短いと、何かが起こったときに、リカバーをする(とり戻す)のが難しくなります。スパンを長くとることによって、「リカバーする時間をつくれるのかどうか?」が、投資の見極めどころです。つまり、

  1. 一時的な損をしても、最終的には「これだけ上がる」という見込みが立つ案件なのか?(将来性)
  2. その間、自分自身が待てるのか?(時間)

……が、投資をする際のポイントになります。投資は、「案件に付加価値を付ける」ことを目的にお金を投じますから、案件をきちんと見分けることができれば、リスクはその分、少なくなります。

一方、投機は数字などから短期的な判断を繰り返し、早めに見切って損益を確定するというのが基本スタイルになります。もちろん投機であっても、「今後の見通し」も判断材料のひとつにはなりますが、短期的に利益を出そうと思ったら、「待つ」よりは早めに「損切り」して、次に賭けることが多くなるでしょう。

数字は常に動いており、そのひとつひとつの山が「どうしてそうなったのか?」まではわかりません。そういう意味では、投機は「リスクが見えにくい」手法だといえます。

投資と投機の違いが、お分かりいただけましたでしょうか?

もし、今すでにお金を投じている人がいるなら、自分のスタイルが「投資と投機のどちらに属しているのか?」と考えてみてください。そうではなく、「これから始めたい」と思っている人は、「自分は投資と投機のどちらを選ぶのか?」と意識してから、案件を選択するといいでしょう。

Next: 2. なぜ「投機」は存在するのか? | 3. 自営業者と投資家の違い



2. なぜ「投機」は存在するのか?

何も、投資だったらすべてがよくて、投機は全部悪いという意味ではありません。

たとえば為替などにしてみても、よく海外で大きなお金を動かしている人たちのことを、「ハゲタカファンド」と呼んだりしますが、そういう人たちが頻繁に売り買いをすることによって、市場に流動性が生まれています。現在、世界中でお金が滞りなく流通しているのは「彼らの存在があるから」という一面を、否定はできません。

お金は、動かなければ価値を生まないからです。

ハゲタカファンドの行動がいいか悪いかは、立場によって見方が変わりますから、一概にはいえませんが、確かなことは、それらを含めて「世界経済が成り立っている」ということです。もし、投機が本当に不必要なものなのであれば、市場によって淘汰され、やがては消えていくはずです。

僕らが「自分には関係ない」と思っているものであっても、存在している以上は、さまざまな影響を受けざるをえないのです。

確かにある意味、投機の方が、桁違いのお金を増やせるチャンスはあるかもしれません。以前のメルマガで「ボラティリティ」の話をしましたが、覚えていますか?

簡単におさらいすると、ビットコインなどの小さい市場の方が、比較的短期間の間にボラティリティが大きくなり、「差益」が生まれやすくなります。今は、ビットコインなどのデイトレード市場も誕生しています。

ボラティリティのお話をしたときに、「小さい市場では、故意にボラティリティを引き起こし、差益で儲けようとする者がひしめいている」ことをお伝えしました。「投機」とは、そうした「操られやすい」市場に参入することを意味します。つまり「見えないリスク」です。

ところが、同じ市場であっても、長期的目線から「ビットコインの未来に賭けたい」という、「投資」の立ち位置からの参入も可能で、その際は「仮想通貨の将来性」が「見えるリスク」となり、さらに時間が味方へと変わります。

投資の場合は、未来の可能性が高ければ高いほど、それが「保全」の役割を果たしてくれるのです。

3. 自営業者(S)と投資家(I)の違い

ここまで、投資と投機の違いは、ご理解いただけたかと思います。続いて、「自営業者」と「投資家」の違いについてです。

ロバート・キヨサキ氏が提唱した「キャッシュフロー・クワドラント」については、これまでにも何度かとり上げてきました。内容は、「世の中のすべての職業はE(従業員)、S(自営業者)、B(ビジネスオーナー)、I(投資家)の4つに区分けできること」、「収入を得るのに、EとSは時間を使い、BとIはお金を使っていること」「E、SとB、Iの間にはキャズムという溝があること」などでしたね?

なぜ、またここでクワドラントの話を出したかというと、「自分は投資家だ」と思っている多くの人が、実際は投資家ではなく「自営業者」だからです。ここまでお読みいただいた人は、もうお分かりでしょうが、「株を売買している」「FX取引をしている」だけでは、必ずしもその人たちを「投資家とは呼べない」ということです。

たとえば、デイトレーダーをやっている人などはその典型だと思いますが、彼らは自分の時間を使い、画面を見ながら注文を入れています。最近は、スマホやタブレットがありますが、そうなる前は、トイレの中にもパソコンを置いておくのが、割と普通に行われていたといいます。

現在は「オートトレード」という、自分で決めた金額に到達したら「売る」「買う」など、事前に指示出しをしておき、自動で取引を行ってくれるシステムも開発されてはいますが、その裁量は、自分で決めなければなりません。デイトレーダーとは明らかに、仕事としてはS(自営業者)の領域です。

もちろん「Sだからダメ」とか「Iだからいい」とかいうことはありません。Sでもたくさん稼いでいる人はいるし、Iではちっとも稼げていない人もいるでしょう。どのような人生が理想なのかは、人によりさまざまです。

ただ「トイレの中でも、スマホでトレード画面とにらめっこ」をすることが、「本当にあなたが目指しているゴールですか?」ということなのです。

オススメしたいのは、いつできるかは別として、「自分はこうありたい」という、クワドラントのポートフォリオも決めておくことです。

4つのクワドラントには、それぞれ特徴があります。たとえばEとIは比較的参入しやすく、Sは技術が必要で、Bはもっとも参入し難い、などです。目安のひとつとしては、自分が気になってドギマギするような投資は、自営業の領域だということです。

そうしたクワドラントの特性と、自らの能力、目指す姿などを考慮しながら、最終的には、どういう力配分で生活していきたいのかを、今のうちから思い描いておいた方がいいと思います。なぜなら、こうしたことは、一朝一夕に思いつくことはできないからです。普段から、考えておくことが重要なのです。

「自分が生涯、目指す収入の比率と、どことどこのクワドラントから、どれくらいお金を得たいのか?」

以後はぜひ、クワドラントのポートフォリオを念頭に置きながら、将来設計をしていって欲しいと思います。

Next: 4. FXの特徴 | 5. FXの仕組み



4. FXの特徴

では、そろそろFXについての解説を始めたいと思います。まずは、仕組みから簡単にお話しましょう。

FXとは「外国為替証拠金取引」のことだと、本文の文頭でお話しましたね。要は、外貨の両替取引を行い、両替の際に発生した差益によって、利益を得る方法です。

日本で、一般人も外貨を持つことができるようになった歴史はまだ浅く、1996年から始まった、大規模な金融制度改革(金融ビッグバン)の中で、1998年4月から施行された外為法(がいためほう:外国為替及び外国貿易法の略)以降のことです。この法律の改正によって、公認銀行以外でも外為業務を行うことができるようになり、企業や個人が外為決済をする際にも、事前届出をする必要がなくなりました。

FXのサービス自体は、当時すでに海外にありましたが、98年の法改正以後、日本でも徐々にFXサービスを提供する者が現れます。当時は、金融庁もそうした新しいサービスには注目しておらず、何の規制もない中で、大儲けをする人や大損する人、悪質業者などが続出する、初期の混乱期が続きました。

2005年~2006年のピーク時には、FX業者は200社を超え、その頃になって、金融庁もようやく重い腰を上げて、規制に乗り出します。2005年7月に改正された金融先物取引法などで法整備も進み、その後に発生したサブプライム問題やリーマン・ショックによって、多くの業者が淘汰されます。

さらに2011年には、レバレッジが規制されます。それまでは、多くの業者が100倍、200倍といったレバレッジでサービスを競っていましたが、現在、国内の会社は一律最大25倍までに制限されています。(レバレッジについては、次の項目で説明します。)

FXの主な特徴としては、

……などがあります。

ここでは、普段あまり馴染みのない「買いだけでなく、売りでも収益を上げられる」とは、どういうことなのかについて、説明したいと思います。

投資といえば、通常は「安いうちに買い、高くなった時点で売る」というのが、基本になります。土地も株も、基本戦略は同じです。ところがFXの場合は、「安く買って高く売る」だけでなく、「高く売って安く買う」ことができます。

一体「売りからも投資ができる」とはどういう意味なのかというと、「これから安くなる商品Aを予測」し、Aが高いうちに一時的にAを借り受けて売却し、まずは資金を手に入れます。その後、Aが安くなった時点で、さっきの資金を使って再びAを買い入れ、Aを返却することによって差益を得る方法です。

たとえば、1ドル120円のときに、1万ドルを持っている太郎くんと、ドルは持っていないけれど「これから円高ドル安になるぞ」と思っている二郎くんがいました。二郎くんは、太郎くんから1万ドルを借りて、それを銀行に売って120万円を手にしました(高く売る)。

その後、円が1ドル100円に値上がりしました。そうなると、同じ1万ドルが、100万円で買えることになります。二郎くんは、持っていた120万円の中から100万を払って1万ドルを買い(安く買う)、それを太郎くんに返却し、20万円が利益として残りました。これが「売りで収益を上げる」方法です。

価値が上がるときだけでなく、相場が下がるときにも利益を狙いにいけるのが、FXの大きな特徴です。

5. FXの仕組み

さて。もうひとつのFXの特徴として「レバレッジ」取引が挙げられます。

レバレッジについては、不動産投資のときにも出てきましたね。不動産のレバレッジとは、「自分の信用力と物件の収益性を担保に、自分の資産以上の資金を借り受ける」ことでした。

不動産投資のときは、担保によって借りられる金額がそれぞれ違いましたが、FXの場合は、自分のお金を担保にして、最大25倍の取引を行うことができます。この担保とするお金のことを「証拠金」といいます。FXの日本語訳が「外国為替証拠金取引」という名前なのは、ここからきています。

このレバレッジが何かというと、要はFX会社から借金をすることです。FXはこのレバレッジを使うことによって、少ない資金(元手)で大きな取引ができる反面、読みが外れた場合は、多額の損失を被る可能性があります。

レバレッジを使って取引をする場合、担保として預けた資金は、取引の売買代金としては使われず、証拠金として別にとり扱われます。FXの決済方法は「差金決済方式」といって、基本的に外貨(現物)の受け渡しは行われずに、取引をした際に生じる差額(損益分)のみのやりとりとなります。

ここでもう少し具体的な数字を例に、レバレッジの仕組みを見てみましょう。

たとえば、持っていた1万円を担保に、20倍のレバレッジをかけ、20万円で投資をしたとします。読みがあたって、価値が倍の40万円になったとしましょう。そこで儲けた分のうち、証拠金を差し引いた19万円は、借りたレバレッジ(借金)ですから、証拠金を含めて手元に残るのは、21万円となります。

しかし、これがもしマイナスになったらどうでしょうか?1万円に対して20万円借りて、失敗してしまうと19万円の借金になるということです。自分の持っている以上のお金で取引できるのがFXの利点であると同時に、大きなリスクでもあるのです。

実際レバレッジは、FX会社にとってもリスクです。かつてはレバレッジによってユーザーが破産してしまい、会社がお金を回収できないことが、よくありました。

そこで現在では「余剰証拠金」といって、取引によって生まれた収益をプールしておくのが一般的となっており、損失が出たときは、まずはこの余剰証拠金の中から差し引くようなシステムになっています。

Next: 6. FX会社が儲かる理由 | 7. なぜFXは手数料が安いのか?



6. FX会社が儲かる理由

ここまでお読みいただいた方の中には、「たった1万円を預けるだけで、最大25万円も貸してくれるなんて、FX会社はすごいなぁ」と思われた方もいるかもしれませんね。

どうしてFX会社は、そんなに気前がいいのでしょうか?しかも「4. FXの特徴」のところで挙げておきましたが、FXは手数料も、通常の外貨取引よりも安く設定されています。それでは、彼らのキャッシュポイント(儲けの源泉)とは、どこなのでしょうか?

実は、ほとんどのFX会社は、直接市場にはアクセスしていません。つまりユーザーから注文が入っても、実際は市場にその注文を出してはいません。一体どういうことなのでしょうか?

もし、現在FX取引を行っている人がいましたら、契約書などを見れば記載されているのですが、日本の一般的なFX会社の取引とは、「店頭取引」です。店頭取引とは、市場にはまったく影響を与えない「ユーザー対FX会社の取引」ということです。

たとえば、これが株式であれば市場取引となりますから、証券会社は仲介手数料をとるだけで、価格は市場価格になります。売り買いは市場を通じて行われるので、証券会社は売り手と買い手を仲介しているだけの立場です。

しかし店頭取引であるFXの場合、売値と買値をそれぞれFX会社が自由に設定でき、しかもその差額がそのままFX会社の利益となります。

もっとわかりやすくいうなら、FXとは「競馬のノミ屋と同じ」構造です。

競馬のノミ屋とは、「代わりに馬券を買います」といってお金を集め(胴元)、実際は馬券を買わずに、勝った人に対してだけ、配当金分のお金を返却し、残りは自分のとり分にする行為をいいます。

競馬もFXも、勝つ人と負ける人とどちらが多いのかというと、負ける人です。負ける人が多い場合は、仲介業で稼ぐよりも、現物(FXの場合は外貨)を買わないでおき、勝った人だけに配当金を渡した方が儲かります。

確かにFX会社も、まったく市場とアクセスしていないわけではありません。貨幣がどれかに偏ってしまった場合などは、市場に注文を出したりしますが、通常は売りと買いが交錯するので、買う必要はありません。

競馬のノミ行為は、違法として禁止されていますが、FXは合法です。

パソコンなどで「FX」と検索して出てくる会社は、ほとんどがこのノミ行為方式で荒稼ぎをしています。ちなみに、市場にアクセスするタイプのクリアなマーケット取引は、「クリック365」といって、店頭取引とは別の取引になります。

7. なぜFXは手数料が安いのか?

「店頭取引」のFX会社は総じて手数料が安く、サイトなどにはよく「取引手数料世界最安値」などという言葉が並んでいます。この言葉は決して誇張ではなく、銀行間のレートを知っている者からすれば、かなり安く設定されています。

通常、金融機関は一度に何千億単位というお金を動かし、頻度も多いですから、「規模の論理」でいえば、手数料は安いはずです。ところがFXの為替手数料は、そうした正規の手数料より安いことがあります。銀行や保険会社、証券会社、ヘッジファンドなどの、資金力が大きいところの取引よりも、個人と取引しているFX手数料の方が、割安に設定されているのです。

なぜそんなことができるのかというと、それだけFXでは「負ける人が多い」からです。巷では、「FXで勝てるのは、利用者の2割程度」だといわれています。

現在は「クリック365」という、正規の取引ができるサービスもあるのに、なぜそうしたサービスは普及せずに、胴元商売であるFXの方が、利用者が多い事態となっているのでしょうか?それは、表面上は通常のFXの方が、ユーザーメリットが高いように見えるからです。

クリック365は、取引がクリアだからこそ、手数料も割高になってしまうわけですが、通常のFX手数料を見慣れている人からすると、高く感じてしまうのは否めません。またクリック365は、通常のFXでは認められている短期取引が規制されています。ツールなども、FXの方が使い勝手がよくなっています。「安くて便利で使いやすい」となれば、ユーザーがFXを選ぶのは、無理もありません。

しかしそうしたFXの利点は、結局「取引の8割がFX会社のとり分」という、胴元商法からきているのです。

FX会社が、自社にとってリスクであるレバレッジ方式を、なぜ採用しているのかというと、レバレッジによってユーザーを引きつけられることと、リスクになる分、レバレッジをかけてもらえば儲かるからです。

株式市場などでは、「買手がいない」「売りたいが人いない」となると、取引自体が発生しません。しかしFXの店頭取引の場合は、もともと仮想のレートで取引しており、すべてが「ノミ行為」です。

店頭取引のFXとは、外国為替市場という、「公正な市場」の皮を被った擬似空間であり、安い手数料も、レバレッジという貸付金も、もとはといえば「自分たちのお金」だということを忘れてはいけません。資産を増やすどころか、自分で自分の足を食べているようなものなのです。

もしかしたら、中には「そうはいっても、2割の人は儲かるわけだから、その『上位2割』に入ればいいのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、実はそこにも、落とし穴があります。

その裏側とは何なのか、詳しくはセミナーなどでお話していますので、よかったら直接お訊ねください(笑)

Next: 本日のワンポイントアドバイス



本日のワンポイントアドバイス

本日の特集は、いかがでしたか?

ほとんどのFX会社は、基本的にインターバンク市場にはアクセスしておらず、合法的にノミ行為を行っているという、驚愕の事実。レートもFX会社が自由に決められ、取引の8割を利益としているという実態。

来週の「FX 続編」では、通常では知りえない「FX商品のつくり方」や「FX会社のビジネスモデルとは?」、そして最終的に「投機で勝つことはできるのか?」など、盛りだくさんでお届けします!

今回お伝えしました、「投資」と「投機」の違いと、関わり方を検討する際の5つのポイントとは、次の通りです。

(1)
投資とは「生産的なものを、より発展させていくためにお金を投じる」
投機とは「自分のお金を増やすためにお金を投じる」

(2)
投資は、時間を長くとることによって、「リカバーする時間をつくれる」
投機は、「効率よく短期で増やす」

(3)
中長期で「育てる」のが投資
早めに損益確定を行い、次に賭けるのが投機

(4)
投資は、生産的なものにお金を投じようとするので、リスクがある程度予測できる
投機は、瞬時の判断を求められることが多く、リスクが見えにくい

(5)
これらの違いを知った上で、「自分は投資と投機のどちらを選ぶのか?」と意識しながら金融商品を選択する

来週も、どうぞお楽しみに!


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俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2016年9月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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