FPの私は、住宅購入を検討中の方から「変動金利と固定金利のどちらが良い?」とよく質問されますが、現在は「全期間固定金利」を推奨しています。もちろん、これには理由があります。(『億の近道』梶原真由美)
ファイナンシャルプランナー。日本ではまだ珍しい顧問契約制のFP会社である株式会社マネーライフプランニング所属。1976年千葉県生まれ。40歳で出産、12歳年下の夫と長女の3人家族。
「変動金利から固定金利への途中借り換え」に見逃せない落とし穴
最悪、負債だけが残る
みなさんが弊社にご相談に来られるタイミングはいくつかあって、特に多いのが「結婚」「出産」「住宅購入」「リタイア」です。今回は「住宅購入」相談の時に必ず質問される、「変動金利と固定金利、どちらが良いでしょうか?」という質問に私がどのように回答しているかをシェアしたいと思います。
ズバリ回答としては、現在は「全期間固定金利」を推奨しています。今後の金利は上昇するか、このままの低金利が継続するかは、私にはわかりません。ただし、政策金利が下限に近い0.1%である今から、これ以上大きく金利が下がることは考えにくいです。
住宅ローンを組むうえでの大きなリスクは、変動金利でローンを組み、その後金利が上昇して返済金額が増加した結果、返済が計画通りできなくなってしまうことです。最悪の場合は家を手放すだけではなく、家を手放したうえで負債だけが残るなんてことにも。
最初から全期間固定金利で組んでおけば、そのリスクは排除することができるんです。
今後、金利がずっと上がらなければ「変動金利にしておけば良かったなぁ」と思うでしょう。この後悔が怖くてなのか、変動金利を組む人の割合は、住宅ローンを新規で借りる人全体の4割だそうです。
固定と変動の「金利差」は必要経費と考える
みなさんは生命保険(死亡保険)に加入していますか? 入っている人は、なぜ加入したのでしょうか?
万が一、自分が死んでしまったら…。「残された家族のために」と加入している方が多いのではないでしょうか。リスクヘッジの観点から考えたら、全期間固定金利を選ぶことと、生命保険の加入は、同じことだと思うのです。
生命保険には「万が一死亡したら…」と考え、そのリスクヘッジのために毎年数万円の保険料を支払います。結果何事もなく、ある程度の年齢まで人生を全うできた時に「生命保険に入らなきゃよかったなぁ」と後悔する人は、果たしてどれくらいいるでしょうか?
人生最大の買い物かもしれないマイホーム。変動金利の上昇リスクを保有し続けるのではなく全期間固定金利という選択をし、変動金利の上昇リスクを排除する。その「必要経費」として、変動金利と固定金利の金利差を考える。
このような考えから、全期間固定金利を推奨しています。
全期間固定金利では、毎月返済額の負担が大きすぎて…という方は、購入金額自体を見直す必要があるのではないでしょうか。
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「金利が上昇してきてから固定に借り換える」のが難しい2つの理由
「最初は変動金利で借りて、金利が上昇してきたら固定に借り換えたらどうか?」。こういう提案をしてくる方がよくいます。
長引く低金利で借り換えブームの中、そのように考える方が多いのも納得なのですが、実際これを実行するのは非常に難しいと思っています。
その理由は2点あります。
- 日常的に金利動向に注目し続けられるのか?
- そもそも変動金利と固定金利は連動していない
次項では、(2)について詳しく解説をします。
固定金利と変動金利の決まり方
「フラット35」の全期間固定金利は長期金利と連動しており、変動金利は短期金利と連動しています。短期金利と長期金利の決まり方には大きな違いがあります。
短期金利は政策金利とも呼ばれ、インターバンク市場と呼ばれる銀行同士のお金の貸し借りに使われる金利を主に指し、この金利は日本銀行がコントロールしています。
これに対し、長期金利は日本10年国債利回りを主に指し、金利は市場が決めています。将来の経済成長期待や物価上昇期待など、市場特有の要因が加味されて決定されるのです。
金利上昇。その時、固定金利と変動金利はどう動く?
日本は長い間低金利が続いており、参考となりそうな金利上昇局面がありません。ここでは、米国で過去の政策金利利上げ局面に長期金利と短期金利(政策金利)がどう動いたのかを見てみます。
米国では2004年6月から2006年6月まで、1%~5.25%まで段階的に政策金利(短期金利)を利上げしました。
その時に長期金利はどう推移したのかを見てみると、政策金利の利上げ前に、市場で急速に物価上昇が進むと懸念され、数ヶ月で1%程上昇していました。そして利上げ開始後、これで物価上昇による懸念が抑えられたと市場が判断し、長期金利の急上昇は止まりました。
このように短期金利と長期金利はその仕組み上、連動していないのです。特に長期金利は市場の「期待」や「懸念」を要因として変動するものなので、予測が非常に難しいと思います。
このケースから推測されることは、将来日本で政策金利(短期金利)利上げ局面が来た時には、既に長期金利は上昇していることが考えられるので、「最初変動金利で借りて、金利が上昇してきたら固定に借り換える」という戦略はあまり意味がないことになります。
いかがでしたでしょうか? 変動金利 vs. 固定金利の議論は数多くありますが、ひとつの考え方として参考になれば幸いです。
『億の近道』(2017年5月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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