記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年10月3日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
「日本の人口動態は重荷ではなくボーナス」発言、私はこう見る
「最悪」を回避した2016年
2016年も最終四半期に入りました。間もなく、2017年が訪れます。中野剛志氏ではないですが、最近は本当に「大丈夫です。今年は来年よりは、良い年です」の状況が続いているように思えます。もっとも、今年は少しだけ、希望がある出来事もありました。
まずは、6月1日、国会閉幕後の記者会見で、安倍総理大臣が来年4月に予定されていた消費税再増税を19年10月まで延期し、大規模な経済対策を打つことを表明したこと。もちろん、消費税増税は「延期」では意味がなく(現時点で、すでに延期されている状況なのです)、凍結もしくは減税する必要があります。
また、今、まさに開催されている臨時国会で議論されている補正予算が、デフレギャップを埋めるに十分か否かは不明です。わたくしは、金額的に不十分だと思います。ともあれ、補正予算が組まれず、来年4月に消費税再増税という最悪の路線だけは、何とか免れることができたのです。
さらに、日本銀行が9月20・21日の金融政策決定会合において、「消費税増税」が物価が上がらない要因であることを、ついに認めました。また、「インフレ目標をコミットメントし、量的緩和により期待インフレ率を云々」という岩田規久男理論の間違いが、ようやく認められたわけです。
日本銀行はインフレ目標の「期限」を廃止し、2%に達するまで量的緩和を継続する形に政策変更しました。「期限」があることで、期待インフレ率が高まり云々の岩田理論は、完全に放棄されたことになります。
「人口減少は重荷ではなくボーナス」発言
さらに、安倍総理は9月21日、ニューヨークで金融関係者を前に、「少子高齢化で労働人口が減少する中、生産性向上の必要性に迫られることで、むしろロボットや人工知能(AI)の活用に拍車がかかる(Newsweekより)」と語り、「日本の人口動態は、逆説的ですが、重荷ではなくボーナス」と強調しました。
過去の我が国において、少子高齢化について「人口減少で衰退だ~」ではなく、「少子高齢化による生産年齢人口比率の低下が超人手不足をもたらし、生産性向上のための投資を強制する。結果的に、日本経済は成長する」と、繰り返してきた言論人は、わたくし以外にはいなかったと思います。
まさか政治家から、しかも安倍総理からほぼ同じ趣旨の発言が飛び出すとは…。驚きました。
Next: ただし…三橋貴明氏が安倍総理の「発言の続き」にズッコケた理由
時代に逆行する外国人受け入れ路線
もっとも、安倍総理は上記の発言の後に、「日本の開放性を推進する」「一定の条件を満たせば世界最速級のスピードで永住権を獲得できる国になる。乞うご期待です」と語っているわけで、まさに「ズコーンッ!!」という印象ですが、いずれにせよ色々と変化があった年であったのは確かです。
何しろ、イギリスがEUからの離脱を国民投票で決定し、さらにドナルド・トランプが未だに米大統領選挙で健闘しているのです。ドイツのメルケルにしても、ついに難民・移民受入政策の間違いを認めました。
結局、全てが正しい方向に向かうなどという甘い話はないわけで、どうにもならない中、少しでも、わずかでも状況を好転すべく、心ある人々が足掻くしかないのです。その足掻きこそが、最終的には「歴史を変える」に辿りつくのではないかと考えるのでございます。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/10/3号より
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