就職活動は、投資家が有望銘柄を見出す活動に似ています。株式投資など経験がない就活生も、少額マネーで株式投資にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)
プロフィール:炎のファンドマネージャー(炎)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。
就職活動は、投資家が有望銘柄を見出す活動に似ている
就職は人生への投資だ
現在の大学3年生の就職活動が早くもスタートしています。あっという間の大学生活の中で、就活は未知との遭遇の連続でもあります。
非日常的な就職活動を支援してくれる機関も現れて、大学生やその親御さんの悩みに応えようと頑張っています。私も、そうした就活ゼミを主催する企業と交流をもっていて、週1回は顔を出しています。
就職活動は、投資家が有望銘柄を見出す活動に似ています。
学生時代の就活は、その就職先の企業と一生のおつきあいをする覚悟で臨むことになりますが、残念ながら経験を積み重ねてキャリアアップしていく方のほうが多いのかと推察されます。
就活は、会社四季報と似たような就職用の情報などを用いて、意にかなった企業にアプローチして、最終的に内定までこぎつける一連の活動だと理解されます。
景気によって就職内定率が高まったり低下したりする点でも、就職先選びと銘柄選びには共通したところがあります。
就活のほうが大変!? 両者の共通点と違い
投資対象となる銘柄選びは、短期・中長期に分けて企業がどのように成長し株価に反映されていくか、リスクや配当金はどうかなどを自ら判断し、リスクマネーを投じることで実践されます。
一方で、就職先を選ぶのも、就職候補企業の発展性や待遇などを自ら企業と面談して判断材料を得ながら、最終的には1社に絞り込みます。
投資家は数社に分散投資してポートフォリオを構築できますが、学生は最終的には運命を1社に託すことになります。
わずか半年余りの短い期間に結論を出していくのは、長い人生の中では酷な話。投資家は何回も失敗を繰り返してもすべてが自己責任ですが、就職活動も自己責任とは言え、そう失敗を繰り返す訳にはいきません。そう簡単に退職する訳にはいかないこともあって、そこでは少なくとも3年以上の社会生活を就職先の企業の下で過ごすことになるわけです。
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株式投資の視点で考える就活のポイント
ベストな就職先を見出すことと、ベストな株式投資先を見出すことは似ています。
過去の社歴で蓄積された有形無形の資産は、これから就職する学生さんにとっての活動原資や活動のインフラともいえます。安定成長型の企業には市場の評価が相応に与えられ、案外楽しい職場環境が待っている可能性があります。
一方で急成長中の企業の株式市場での評価は、高いPERに代表されるような高い評価がなされます。こうした成長企業にはたくさんのライバルが入社し、それぞれが切磋琢磨しながら自分のポジションを得ようと必死に働くことが求められるのかもしれません。
こんな企業は最悪かも?
最悪なのは先の見えない企業です。就職先として選定することも、投資家が投資先として選定することも、最悪の結果を数年後にもたらしてしまう可能性があります。
資本効率が悪く、さらには市場での評価が低くPERが10倍以下に甘んじているような企業の多くは、就職先として選定するのは避けるべきですが、そうなると日本の多くの上場企業がこうした企業に該当してしまいそうです。
そのような中では、ROE8%以上を維持し、継続的に人材採用に努めている成長指向の企業を選ぶことが、何となくではありますが、就活生にとっても投資家にとっても必要なことなのかもしれません。
株式投資など経験がない就活生も、投資家の気持ちを知るために少額マネーで株式投資にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。そこで使われる物差しは、単純に言えばPER、PBR、配当利回りでしょうが、就活生ならではの新たな投資尺度に、就職尺度を組み合わせたノーベル賞もののアイデアが出てくることを期待しています。
『億の近道』(2016年10月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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