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手数料だけじゃない! タクシー運転手がクレカ払いを嫌がる本当の理由

先日Twitterで、あるネットユーザーがタクシーの運転手さんから聞いた「カード決済の手数料8%は運転手個人の負担になる」という衝撃の証言が大きな話題となりました。メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者・吉田武さんは、この件が話題になる前から疑問を抱いていたそうで、その真相を知るべくタクシーの運転手さんを直撃取材。私たちの知らない、タクシー業界の闇とは…!?

※本記事は有料メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』2016年9月21,28号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

タクシー運転手がカード決済手数料を負担!? 真相を直撃取材

「正直クレジットカードは使って欲しくない」の理由

巷で話題のタクシーを利用してクレジットカードで支払いするとその手数料をタクシーの運転手が負担するおかしな謎に少々言及したく、このたび増刊号を発行しました。

インターネットでこの事案は大きく話題になっており、情報も大きく錯綜していましたので、だったら実際にタクシードライバーから直接話を伺おうと思い立ち、普段乗らないタクシーを利用して聞いてきました。私自身、この事案を初めて知ったのは2011年の頃でした。飲みに行った帰り、うっかり現金が小銭500円程度しかなく、自宅そばのコンビニへ到着の際、クレジットカードでの支払いを求めたところ、普段クレジットカード使う乗客がいないため、端末はダッシュボードの中にしまいこんでいることで少々時間がかかると。でも話していると面倒そうな顔もしていたので思い切って、「現金払いが面倒じゃないんですよね?」と伺うと、「クレジットカードの手数料5%は私たち運転手負担なので、正直クレジットカードは使ってほしくない」と言ってきました。結局、コンビニでATMからお金をおろして現金で支払いましたが、タクシー業界の闇を知った気がしたんです。というわけで、現状を知るためにタクシードライバーから根掘り葉掘り伺ってみましょう。

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タクシー運転手さんに取材開始

吉田「小岩駅までお願いします」

運転手A「かしこまりました」

吉田「運転手さんにお伺いしたいのですが、支払いはクレジットカードでも大丈夫でしょうか? ダメでしたら現金で支払いますが1,000円ちょっとの距離ですのでお任せしますよ」

運転手A「いや~、すみません。このタクシーはクレジットカード払いには対応してないんですよ。お客さんには現金でのお支払いをお願いできればと」

吉田「わかりました。ところで様々なタクシーが都内では各社より配車されてますが、こちらのタクシー会社は全車クレジットカード払いには対応してないんでしょうか?」

運転手A「え? お客さん何者ですか?」

吉田「実は僕自身、交通ジャーナリストをしているんですが、最近になってインターネットでクレジットカードの手数料が8%を支払っているタクシードライバーがいると聞きまして、現状調査のためにお伺いしているんです。それと匿名にしますが失礼ですが会話の録音もスマートフォンでさせて頂いております」

運転手A「なるほど。じゃあさ、駅まで行ったらクルマの外で話しをしようか?

吉田「いえいえ、お手数かけるのも失礼ですから車内で駅まで向かう道中での質疑応答だけでいいですよ」

運転手A「いや、ルームミラーの上を見てみて。車内の様子を撮影するためのドライブレコーダーが付いているから私が話しをしづらいんでね」

吉田「了解しました。では、駅に到着しましたらお時間頂戴しますがよろしくお願いします」

そして小岩駅南口へ到着し、支払いは1,000円ちょっとだったので、チップ含め2000円を渡してお釣りなしでいいですと。

Next: 「会社がおかしいんだよ…」運転手さんが語ったタクシー会社の闇



会社側の怠慢でしかない。会社によっても異なる「運転手の負担額」

運転手A「ドライブレコーダーがないので正直なことを色々話しちゃうとさ、もうね、タクシー会社がおかしいんだよ。そもそも運転手が手数料を負担する行為そのものが会社側の怠慢。乗車運賃の売上だけでは物足りないのか、クレジットカード払いでさ、当初8%負担ってことだったんだよね。ま、クレジットカード使うお客さん少ないからあまり気にしてなかったんだけど、他のタクシー会社は5%が大半だったので組合へ議題として提出したら会社側は8%から5%へ運転手の自己負担額を下げてくれた

吉田「なんだかタクシー会社の闇が深い話ですね」

運転手A「組合から会社へ色々と回答を求めたりしたところ、5%はクレジットカード会社へ支払う金額で残りの3%はタクシー会社が得る金額だったのがわかったんだよ。その3%が理解できないってことで組合側はクレームを入れたんだ。でね、その3%は会社が得るものの端末購入金額へ補填するとの話しだった。それだったら最初から説明しろよって(笑)」

吉田「なんだか後出しジャンケンで理由付けした気もしないでもないですが、端末購入代金に達すれば5%にするとか一番最初に説明するべき話だと思いますけどね」

運転手A「まさにお客さんのおっしゃることが正しい。ですが、他のタクシー会社は運転手負担が3%のところもあれば負担なしで会社が全額負担のところもあるんです」

吉田「つまり3%負担の場合はタクシー会社側が残りの2%を負担してくれるってことなんですよね?」

運転手A「そうです。タクシードライバーは横の繋がりが太いので情報交換して初めて知ったんですが、会社によって運転手の負担額がこんなに違うものかと驚きましたけどね」

吉田給料からその負担額は天引きされるってことなんですよね?」

運転手A「ええ、そうです。長距離乗ったお客さんほどクレジットカードを使う方が多いのでそこから負担額が削られてしまうため、売上が良くなるのは嬉しいんですけど、例えばお客さんから5万円の支払いがあるとします。すると2,500円も運転手側の自腹負担額になる。これは痛いですよ。ちなみに私の車両はクレジットカードの決済端末は積んでないタクシーなんです。うちの会社は車両によって端末を搭載してないのも結構ありますので、私は敢えてクレジットカードでの支払いをパスするべく端末非搭載のタクシーを配車するようお願いしてます

吉田「ドライバー側でクレジットカードの決済端末の有り無しなタクシーを選ぶことは可能なんですね」

運転手A「タクシー会社によって違うと思うけどね。うちの会社は事前に申請しておけば端末のないタクシーを配車してくれるので、私はクレジットカードを使ってもらいたくないので敢えてお願いしているってことなんですよ」

吉田「でも、会社側から売り上げを気にされたりしませんか? やっぱりクレジットカードを使うお客さんは長距離走行を求めると思うんですが……」

運転手A「そうでもないんだよねぇ。ワンメーター距離でも使うお客さんは意外といる。端末引っ張り出して起動させてクレジットカードの決済ができるまで、という時間がかかる流れで対応していたらさ、交通面で問題が起こるってわけ。つまり、タクシーをハザードランプ点けて路上へ停車している時間が長くなる。これってよろしくないと思うんだよ。私たちは速やかに発車させたいので、クレジットカードでの支払いが発生すると1分以内で発車なんてできやしない。私の愚痴になってしまいますが、以前クレジットカード使われた際、確か……1万円ちょっとの運賃だったかな。現金で支払おうとしたお客さんが1万円しかなくって、慌ててクレジットカードを用意し始めた。財布に入ってなかったようで、バッグの別の入れ物から引っ張り出していて時間がドンドンかかっていく。私のほうは心の中で当然早くしろって思うんですけども、取り出してきて端末でクレジットカードを照会したら限度額オーバーとなり使えなかった。別のクレジットカードはありませんか? って聞いたところ普段使わないので自宅に置きっぱなしとのこと。限度額オーバーで使えないクレジットカードがあるくせに何ウソ言ってるんだよって思ってたんですが、どうしようもない八方塞がり。そのお客さんは携帯電話で何やら女性に電話をし始めたんです。会話の中で“1,000円足りないから持ってきてくれよ” “今マンションの目の前で国道沿いの入り口玄関前にタクシーを止めてもらっている”とか言うものの女性側はパジャマ姿で化粧もしてないから自分で部屋まで取りにきてという結果に」

吉田「なんだか愛人宅へタクシーで駆け付けた感ある雰囲気ですねぇ(笑)」

Next: タクシー運転手が手数料よりも気にしていること



タクシー運転手が手数料よりも気にしていること

運転手A「どうやら、そのお客さんは愛人宅へ仕事を終えてから向かったみたいです(苦笑)。電話の内容で分かりました。結局、お客さんの運転免許証を逃げられないための保険としてお預かりし、彼は愛人の住んでいる部屋へ残金分を取りにいってなんとか現金支払いで済んだんですけど、クレジットカードの端末使って照会したりしている時間が本当に嫌でした。限度額超えて使えないっていうのにお客さんからは、“もう1回照会してみてくれ!”など、何度か使えるか試したりして時間だけ無駄に費やされていくひどいありさま。タクシーを止めていた場所が国道とお客さんは言ってたんですが、世田谷区内の環七でして、3車線の場所ではあったんですがイエローラインが引かれている場所ということから、左側を走る左折しようとしているトラックからはクラクション鳴らされたりかなりの大ヒンシュク状態で10分以上停車していたんですよ。もうそれから、私はクレジットカード使用可能な車両はパスするようになったんです」

吉田「それはひどいですねぇ。この状況ですと、お金が足りなくて愛人宅から残金分をさっさと取りに行けば3分程度で済んだ話じゃないでしょうか?」

運転手A「おそらくそうですよね。クレジットカードの端末を使うだけでも時間かかるというのに、限度額超えで使えないとかがあるとそこで面倒な事態になってしまったという悪いサンプルだったりします(苦笑)」

吉田「結論としましては、交通渋滞を生んでしまう原因にもなる停車中のタクシーが、さらにクレジットカードの支払いが発生することで余計に渋滞を生む悪循環が発生すると」

運転手A「なんだかトゲのある言い方ですねぇ。まぁ実際そうなので私からは反論できませんが、タクシーが渋滞を生むのは認めます。お客さんを乗せるために空車の時は左側をゆっくり走りますし信号ではなるべく横断歩道の手前の停止ラインに止まるように走行して先頭になるよう心がけてますからね。この一件で私はストレスを抱えてしまいまして、クレジットカードの支払いは拒絶するようになったんです(笑)」

吉田「そもそも左折レーンを潰して停車するだけでも心苦しいはずでしょうし、さらに10分とか止めておく状態を察すると大きなストレスになることは理解できます。そういえばタクシーチケットを使っても5%はドライバー負担なんですよね? それに対してはどうお考えなんですか?」

運転手A「ああ、タクシーチケットに関してはなんの問題もないですよ。ぶっちゃけると私たちタクシードライバーは運転者自己負担とかはそこまで問題にしてないんです。一番の問題は支払い時の停車時間が長くなることが嫌なだけなんですね。その点、タクシーチケットは現金と変わらず速やかに運賃の支払いが済みますから気にしてないんです」

吉田「でも、5%が給料から天引きされてしまうんですよ?」

運転手A「正直手数料負担なのは気にしてません。どっちにせよタクシーを活用してもらって運賃を支払ってもらい、そのクレジットカード支払いやタクシーチケット利用料での売り上げから5%抜かれるだけなので、全体の売り上げから5%ではないですし、運転手の面々は手数料負担を気にしている人は少ないと思いますね。一番気にしているのは支払い時に時間かかって周囲のクルマに迷惑がかかることなんですよ」

吉田「なんだかいろいろお話をしていて僕自身分かってきた気がします。最初はタクシー会社の闇が深いと思ってましたが……」

運転手A「私たちも言いたいことが言えない環境にはいたくないので、そのために組合があり、昔はストライキもしたことありましたからね」

吉田「ちなみにタクシードライバー歴は何年なんですか?」

運転手A25年ぐらいですかね。さすがに最近は若いドライバーも増えてきたのでストライキなんぞは起こす者もいなくなり平和になりましたが(苦笑)。あ、少々説明忘れてました。タクシーでカードOKと書かれている車両は基本使えると判断して大丈夫です。ですが、VISA、MASTER、JCBなどのカード会社のステッカーが貼られていてもクレジットカードが全部OKというわけではないんですよ。信販会社が発行したタクシーチケットのみがOKという車両だったりすることもあるので、タクシーに乗った時には絶対確認してください。クレジットカードを読み込む端末が搭載されてなく、タクシーチケットのみであればカードリーダーに読み込む必要ないので結構そういう車両は多かったりします」

吉田「へー、そうだったんですね。労働組合の強さを実感します。タクシーチケットは特に嫌われていない事実を伺って安心するお客さんも多いと思いますね(笑)。ふと思ったんですが、クレジットカードOKにしている車両を運転している人でもカードを使ってもらいたくないこともあると思います。そういう時って端末不調みたいなことでウソ付くこともあるんじゃないかなぁって単純に考えたんですけど」

Next: そんなものまで? 何でも手数料を取ろうとするタクシー会社も



何でも手数料を取ろうとするタクシー会社

運転手A「鋭いですね。私の同僚はソレやってます。特にワンメーターや1,000円程度の運賃時には割りあわないってことで“今カードを読み込む端末が故障しているんですよ”って言ってるそうです。ただクレジットカード使えますか?って聞かれたうえで、走行距離が短いと判断した時にウソついているらしいです(笑)」

吉田「やっぱりそうだったんですね。胸のつっかえが取れました。立ち話でしたがお話をお伺いして客側は左折ラインでタクシーを止めさせない駐停車禁止ラインでタクシーを止めさせないクレジットカードを使う際は最初に伺うこと……この3点を守れれば、交通の妨げになることが回避できるような気がしました」

運転手A「まさにそうですね。おっしゃる通りです。タクシー会社の闇っていうのは昔だと、ヤクザもんの受け皿で仕事させていたことが多かったんですが、近年ですとカードやチケットの手数料を筆頭に、タクシー会社によっては無線機器など車両へ備え付ける様々な物にまで手数料を求めたりと、ドライバーにとっては扱いがひどいところもあったりします。ひどい会社では、車内用のドライブレコーダーがあるおかげで、お客さんからのチップですら5%求める会社もあるみたいですからね。映像チェックされて後日会社から請求されるケースもあるって聞きました。セコすぎますが、日本のタクシー料金が高すぎるので利用者が減ってきていることも影響しているんでしょうか……」

吉田「長時間、立ち話させてしまい恐縮です。しっかりこちらの会話を全文記事に致します。少しでもタクシー業界へメスを入れられればと思ってます。ありがとうございました!」


※本記事は有料メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』2016年9月21,28号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』(2016年9月21,28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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私を知る方の多くは「ビデオゲーム関係に強い映画人」なるマスメディア人的イメージが定着してますが、パーキングメーターが59分までならば厳密的に路上駐車が未納状態で可能という事実を2015年に公表したことで環境が一変。以降多くの相談事や取材申請等話を伺いたいとのリクエストが多数来まして、少しでも人助けができるならばと思い、自称・交通ジャーナリストの肩書で有料メルマガへこの度参戦させて頂くことになりました。運転者への有益情報や会員の方々から募った質問を代表して警察へ聞きに行ったり等、お得なネタ盛り沢山!

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