東芝株の活況ぶりに日経新聞(6月16日付)は「短期筋の覚めた思惑が見え隠れしている」と書いた。しかし見え隠れどころではない。あからさまに「仕手株」である。(山崎和邦)
※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く2017年6月25日号の一部抜粋です。今月分すべて無料の定期購読はこちらからどうぞ。
東証1部から仕手株に“出世”した東芝は、もはや全くの別銘柄だ
短期筋の玩具
東芝株の連日の活況ぶりには「冷めた思惑」がある。この表現は、日経新聞(6月16日付)の「短期筋の覚めた思惑が見え隠れしている」を引用した。
しかし「見え隠れ」どころではない。あからさまに、昨年末に原発事故をめぐる巨額損失が発覚した同社は、事業売却などの迷走が続いて以降、完全な仕手株である。
半導体部分を2兆円で買い取られる話も出ている。ちなみに筆者が換算すると、2兆円を発行株数で割り算すると、ピッタリ昨年12月の最高株価と同じになる。
また、いまだに正式な決算発表や有価証券報告書の提出の目途が立っていない。
そのような中で、売買主体は「株主責任を問われて株価がゼロになるということはないだろう」とタカをくくっている短期筋だろう。世界的に著名な銘柄だし、流通株数は多いし、格好の仕手株に「出世」した。
「巨額の損失が出る可能性」と発表しただけで、損失の全体像すら見えない。これが猛烈な東芝ラリーの背景となった。
かつての東芝とは別の銘柄
お化けは姿を現さないうちが面白いのだ。そして仕手株というものは、あの時はこうだったから今回はこうだろうというようなことは、あまり通じないものだ。つまり、お化けは同じ顔で2度とは出ないのだ。
「投資家に説明できないから、東芝株は全部はずした」という投信運用者が筆者の知人にいる。ただし彼も「指数連動ファンドでははずすことができないので、これを持っている」と言う。この指数連動ファンドが全部売りに出た時に、また1つの場面が出てくるだろう。
昨年12月27日にウェスティングハウス(WH)の巨額損失が出た後の東芝は、それ以前の東芝とは別の銘柄だということは本稿で何度も何度も述べた。WH問題後の東芝を仮に「仕手株東芝」と本稿では言おう。
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半年間で全株主が5回入れ替わった計算
「仕手株東芝」のWH事件発生から6月半ばまでの累積売買高を発行済み株数で割り算する
と、「約5」となる
(半年間の累積株数)÷(発行済み株数)≒ 5
つまり、半年間で全株主が5回入れ替わったという理屈になる。
この半年間の売買代金は、(日経新聞社の発表によれば)5兆円弱だという。それは時価総額ではトヨタの何分の1にもならない東芝が、売買代金においてはトヨタのそれとほぼ一致する。
現在、東芝の主要株主は半年間で「全株主」が5回入れ替わったことになるから、主要株主は短期筋の投機家しかいないことになる。
半導体子会社の売却が不透明なままで、東証からは上場廃止の恐れがある管理銘柄に指定されている。私事にわたるから何度も挙げた例だが、西武鉄道の例のように「実は上場廃止そのものは決定的ダメージにはならない」ということを短期筋は判っているのだ。
最近では、原発事故で東京電力株が経営が極度に悪化したが、結局は公的資金で救済され、減資に追い込まれることはなかった。つまり、株主責任を取られることはなかった。
また、信用リスクに敏感な社債市場でも、東芝債の価格は90円を割ったことはない。倒産や債務不履行になることはないと市場では見ているのであろう。経営不振企業でも退場宣告はめったに下されないという見方が、現実の仕手株東芝の背景にある。
8月1日(火)から東証2部に指定替え
日経平均225銘柄、TOPIXからの除外により、今後は7月末に向けて指数連動型投信の売り需要が出てくる。上記の機械的な売り需要の峠を越えた後の株価推移に注目である。
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当面の市況1:―再び「アイランド・リバース」の出現
当面の市況2:市場に円高シナリオがある限り、上値は重い
当面の市況3:日経平均
日経平均の上値が重い
株価を「静体」として見れば、こうも言える
株価構成の基本は当該企業の業績であることに間違いはないが…
投信残高9ヶ月連続増加
6月半ばは世界の主要25市場のうち17市場が下落
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※太字はMONEY VOICE編集部による
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