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トランプ・リスクは遠のいたのか? 米大統領選のポイントと「円高の賞味期限」

第3回のテレビ討論会を終えて、市場は概ね「トランプ・リスクが遠のいた」と判断しだしたようです。ただ、まだトランプ大統領誕生の目がなくなったわけではありません。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2016年10月24日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

株買い・ドル買いは「クリントン大統領」を織り込み始めた証し?

実際の情勢は予断を許さず

米大統領候補者による第3回のテレビ討論会が終わりました。3回の討論会を経て、すべてクリントン候補勝利という結果に終わりました。

おおむねマーケットは、トランプ・リスクが遠のいたと判断しだしたようです。それは、株買い債券売り(金利上昇)ドル買いを表します。

ただ完全にトランプ・リスクがなくなったというわけではなく、まだまだトランプ大統領誕生の目がなくなったわけではありません。

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ボラティリティ(価格変動)を求める投資家たちの投票行動は、クリントン氏を支持していてもトランプ氏に投票すると言われていますし、また、コアな支持者にとっては、テレビ討論の結果などは関係ないという考え方もあるようです。

コアな支持者とは、最近存在が薄いネオコンと呼ばれる白人層などであり、反エスタブリッシュメント(支配階級)層で、彼らは、トランプ氏の過激な発言が自分たちの気持ちを代弁しているかのような共感を覚えているようです。

このコアなトランプ支持者の存在がどう影響するか、それがトランプ・リスクを完全に消し去れない理由でもあります。

なにより米大統領選直前の10月は、「オクトーバー・サプライズ」と呼ばれ、思ってもみないスキャンダルなどが明るみに出て、投票行動に決定的な影響を与えることが多い時期です。

史上最低の選挙戦と言われている中、まだどちらの候補者に投票しようか決めかねている層が数多くいます。

彼らを動かすのは、このあるかもしれない(ないかもしれない)オクトーバー・サプライズであり、大統領がクリントン氏になるのかトランプ氏になるのかは最後まで分からないと言われています。

Next: 信じられない裏取引も。「オクトーバー・サプライズ」過去の事例



「オクトーバー・サプライズ」過去の事例

過去のオクトーバー・サプライズとしては、直近ではオバマ大統領が再選を果たした2012年の選挙が挙げられます。

選挙直前の2012年10月下旬にハリケーン・サンディがアメリカ合衆国東部を襲い、民主党のバラク・オバマ候補は現職大統領としての災害対応が評価されて追い風となったとされています。

この時は、ハリケーンがオクトバー・サプライズでした。オバマ候補の対抗であった共和党ミット・ロムニー候補は、アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の予算縮小や廃止に言及した過去を取り上げられて逆風となったという見方があるようです。

さらに時代をさかのぼると、1980年民主党ジミー・カーター大統領が再選を目指す選挙のとき、中東でイラン革命が起こり、過激派の学生によりテヘランのアメリカ大使館が占拠され、大使館員52人が人質にとられるということが起こりました。

1980年4月、米デルタ・フォースによる人質救出作戦は失敗し、2期続投を目指すカーター政権への大きな打撃となったとされています。

このため、カーター政権の外交姿勢を「弱腰」と批判する共和党を勢いづかせる結果となったようですが、この事件に関して、ロナルド・レーガン政権の副大統領へ転身を企むジョージ・H・W・ブッシュとレーガンの選挙チーム責任者ウイリアム・ケイシー(後のCIA長官)が、1980年10月18、19日にパリで密かにイラン政府関係者と会談し、ホメイニ師他イラン政府関係者に賄賂と武器供給を約束し、人質解放時期をレーガン大統領就任時まで延長するように交渉したという疑惑があるとされています。

この交渉の目的は、カーターの在任中に人質事件を解決させないことで彼の人気を落とし、レーガン大統領就任時に人質解放を実現することで「強いレーガン大統領」を演出することであったとされています。

あの時は事実、レーガン大統領就任と同じ日に人質が開放されました。

Next: 米大統領選挙の結果が為替市場に与える影響は?



米大統領選挙の結果が為替市場に与える影響は?

米大統領選においては、スイング・ステート(揺れる州)が存在し、そこではまだどちらの候補に投票するか決めていない人が多く、投票前日まで、投票用紙に名前を書かないという人が多いようです。

マーケットは、物事が確実にならない限り動きが取れません。思惑で動くことで大きな利益につながるわけですが、基本的には、マーケットは慎重な動きをするものです。

原油価格が、WTIで1バレル50ドル台で落ち着いてきているので、なんとなくマーケットは安心してきている感じはあります。

先週も解説しましたが、ここからシェールオイルが稼動してくるので、原油価格はある程度で価格上昇は止まると思われますが、今までの40~50ドル台から、レンジを上げてくるかと思われます。

マーケットは米利上げを織り込んできていますので、ドル買いは継続されるでしょう。

主要通貨に対してドルは買われていて、ドルインデックスは大きく上昇していて、直近高値の97.62を更新し、98も超えてきました。とにかくドルが買われています。

米10年債利回りは1.73%台で、1.80%をつけたときからは下落しています。

年内利上げはあると見るのが自然でしょう。企業業績発表にもマーケットは左右されますから、株主市場は一喜一憂かと思いますが、ドル買いが進んでいることは、重要かと思われます。

それは、利上げ確定後のポジション解消によるドル売りが見られるのではということです。

今の状況では対ユーロにおいてのドル売りです。

ドル/円は、ドルが買われている中でも、大きくは円安には進んでいません。大統領選挙が確定するまでの円買いが残っているのでしょう。

ドルは利上げ要素で、まだ買っておきたいですから、クリントン大統領誕生で、円を売ってユーロを買い戻すという動きになるのかもしれませんね。

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らぽーる・マガジン』(2016年10月24日号)より一部抜粋
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