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日本株はいつまで上がるか? イエレンの加護vs.中国バブル崩壊リスク=藤井まり子

安倍自民党政権は、年明け1月にも衆院解散を目論んでいます。選挙に大勝するためには、日経平均は上がっていなければなりません。しかし、円安・インフレを嫌う地方の有権者たちの支持を得るために、今はまだ円安を加速させられない状況です。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は、『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2016年10月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。

1月解散総選挙に向け、日経平均は1万9,000円を目指すのか?

根強い「中国不動産バブル崩壊」懸念

この秋、「日本を除く先進国経済」でインフレが加速しはじめたので、「およそ1%くらい(?)の長期金利の急騰」がとても懸念されていました。

ところが、先週号でもお伝えしましたように、アメリカや先進各国の長期金利(ドル国債10年物の利回りなどなど)がじわじわ上昇し始めると、それに並行して「実効為替レートでのドル高」が進行。

その結果、「中国人民元が対ドルでじわじわじわじわ下落」を開始、これがグローバル経済に「ほどよい重石」「ほどよいデフレ圧力」となって、「先進各国の長期金利の急騰」懸念を抑え込んでくれることが分かりました。

ここのところ、アメリカの長期金利(ドル国債10年物の利回り)は1.76%前後と、極めて穏やかにしか上昇していません。

一方、中国人民元は年初来の安値を更新し続けています。今週は、1ドル6.78人民元まで下落。

【関連】ウソまみれの中国。6.9%成長の裏で進行する「第2のアジア通貨危機」=北野幸伯

この秋のグローバル経済における「大きなリスク」と言えば、

  1. 原油価格が底割れ懸念
  2. アメリカを始め、先進各国の「長期金利急騰」懸念
  3. ユーロ圏の銀行システム不安
  4. トランプ・リスク
  5. 中国リスク(人民元の大幅な切り下げリスクと不動産バブル崩壊懸念)

などが挙げられましたが、このうちの上位4つと、「中国人民元の唐突かつ大幅な切り下げ」リスクは、まだまだ予断は許さぬものの、大きく後退したように見受けられます。

この秋の「残る大きなリスク」は、超大型にまで育ってしまった「中国の三度目の不動産バブル」の崩壊リスクだけなのではないでしょうか?

しかしながら、この「超大型の不動産バブル」は、中国政府さえもコントロールを喪失、暴走し始めているように見受けられます。この「超大型の三度目の不動産バブル」が崩壊したならば、国際金融市場に激震を走らせるのではないでしょうか?

イエレンの「高圧経済」vs.「中国不動産バブル崩壊リスク」

こういった中で、10月14日に、イエレンFRBは「高圧経済の容認・必要性」といった爆弾発言を唐突に行い、株式市場を勇気づけします。

この日を境に、アメリカ株式市場では強気派が俄然優勢になりました。

サブプライム危機「後」のアメリカ経済は、全体としては「生産性が上昇して景気回復してきた」わけではありません。不動産高・株高に支えられた「旺盛な消費」(=資産効果)で、景気回復、経済成長をしてきたのです。

これは、サブプライム危機「後」だけに限った話ではありません。ITバブル「前」も、サブプライム危機「前」も、アメリカ経済は、株高、不動産高に支えられた「旺盛な消費」で経済成長してきたのです。

21世紀に入ってからのアメリカの「経済リセッション(=景気後退)」は、「ITバブル崩壊」そして「サブプライムバブル崩壊」と、いずれも「バブル崩壊」がその引き金を引いて起きているのです。

かくして、2016年秋、「今現在進行形のアメリカ株式ブーム」がしぼむと、アメリカ経済は「リセッション入り(景気後退入り)」してしまう危険が高いわけです。

「アメリカFRBの引き締め」→「緩和マネーの巻き戻し」→「中国でバブル崩壊」→「国際金融市場で激震」→「アメリカ経済の変調(もしかしたらリセッション入り?)」といった「2015年から2016年にかけての、メビウスの帯のような悪循環的」を、今現在のイエレンFRBはとても心配していることでしょう。

ですからこそ、2016年のイエレンFRBの言葉は(利上げ局面では特に!)「とてもとても慎重」になります。イエレン議長の口からは、「利上げ」示唆と同時に、「株式市場を勇気づける」言葉が多々発せられるのです。

Next: イエレン議長「心配しないで、株式バブルが崩壊したらまた緩和するから」



イエレン議長「心配しないで、株式バブルが崩壊したらまた緩和するから」

振り返ると、この夏、8月26日のジャクソンホール講演でも、イエレン議長の言葉はとても慎重でした。「年内利上げ」を強く示唆しながらも、それと同時に、「次へのリセッションでの金融緩和ツール」についても丁寧に語りました。

議長は、「将来アメリカ経済がリセッション入りしたならば、『追加の量的金融緩和策(マネーのバズーカ砲)』や再度の『長期の低金利政策』も辞さない」「金融緩和のツールは幅広い」旨の発言もしました。

この場合、「アメリカ経済のリセッション入り」とは、「現行の株式ブーム(バブル?)の崩壊」とイコールだと考えてよいでしょう。

イエレンFRBは、「利上げの話をするときは必ず、次の緩和マネーの手段(バズーカ砲や長期の低金利策などのツール)の話にも言及してマーケットを励ます」という、巧妙なコミュニケーション術を駆使して、マーケットを鼓舞するのです。

「次のリセッション(景気後退)は気にしなくて大丈夫よ。アメリカ株式ブーム・バブルの崩壊も心配しなくても大丈夫よ~。FRBの『追加の金融緩和策』が守るから心配しないで~♪」と、マーケットに熱く語りかけているわけです。

お蔭で、なかなか「グローバル規模での大きな調整局面」が訪れてくれません。(笑)

直近のイエレンFRB議長は、「次のリセッション時の緩和ツール」として、日銀の「株式買い」にも強い興味を示しています。

※たびたびお伝えしてきていますが、今のアメリカ経済が大底を打ったのは、2009年9月です。アメリカの景気回復は、あれから7年経過して8年目に入ろうとしています。景気循環的には、アメリカ経済は近いうちにリセッション入りしても不思議ではないステージなのです。

イエレンFRBとしては、今後とも、インフレの芽・手堅い景気回復軌道を保護して、大切に大切に育ててゆきたいところなのです。

そこでイエレンFRB議長は、2016年夏の終わりから、「次のリセッションでは量的金融緩和(バズーカ砲)や長期の低金利策の継続を発動する」「次のリセッションではFRBは株式購入も考えている」と、「株式市場を安心させる、励ます」発言を繰り返し併用しているわけです。

Next: 利上げで中国にトドメを刺した後、利下げで世界を救うイエレン



利上げで中国にトドメを刺した後、利下げで世界を救うイエレン

こういった「株式市場を安心させて励ます」流れの一環として考えると、10月14日のイエレンFRB議長の唐突なまでの「高圧経済(=ハイ・プレッシャー・エコノミー)」発言も、理解しやすいと思います。

イエレン議長の14日の講演での「唐突なまでの高圧経済」への言及は、「人民元のじり安で、2017年のグローバル株式市場はとうとう調整局面入りか?」と心配されていた、まさにその矢先の「超ハト派発言」でした。
「高圧経済」政策、唯一の危機打開策となり得る=米FRB議長 – ロイター

「高圧経済」発言は、ひらたく言えば、「2%以上のインフレも良しとする、インフレ放置」の「超ハト派の発言」です。

すなわち、「高圧経済」とは、「低金利継続で、需要を過熱気味にしてインフレを加速させ、労働市場を逼迫させる(=労働力不足気味にして賃金を押し上げる)。労働力不足は、企業に設備投資を促して、生産性を上昇させる。設備投資による生産性上昇がさらなる賃金上昇を促して、賃金上昇はさらなる需要旺盛を導く。この需要旺盛がさらなる設備投資を促す」好循環経済のことです。

言ってみれば、「脱ケインズ主義」の発想です。

そうなんです。

イエレンFRB議長は、物価目標が2%を大きく上回ることも「よし」として、緩和的な政策の中で、「いくばくかのバブルを容認」しながらインフレを持続させて、「高圧経済(ハイプレッシャー経済)」の労働力不足気味の中で、生産性革命を推進しようと意図しているようなのです!

この「高圧経済」発言は何を意味するのか?

・イエレンFRB議長は、弱体化している中国経済に「とどめ」を刺すためにも、「今年12月に二度目の利上げ」に着手するでしょう。その確率は70%くらいです。

・しかしながら、イエレンFRBは、時と場合によれば、「来年2017年以降の利上げは行わない」かもしれません。

・すなわち、イエレンFRB議長は、「FRBによる二度目の利上げ後の国際金融市場の行方」次第では、「利上げを行わない」「利下げさえ断行する」覚悟があるのではないでしょうか?

すなわち、12月の「イエレンFRBの二度目の利上げ」着手が引き金になって、この秋から冬にかけて国際金融市場で激震が走ったならば、時と場合によっては、FRBは「利下げ」も辞さない覚悟が、この「高圧経済」への言及だったのではないでしょうか?

なにはともあれ、イエレンの14日の爆弾発言を受けて、アメリカ株式市場では強気派が大復活!アメリカ株式市場は、再び「穏やかな上昇気流」に乗ったように見受けられます。

ただし、というか、ですからこそ、「中国の不動産バブル」崩壊には要注意なのです。

Next: 上昇に転じた日本株式市場、海外ヘッジファンド参入の背景とは?



IMFが日本の成長率予想を引き上げ

IMFは10月4日、世界経済見通し(WEO)を公表、世界経済の成長率予想を2016年は3.1%、17年は3.4%と、それぞれ据え置きました。

このうち、IMFは、先進国の経済成長率を2016年は1.9%から1.6%へ、17年は2.0%から1.8%へと、下方修正しました。

新興国の経済成長率は、2016年は4.1%から4.2%へ上方修正、2017年は4.6%と据え置きました。

アメリカの2016年の成長率予想を2.2%から1.6%へと下方修正。2017年の予想も、2.5%から2.2%へ下方修正しました。

ユーロ圏の成長率予想は、2016年は1.%から1.%へと上昇修正したものの、2017年は%から1.6%から1.5%へと下方修正。イギリスの予想は、2016年は1.9%から1.8%へと上昇修正したものの、2017年は2.2%から1.1%へと大幅な下方修正です。「Brexitのイギリス経済への悪い影響」は、1年のタイムラグを置いて、2017年から現れるようです。

日本の成長率予想は、2016年0.5%、2017年は0.6%と、それぞれ0.2%ポイント、0.5%ポイント引き上げました。財政出動の拡大や消費増税の見送り、緩和的な金融政策をその要因に挙げました。

上昇に転じた日本株式市場

このIMFの予測を受けて10月第1週から、薄商いの中で、日本株式市場には海外ヘッジファンドたちが参入してきます。

折しも、日本株式市場は需給面でもテクニカル面でも「底打ち上昇」シグナルを強く発していました。

一方、安倍自民党政権は、長期政権樹立を目指して、年明け1月にも(?)解散選挙を目論んでいます。

選挙に大勝するためには、日経平均は上がっていなければなりません。

しかしながら、円安インフレを嫌う地方の有権者たちの支持を得るためにも、今は、円安を加速させてはいけない。安倍自民党政権にとっては、選挙「前」は、是非とも「インフレを加速させないで日経平均を上昇させる」必要があります。

こういう時こそ、「日銀による大量(年間6兆円規模)の日本株ETF買い」は、安倍自民党政権にとっては大変好都合です。

Next: 解散総選挙に向け、日経平均株価は1万8,000~1万9,000円を目指す



日経平均株価は1万8,000~1万9,000円を目指す

日経平均は選挙が終わるまでに1万8,000円~1万9,000円を目指すことでしょう(加筆すれば、安倍自民党政権の長期樹立を助ける黒田日銀は、2018年3月、2期目も再選されることでしょう)。

こういった「日本国内の特殊事情」もにらんで、「逃げ足の速い外人ヘッジファンドたちのマネー」が日本株式市場に勢いよく参入してきています。この中には、「追随型」の「黒い目の外人」もいます。

これら海外ヘッジファンドたちは、かなり「手荒い手法」を使って、日本株を「無茶上げ」させているようです。

今後は、選挙が終わるまでは、「中国人民元のじり安」で、時折急落を繰り返すものの、日本株式市場は上昇してゆくことでしょうが…。

中国国内では「超大型の不動産バブル」がただいま暴走中。イエレンFRBの「二度目の利上げ」予測が、グローバルマネーの逆回転を巻き起こして、この中国の「大型不動産バブル崩壊」の引き金を引く可能性があります。

中国政府は、10月に入ってから不動産規制や融資規制を強化しています。

イエレンFRBの「二度目の利上げ」がなくても、中国の「超大型の不動産バブル」が崩壊するのは、もはや「時間の問題」でしょう。すでに中国国内マネーの一部は、「上海株式市場」のほうへ逆流し始めています。

「超大型の中国不動産バブル」が崩壊したならば、国際金融市場に多大な影響を及ぼすことでしょう。どなたさまも、このあたりは要注意です。

今、日本株式市場に参入してきている海外ヘッジファンドたちも、このあたりの「中国リスク」は十分承知した上での参入のようです。「非常に手荒い手口」で日本株を釣り上げているようです。

彼らヘッジファンドたちは、「選挙が終わるまで日本株に参入」などといった「悠長な投資家」では「無い」のです。彼らは「いつ何時、日本株式市場から撤退してゆくか?」については、全く「予測不可能」な人々です。

今は、海外ヘッジファンドたちに追随して「日本株の上昇」を追いかけるよりも、どちらかというと、「利益確定」の時期なのではないでしょうか?

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藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2016年10月25日号より一部抜粋、再構成

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