安倍晋三氏は2012年12月26日に内閣総理大臣に就任してからアベノミクス3本の矢をぶちあげ、日本を早期にデフレ脱却させるとともに、日本経済の復活を掲げました。
アベノミクスは2013年の流行語大賞にも入賞するほどの注目を集めましたが、そこから3年半が経過した今、実際のところデフレ脱却には至らず、むしろ消費低迷によるデフレの心配もささやかれるようになっており、一部の報道ではアベノミクスは失敗であったと言われています。(『週刊「年金ウォッチ」-自分年金作りのためのメルマガ』持田太市)
プロフィール:持田太市 (もちだたいち)
SBIハイネットワース株式会社 代表取締役。2007年にSBIホールディングス入社。住信SBIネット銀行開業を経験後、ウェブマーケティング部署を経て、海外でのオンライン金融事業の進出プロジェクトに従事。2013年よりロシアのモスクワに駐在し、インターネット銀行サービスを導入。2015年に帰国後、ウェブを活用した国際資産運用の情報プラットフォームプロジェクトを立ち上げ、現在オンライン金融サロン「ヘッジオンライン」を運営中。
実は何も成功していない? 一言で説明する「アベノミクスとは」
失敗したアベノミクス「3本の矢」
安倍晋三氏が2012年12月26日に内閣総理大臣に就任してからアベノミクス「3本の矢」をぶちあげ、日本を早期にデフレ脱却させるとともに、日本経済の復活を掲げました。
アベノミクスは2013年の流行語大賞にも入賞するほどの注目を集めましたが、そこから3年半が経過した今、実際のところデフレ脱却には至らず、むしろ消費低迷によるデフレの心配もささやかれるようになっており、一部の報道ではアベノミクスは失敗であったといわれています。
アベノミクスの3本の矢は、
(1)大胆な金融緩和
(2)機動的な財政出動
(3)民間投資を喚起する成長戦略
でした。
(1)金融緩和は、みなさんも名前を覚えるほどにメディアに露出されていますが、黒田東彦日銀総裁による異次元金融緩和です。これは現在年間80兆円という巨額の日本国債を日銀が買う、あるいは不動産や株といったその他の資産もどんどん買う、という話です。これによって、世の中にお金を大量に放出していきましょうという政策でした。
(2)財政出動は、当初は大規模な予算を組んで公共投資をしようと考えておりましたが、2011年の東日本大震災による復興財政出動もあり、決して機動的な出動はできていないという状況です。むしろ、予算を組んでもそれを消化できないようなこともあったようで、要するに公共投資先も見合うものが無くなってきているのだと思います。
(3)成長戦略にも注目が集まりました。これは岩盤規制と呼ばれる、各分野における規制を撤廃していこうとする動きでした。私たちが理解しやすいところでいえば、「民泊」が流行っていく流れの中で旅館業を見直したり、あるいは「ビットコイン」を筆頭とした仮想(暗号)通貨に対して通貨として認めるような法改正をしたり、です。しかし各報道を見る限り、これも十分にできてきたとは言えなかったわけです。
上記を見てみればわかるように、(2)と(3)は利害関係者(関係省庁など)との調整が必要となるわけで、いくら総理大臣がやるといっても簡単ではなかったわけです。そうなると本当に予定通りできたのは、(1)の金融緩和だけという話です。金融緩和は、日銀の内部で決定できる政策です。
そして今、日銀による金融緩和だけでは物足らないというのは、もはやあちこちで聞かれる結論となっているわけです。
Next: 実はたった一言で説明できる「アベノミクスとは一体何だったのか?」
安倍総理は2015年9月に「新3本の矢」を掲げたが…
ちなみに、2015年9月に安倍総理は「新3本の矢」を掲げました。これは、知らない人が多いかもしれないですね。
(4)希望を生み出す強い経済
(5)夢を紡ぐ子育て支援
(6)安心につながる社会保障
こういう内容でしたが、見てわかるように、最初の矢と比べるとそれこそ異次元といいますか、抽象論(具体的な方法がよくわからず、イメージできない)に過ぎなくなったわけです。だから、あまり注目を集めなかったのでしょう。
一言で説明できる「アベノミクスとは一体何だったのか?」
というわけで、アベノミクスとは一体何だったのか、と問われれば、残念ながら「大胆で異次元な金融緩和を行ったこと」という一言でほとんど説明ができてしまいます。
そして、その金融緩和が現時点において効果が得られなくなっているという事実を持って、これは失敗に終わってしまうのだろうという結論が導かれます。過去をどうこう言っても仕方ないのですが、たぶん2014年4月に行われた「消費増税」が、アベノミクスの間に実施された政策において最大の失敗だったと考えられます。これによってすべてが腰折れしてしまった感があるためです。
それがわかりつつあった2014年10月に、黒田日銀による異次元「追加」緩和を発動しましたが、2015年8月のチャイナショックと2015年12月の米国利上げがあり、2016年には一気にマーケットがダウンしてしまいました。
異次元金融緩和によって円安・株高にもっていき、2015年6月24日に日経平均株価が20,952円をつけてから、今は17,000円まで下がっています。今後、円安にはなりにくい環境があるという報道が多くある中で、2018年4月に黒田日銀総裁の任期が終了しますので、アベノミクスはおそらくこういうタイミングで、評価が決まるのだと感じます。
『週刊「年金ウォッチ」-自分年金作りのためのメルマガ』(2016年10月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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