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予測不能で進行形。トランプの「果たされない公約」が行き着く先は=大前研一

トランプ大統領が選挙期間中から言ってきたことは、ほとんど実現していません。自暴自棄になった彼がこの後どう出るのか、北朝鮮と同レベルで予測不能です。(『グローバルマネー・ジャーナル』大前研一)

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年8月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※7月30日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。

プロフィール:大前研一(おおまえ けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長。マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997~98)。UCLA総長教授(1997~)。現在、ボンド大学客員教授、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役。

オバマケア、国境税…次々と公約を破るトランプの自暴自棄に注意

オバマケアの一部撤廃法案、僅差で否決

アメリカ議会上院は28日、医療保険制度改革、オバマケアの一部を撤廃する法案を、賛成49、反対51で否決しました。共和党の3人が反対に回ったため、僅差の否決となったものですが、撤廃内容を絞った限定的な法案でさえ否決された形で、トランプ大統領の求心力低下は避けられない情勢です。

今回は、女性2人とマケイン氏が出てきました。彼は脳腫瘍で投票に来ないと思われていたのですが、出てきて反対票を投じ、反対は51となり、法案が葬り去られたということです。トランプ大統領はやけくそになり、「オバマケアは自滅させればいい」などと言っています。

アメリカの種類別医療保険の加入率の推移を見ると、無保険者は減少傾向にあり、それが今回の法律を通すと、3,200万人が裸になってしまう(米議会予算局試算)ということで、選挙を控えた共和党は、とてもこれには賛成できないということになったわけです。

公約をまったく守れないトランプ

トランプ大統領が選挙期間中から言ってきたことが、今のところまだできないという結果になりました。トランプ大統領は公約としてきた国境税をかけることも達成できず、人事の問題でごたごたしているだけではなく、公約の実行がまったくできずにいるのです。

オバマケア自体は、前から述べているように取扱保険会社が赤字になってしまうということでどんどん逃げていて、少なくともオバマケアを取り扱う保険会社は減っている状況です。州によっては1社しかないというところもあり、競争も何もあったものではないのです。このように実際オバマケア自身も直さなければならないところもあるのですが、それを葬り去るなどと乱暴なことを言うと、なかなか通らないということになります。

トランプ大統領はイライラが高じて、この後どう出てくるのか、北朝鮮あたりに突撃的に仕向けていく可能性もゼロではありません。この人は脈絡もなく、どこかで勝たなくてはならないディールしなくてはならないという性格の人なので、極めて彼自身が、つまりアメリカが、予測不能な状況になっていて、北朝鮮といい勝負と言えます。

トランプに投票した7人中6人がまだ支持している

トランプ政権と与党共和党は27日、国境調整税導入を断念すると発表しました。アメリカからの輸出を免税扱いにする一方、輸入は課税を強化する構想でした。増税が見込まれる小売や自動車販売などの輸入産業から、強い反対の声が上がっていました。

これを壁を作る費用に充てると言っていたわけですが、壁も象徴的に一部分だけ作って終わりということになり、トランプ大統領は言っていることがほとんど実現していません。考えてみれば、誰も実現できると思っていなかったので当たり前です。しかし、実現できると思って期待して投票した人、つまりプアホワイトの人たちは、ここまで敗北が続いているにもかかわらず、トランプ大統領に投票した7人のうち6人が、まだ彼を支持していると言われています。かなりハードコアな支持者たちがいると言えるのです。

Next: 時価総額5000億ドル超えのAmazonが世界にかける「大迷惑」とは?



アマゾン時価総額5000億ドル超えほか、新旧新興企業が躍進

アメリカウィーワーク(WeWork)の共同創業者で最高文化責任者のミゲル・マッケルビー氏が、日経新聞のインタビューに応じ、2018年初めに東京に拠点を開設し、以降2年間で15カ所を目安に共用オフィスを展開する計画を明らかにしました。

事務所を自分で借りておいてサブレットしていくというやり方です。ユニコーン企業の代表のような会社で、ニューヨークに本社を構えています。Uberなどと並び、時価総額が急増している会社の1つです。

ただ、日本ではサブレットの条件がアメリカなどとは異なるので本当にうまくいくかどうかは疑問ですが、自分の事務所を借りることについてはネット上の取引だけで済むという簡単なやり方です。日本でもそのようにやり方が簡単になれば良いですし、誰かがこれに対抗し、もっと簡単なものを作り出してくれるとなお良いと思います。

また、26日のニューヨーク株式市場で、アマゾン・ドット・コムの株価が、終値で1053ドルとなり、時価総額が初めて5000億ドルを超えました。

アップル、グーグル、マイクロソフトに次ぐ規模となり、ベゾス氏はビル・ゲイツを抜き、一時世界一の長者になりました。

アメリカで上場する企業の時価総額ランキングを見ると、アップル、アルファベット、マイクロソフトが上位を占め、アマゾン・ドット・コムは5位につけています。

ただ、こうした企業は独占禁止法を考えないといけないほど、世界的には迷惑を被っているのではないかとも言われています。アメリカの経済にも非常に大きな貢献をしていますが、昔なら独占ではないか、ブレイクアップするべきだ、分割しろという話になるはずなのです。しかし、実は分割できないという一面もあるのです。

昔とは状況がかなり違っていて、さらに競争相手が出てくるとすぐにダメになってしまう可能性もあるのです。昔のように、ものを供給していて、独占した後で値段を上げていくというやり方とはやや異なるのです。

素晴らしいサイバースペースを占有してこれだけのことを成し遂げているわけですが、競争相手が全然違うところから出てきたり、中国から大きな企業が出てきたりすると、ころっといってしまうという側面があります。この点で、分割という、従来の独占禁止法の常套手段が馴染まないという議論が行われているのです。

アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックは、ビックファイブと言われています。フェイスブックはどんどんと従業員を増やし、18,000人を超えています。フェイスブックにはものすごく多くのユーザがいますが、社員1人当たり何人のお客さんがいるかと言うと、25万人ぐらいだったのが現在は10万人ほどとなり、それで1人ひとりに対してきめ細かく面倒を見ているなどと言っています。

こうした独占については、ビジネスウィーク誌のカバーストーリーにもなっていて、フェイスブックはブレイクアップしろという議論がある一方で、あまりそれは馴染まないとも言われているのです。


※本記事は、グローバルマネー・ジャーナル 2017年8月2日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に無料購読をどうぞ。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年8月2日号)より一部抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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