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今後1年でNYダウ21000ドルも。そのとき日経平均はどこまで上がるか?=伊藤智洋

NYダウは今後1年で21000ドル以上も考えられる状況。来年の日経平均株価は不安要因がほとんどなく、年間を通じて上昇の流れを作る2005年に似た展開になる可能性があります。(『少額投資家のための売買戦略』伊藤智洋)

プロフィール:伊藤智洋(いとうとしひろ)
証券会社、商品先物調査会社のテクニカルアナリストを経て、1996年に投資情報サービス設立。株や商品先物への投資活動を通じて、テクニカル分析の有効性についての記事を執筆。MS-DOS時代からの徹底したデータ分析により、さまざまな投資対象の値動きの本質を暴く。『チャートの救急箱』(投資レーダー社)、『FX・株・先物チャートの新法則[パワートレンド編]』(東洋経済新報社)など著書多数。

※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2016年11月27日号を一部抜粋・再構成したものです。只今、2016年9月までのバックナンバーも無料公開中!ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。

NYダウに上値余地あり。日本市場は2005年の爆騰相場が再来か

今後のNYダウは21000ドル以上に上昇も

11月9日の急落を経過して、翌日以降、日経平均株価が上昇し続けています。18000円を超えて、ようやく上昇を信じる人が増えてきたのではないでしょうか。

トランプ次期大統領の減税政策が実行されるなら、NYダウは、リーマンショック前に急上昇した2006~2007年と似た展開になる可能性が出てきます。この時は、2006年7月18日の安値10683ドルから2007年7月17日の高値14021ドルまで、1年間かけて3000ドル以上の上げ幅になっています。

現在のチャートを見ると、09年3月以降の上昇の最終段階の上げ局面へ入っていると見ることができます。これまでは、今年の高値が終点になると推測してきましたが、来年、まだ上昇余地があるとするなら、これから1年くらいかけて、21000ドル以上へ上げる展開が推測できる状況です。

NYダウ 月足(SBI証券提供)

来年、日経平均株価の上値を抑える要因があるとするなら、FRBの利上げによるNYダウの下げか、人民元安にともなう円高の流れだと考えられますが、その1つがなくなりました。

もう日経平均を売り仕掛けるのは難しい

個人的な見方で言えば、今年の日本の株式市場は、円高の流れから株安を作る形で狙われていたと考えています。今年の前半の国内の株式市場は、弱気に誘導しやすい状況でした。理由には以下のことが挙げられます。

以上のことに加えて、今年は、人民元がSDR構成通貨入りすることになるため、自由化へ向けた動きの中で、人民元が暴落することを恐れた人民元からの逃避が進み、年初から急激な円高の流れに入りました。この際、米国政府高官が何度も為替操作を許さないと発言したことで、日銀による介入をけん制することになりました。

今年前半は、海外勢が積極的な利食いを行う過程で、株価が下げることを利用して、(FOMCや日銀会合の日程があるので、展開を見極めやすい為替を使い、下げのタイミングをコントロールして)下げ局面でも利益を得るための仕掛けが何度もあったと見ています。今年は、円・ドルが若干円高に振れるだけで、日経平均が200円幅以上の下げ場面になることが何度も見られました。

(しかし)NYダウが上昇の流れを作るなら、来年は、円・ドルを円高に誘導するだけで、今年のように気持ちよく日経平均を下げ方向へ持ってゆくことができなくなるはずです。

また、日銀によるETFの買いが膨らみ、浮動株が減少しています。そのため、日経平均採用銘柄は、下げ方向に動きにくく、上げ方向へ大きく振れやすい環境になっています。

Next: 不安要因の消えた2017年の日経平均株価は年間を通じて上昇の可能性



不安要因の消えた2017年の日経平均株価は年間を通じて上昇の可能性

今年年初の人民元安は、昨年末からの投機による仕掛けがあったと言われています。人民元は、2009年半ばまで中国本土内(オンショア)でのみ人民元決済が行われていましたが、その後、中国本土外(オフショア)での人民元決済が段階的に認められ、香港を中心としたオフショア人民元市場が発展してきました。

オフショアの金融機関は限られた場合を除き、オンショア人民元為替・金利市場にアクセスすることができず、またオンショアの金融機関も原則オフショア市場にアクセスすることができません。

昨年末、今年10月に人民元がSDR構成通貨に入るという発表がありました。人民元が自由化へ向かう場合、どこかのタイミングで人民元が暴落することに対する懸念が生じます。

この不安心理がオンショア市場での潜在的な人民元への売り圧力を膨らませていたため、それを利用して、投機がオフショア市場で積極的に人民元を売り、先行的に人民元安を作り出し、オンショア市場とのかい離を拡大させて、オンショア市場での人民元安を誘導するという取引が行われていたようです。

人民元安が円高につながり、株安へ導くことになったので、結果として、投機は、人民元でも、円・ドルでも、日本株でもぼろ儲けしていると見ています。

来年は、今年、外国勢が6兆円も売り越したと言われているように、12年からの買いを十分に手じまいしているので、積極的に売る必要がありません。また、米国株式市場が弱いというイメージも払しょくされました。

現状から見れば、来年の米国の最大の不安は、米国内での投資を積極的に誘導することや、金利上昇に伴い、ドル高が進むということです。そのような状況で、投機が人民元安を仕掛けることを許すとは考えられません

来年の日経平均株価は、不安要因がほとんどないので、年間を通じて上昇の流れを作る、05年のような展開になる可能性があります。

Next: 目先の日経平均株価は小幅調整を挟みつつ18835円を上回る可能性も



「パワー・トレンド理論」で読み解く日経平均株価 値動きのポイント

一定の流れができたら、必ず目標値へ到達するという見方をしておく

日経平均株価は、寄り付きで上放れ、日中に小動きを繰り返しています。上がるのか、上値重いのか、わからない動き方になっています。このような場面こそ、10月23日号で紹介した5つの波のパターンを基準にするという見方が役に立ちます。

一定の流れが5つの波のパターンを形成する場合、3波目の上昇には、はっきりとした上値目標値があります。3波の終点は、2波の調整幅と同程度の値幅の4波の調整があらわれても、2波の終点までにつける期間の高値を抜けない(個人的な経験則での解釈です、エリオット波動論では1波の終点を割れない)地点になります。

したがって、3波の終点は、2波の調整幅に2波の終点までの期間でつけた高値を加えた地点以上でつけるという見方になります。

日経平均株価 日足

この図は、日経平均株価日足です。チャートでは、11月9日の安値16111円で2波が終了して、3波目の上げ局面へ入っていると見ることができます。前述した見方から3波の終点を計算すると、18835円以上が3波の終点となります。

ここまでわかったら、その後の展開は、次のように考えるようにします。6月24日以降の上昇が5つの波のパターンを形成し、来年まで継続する長い上昇局面であるなら、現在の上昇は、これまでの上昇のパターンを継続する格好で、小幅調整を繰り返しながら一気に18835円を大きく上回るはずです。

18835円を超える前に上値、下値を切り下げる弱気パターンをつける(小幅調整の範囲を超える反転がある)なら、その後は、「6月24日以降の上昇が一時的な動きで、来年まで継続する長い上昇の流れではなく、上値が限られる上げだった」「その反転がどんなに下げても、11月1日~9日までと同程度の調整にならず、再上昇を開始した後、それまで以上の上げ局面があらわれる」という見方のどちらかになります。

後者は、それまで、次の調整を11月1日~9日と同程度の値幅の下げだけを想定していたのが、もう1つ異なる小さ目の調整を経過して、さらに11月1~9日の調整を経過することになるので、上げ期間と上げ幅が長くなります。

ややこしいかもしれませんが、買いを入れている側の立場になって考えて見て下さい。

(大陽線をつけた)11月9日の上げを見て、上昇を確信して、10日の始値16562円で仕掛けたとします。その場合、その仕掛けは、19000円前後まで上げることを想定した買いになっているはずです。

想定の通りなら、一本調子に上昇して、19000円へ到達してやめるという判断になります。18835円を前に上値を抑えられたとしても、それは、想定以上の上昇局面へ入っているサインになるか、想定していた上昇があらわれないかのどちらかです。

前者なら、買値を下回ることなく、再上昇を開始するはずです。買値まで下げたら、シナリオが間違っていたという判断になります。上げ幅のすべてを失ってからの手じまいになりますが、買値付近で手じまいすれば、損にはなりません

いろいろ考えても、短期の値動きなどわかるわけがありません。前述したような考え方で、大きく勝つか、トントンで終わるか、潔く割り切った方が、いい結果につながります。

Next: 個別銘柄への投資で値幅を取るための重要ポイント



個別銘柄への投資で値幅を取るための重要ポイント

ところで、いざ、株へ投資しようと考えると、銘柄が多すぎて、何に投資していいのかがわからなくなってしまう人がほとんどではないでしょうか。そこで今回は、銘柄を選ぶときの考え方について書いておきます。

株式投資で利益を得る方法は、

  1. 市場シェアの小さな企業が拡大してゆく過程で利益を得る方法
  2. 株主への配当で利益を得る方法
  3. 値動きの差で利益を得る方法

の3通りだと考えられます。

(1)は、主に社長のやる気、強い意志、目標の高さ、行動力、信用力が重要になります。(2)は、市場シェアが高く、安定していることが重要になります。(3)は、価格が動くことが重要になります。

(1)(2)は、株価の上下に関係なく、年をまたいで何年も持ち続けることを前提にした取引になります。(3)は、一定期間で価格が大きく動くことを前提とした取引です。

価格が動く理由は、漠然としたものではダメです。毎年、必ずそうならなければいけない理由が必要です。その年に注目されているテーマで選ぶとか、新薬の開発によって、この銘柄が注目されるかもしれないとかでは、いつ上がりだすのか、今年なのか、来年なのかがはっきりしません。実際に注目されるかもわからず、ただ待っているだけです。

目先の価格の上げ下げが、想定しているテーマで動いているのかがわかりません。スタート地点も終点もわかりません。値幅で利益を得るための投資先として選択する銘柄は、毎年、必ず、同じ理由で価格が動き、そして、十分に利益の得られる程度の値幅の動きがある銘柄だけです。

通常、株式投資と言えば、値幅で利益を得るやり方を考えると思いますが、価格が上昇、下降することを期待して投資しているにもかかわらず、ほとんどの人は、いつから上がりだすのか、いつまで上がるのかについて、何のイメージも持っていません

少し投資の仕方を勉強した人だと、買い場、売り場については、一般的なチャートのパターンを参考にすると思います。しかし、チャートの示すサインは、

「割と高い確率で反転するかもしれないけど、根拠はない」
「反転サインをつけた安値が押し目になるかもしれないが、いつから本格的に上昇を開始するかはわからない」
「反転したとしても、どこまでその方向へ動くかはわからない」

という内容にすぎません。

どんな銘柄でも、反発サインをつけたから買いというわけではなく、毎年、今の時期に価格が同じように上昇していて、その上昇に理由があり、今年も例年の通りに上昇する可能性がある状況で、チャートが反発サインをつけるから、その反発サインの通り、しばらく価格が上昇すると判断できるから買うわけです。

チャートが反発サインをつけているなら、どんな銘柄でも買いというわけではありません。値幅で利益を得るための投資は、毎年ある一定幅の動きを利益にする投資であって、複数年にわたる長期的な上昇、下降局面のすべてを利益にする投資ではありません。
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※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2016年11月27日号を一部抜粋・再構成したものです。只今、2016年9月までのバックナンバーも無料公開中!ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。

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『少額投資家のための売買戦略』』(2016年11月27日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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