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孫正義氏の「ハゲしすぎる節税術」一体どこまでが合法なのか?=大村大次郎

元国税調査官の大村大次郎さんが発行する、役立つ節税の裏ワザから富裕層による税逃れの実態まで明らかにするメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の中で、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏が東日本大震災の直後に設立した、財団法人「東日本大震災復興支援財団」の裏側について暴露しています。アメリカでは、ビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏ら富裕層が、多額の寄付を行ったり慈善団体を設立することが「節税対策」となり、そのことについて賛否が分かれているようですが、日本の場合は「財団」というシステムを「節税」に使えるカラクリがあるようです。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2016年12月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

資産家が使いこなす「財団」を使った相続税・贈与税の回避術

孫正義氏のつくった「東日本大震災復興支援財団」の秘密

金持ちの資産管理システムとして「財団」というものがあります。財団というと、社会のためになる事業を行なっている団体というようなイメージがあります。もちろん、本来、財団とはそういう目的のためにあったものです。が、この財団を使えば、自分の資産を税金から守ることもできるのです。

そのカラクリは、おいおいお話ししていくとして、東日本大震災があった直後に、こういうことがあったのを覚えておられますか?

東日本大震災が起きたとき、ソフトバンクの孫正義氏がすぐに「100億円寄付する」と発表しました。が、その後、なかなか、100億円の寄付が実行された気配がなかったので、ネットなどで騒がれ始めたときに、孫氏は100億円の寄付先を発表しました。

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それによると、赤十字、福島県、岩手県などに10億円ずつ寄付していましたが、最大の寄付先は財団法人東日本大震災復興支援財団」でした。彼はこの「東日本大震災復興支援財団」に40億円もの寄付をしたのです。

財団というのは、ざっくり言うと寄付などの財産を使って何かの事業を行う、ということものです。では、「東日本大震災復興支援財団」とはどういうものかといいますと、その目的や活動内容は未だによくわかっておりません。財団の理事には、孫正義氏自身やソフトバンクの幹部らがずらりと名を連ねております。また孫氏に関係の深い政治関係者なども入っております。

つまりは、40億円の財産を、孫氏自身ソフトバンクの幹部政治関係者などが自由に使えるという形になっているのです。報酬などもそれなりに払われているものと推測されます。

Next: 財団を使って身内にバラ撒いた40億のカネ



財団を使って身内にバラ撒いた40億のカネ

もし40億円を、自分の知人などにばら撒いた場合、かなり高額の贈与税がかかるはずです。が、財団をつくって、そこに40億円をぶち込み、報酬という形で知人に支払えば贈与税はかかってこないのです。

意地悪な見方をすれば、孫氏は「100億円を寄付する」といいながら、

40億円は自分の身内にばら撒いた

「しかも贈与税を回避している」

ということです。

もちろん、財団にぶち込んだ以外の60億円は、正真正銘、赤十字や自治体に寄付されているのだから、それ自体は大変、偉大なことだと思われます。が、どうせそういうことをするのならば、「100億円寄付する」などと言わずに、最初から「60億円を寄付する」と宣言し、その全額を赤十字や自治体に寄付した方がよかったように思うのは私だけでしょうか。

こんなに巨額の寄付をしているのに、その一部に不透明な部分、ずる賢い部分があったら、全体が台無しになるように思われます。まあ、それは世間の印象であって、孫氏が「巨額の寄付をする太っ腹な事業家」であり、自分の資産を賢く管理する人でもあるということでしょう。

それにしても、孫氏のつくった財団とは何なのでしょうか。

Next: 資産家が設立する財団にも2種類ある



資産家が設立する財団にも2種類ある

財団というのは、まとまった財産を元手にして、何かを行なう法人のことです。つまりは、資産家などが、自分のお金を拠出して団体をつくり、何かの事業を行うのです。

そして、財団法人には2種類あります。

一つは、公益性のある事業を行う「公益財団法人」。

もう一つの「一般財団法人」というのは、剰余金の分配を目的としない財団のことです。その法人が行う事業には、必ずしも公益性は求められていません。

つまりは、公益性がなくても、財団法人、社団法人をつくることができるのです。

財団法人というと、公共のためのものというイメージがありますが、それは「公益財団法人」のことであり、「一般財団法人公益には関係ないのです。

以前は、財団というと必ず公益性が求められていたのですが、平成20年12月1日に「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律が施行され、公益性がなくても「一般財団法人」「一般社団法人」というものが、つくれるようになりました。

「一般財団法人」は、普通にアパート経営をしたり、いろんな収益事業を行うなど、企業としての活動をしても構わないのです。ほとんど普通の法人(会社)のようですね。

「一般財団法人」が普通の法人と何が違うのか、というと、「配当の分配をしない」ということです。

普通の法人(会社)であれば、事業を行なって、利益が出れば株主に配当を支払います。しかし、財団法人の場合は、配当はせずに、利益は法人の中に貯め置かれるのです。

一般財団法人と普通の法人の違いは、その点だけといってもいいでしょう。他にも若干の違いはありますが、もっとも特徴的な部分は、そこだけです。

Next: なぜ財団は資産家の節税システムなのか



なぜ財団は資産家の節税システムなのか

財団が、なぜ金持ちの節税システムになっているかというと、財団は、税金の面で非常に大きな特典を持っているからなのです。

資産家が財団を作って自分のお金を拠出するときには、税金がかかりません。普通、自分の資産をだれかにあげたりすれば、贈与税がかかってしまいます。贈与せずに、死後に譲った場合は相続税がかかります。しかし財団にあげることにすれば贈与税も相続税もかからないのです。

つまり金持ちは財団を作れば、税金を払わずに自分の財産を他の人に移転することができるのです。

金持ちは、財産を持ち続けていればいずれ税金で持っていかれてしまうので、財団を作って財産を他に移すことはよくあるのです。

もちろん、ただ財団を作るだけでは、社会に寄付をするのと同じことなので、まったく節税にはなりません。そこにはもう一つのカラクリがあるのです。

実は財団というのは、内部の組織は、創設者の思いのままにつくることができます。しかも、外部からの指導はほとんどないのです。

つまり財団を作った場合、事実上、作った人の意のままになるのです。

多額の財産を財団にぶちこんでも、自分の意のままになるのだから、金持ちとしてはこんなにいいことはありません。名目上は、財団のお金ですが、実質的には自分のお金と同じなんですから。

官公庁も一応、指導をすることになっていますが、それも甘いものです。

だから財団のお金の使い道は、闇に包まれていることが多いのです。

Next: 合法的に財産を身内に移転できる財団のカラクリ



財団や公益法人の活動は、その構成員の協議で決められる、という建前があります。でも財団や公益法人の構成員は、創設者の息がかかった人しかいません。

だから実質的に財団や公益法人の活動は、財団を作った人の思いのままになるのです。

第三者を入れなくてはならないという法律もなければ、財産の運用をチェックする外部機関もないのです。

また財団や公益法人の役員や職員には、財団の資産から給料が払われます。だから身内を財団や公益法人の役員、職員にしておけば、合法的に財産を身内に移転することが出来るのです。

たとえば、10億円の財産を出して、財団をつくったとします。

その財団に自分の親族を5人、職員として雇用させます。それぞれに1000万円ずつ給料を払ったとします。つまりは、自分の資産を、財団の給料として、親族に移すことができるのです。10年で5億円、20年で10億円の資産を、自分の親族に移せます。

親族の給料には所得税が課税されますが、相続税に比べればかなり低くなります

また給料として払わずに、物を与えれば所得税さえ課せられません。財団や公益法人の持ち物ということにして、役員や職員に家や車を買い与えるのです。

本来、それだけのものを給料としてもらえば多額の税金がかかります。でも、財団や公益法人の持ち物ということにしておけば、まったく税金がかからずに、それを手にすることができるのです。
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※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2016年12月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』(2016年12月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授。「正しい税務調査の受け方」や「最新の税金情報」なども掲載。主の著書「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)

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