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一人っ子政策の闇。中国農村部の「花嫁探し」人身売買同然の実態とは?=石平

現代中国の農村部を覆う深刻な問題の数々。今回の無料メルマガ『石平(せきへい)のチャイナウォッチ』では、貧困にあえぐ農民たちの「結婚問題」をクローズアップ、人身売買同然の嫁探しの風習や、一人っ子政策の犠牲者とも言える「余剰男」と呼ばれる人々の閉ざされた未来など中国の暗部を掘り下げます。

結婚できない3400万人の「余剰男」は、カネで嫁を買うしかない

中国の悪しき風習「花嫁への結納金」が高騰!年収の10倍にも

先月28日、中国共産党中央宣伝部は全国の宣伝部門を招集して「農村精神文明建設」をテーマとするテレビ会議を開いた。

その中で、党宣伝部長の劉奇葆氏は「農村地域の悪しき風習を一掃し精神文明の建設を推進せよ」との大号令をかけた。党宣伝部がやり玉に挙げた「悪しき風習」の一つは、中国の農村地域で広がっている「天価超高額彩礼」の問題である。

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彩礼とは中国古来の婚姻儀礼で、結婚を正式に決める前に新郎の家が新婦の家に一定金額の現金を贈る風習である。日本の結納金にあたるが、最近、特に問題となっているのは、そのびっくりするほどの相場の高騰である。

中国のネット上で流布されている「2016年全国各省彩礼相場一覧表」によると、湖南省、山東省、浙江省などでは彩礼平均相場が10万元(約160万円)。旧満州の東北地方や江西省、青海省となると、一気に50万元台に跳ね上がる。極め付きは、上海と天津で、両大都市の彩礼相場は、何と100万元台に上っている。

こうしてみると、「天価彩礼」は何も党宣伝部のいう農村部だけの問題でもない。

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農村部は「嫁を買う」という人身売買同然の有様に

問題の焦点は、農村地域の貧困ぶりからすれば、彩礼の価格があまりにも高くつり上げられている点である。

中国中央テレビが今年2月に陝西省農村部で行った「天価彩礼」の実態調査によると、たとえば同省楡林地区の彩礼相場は、新郎の家の裕福度によって10万元から20万元となっており、宝鶏、隴県などの地域でも相場がほぼ同じである。

そして全省の農村部を平均すると、彩礼相場は10万元程度となっているが、それは、陝西省農村家庭の平均年収の10倍以上にもなる金額である。

年収の10倍以上、日本の感覚でいえば、数千万円以上のお金を出して嫁をもらうことになろう。もはや「人身売買同然の世界である。実際、上述の陝西省農村地域では、「嫁を買う」というのが日常的慣用語となっているありさまである。

沿岸に近い安徽省の場合、彩礼のことで今はやっているのは「万紫千紅」である。中国の人民元は、五元札は紫色を基調とし、百元札は紅色となっているから、「万紫千紅」とは要するに、五元札1万枚、百元1,000千枚、総計15万元。それが彩礼の相場である。しかも、銀行の振り込みでは駄目で、新郎の家は実際に、「万紫千紅」の札束を新婦の家まで運んでいかなければならない。

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一人っ子政策の犠牲者「余剰男」

こうなった原因の一つは当然、中国の農村部における深刻な嫁不足である。その背景にあるのは、長年の一人っ子政策で、男子が欲しがられる農村部で女子の胎児の中絶が氾濫していたことである。その結果、今の中国では若い男女の比率が大きく崩れて3,400万人の「余剰男」が存在しているのである。

理論的には、この3,400万人の余剰男は生涯結婚できない計算になっているから、いずれ社会的大混乱を引き起こす火種の一つとなろう。

こうした中で、一部の学者やネット民からは、移民政策を進めることによってこの3,400万人の男たちの結婚問題の解決を図るべきだという意見が数多く上がってきている。要するに、中国国内で結婚できない男たちの大軍を海外へ行かせて嫁を探させよう、という発想である。

それでは周辺の国々の若い女性たちはまるで、中国人自身が引き起こした「余剰男問題を解決するための道具となっているか、のようである。

中国の国内危機を周辺国に転嫁するのはご免こうむりたいが、この問題の多い巨大国とどうつき合っていくのか。常に周辺国にとっての悩みの種であろう。

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石平(せきへい)のチャイナウォッチ』(2016年12月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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