前回、相続税の税務調査対象になりやすい家庭を取り上げました。今回は、実際にどのような形で調査が進んでいくのか、よくされる質問などを解説します。(『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』小櫃麻衣)(『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』小櫃麻衣)
税務署は三回忌の頃にやってくる。当日の流れと調査内容は?
税務調査の対象になりやすい家庭
まずはじめに、税務調査の対象になりやすいご家庭における「8つのポイント」について軽くおさらいしてから、今回の本題に入っていきます。
<税務調査の対象になりやすい家庭「8つのポイント」>
- 遺産総額が3億円を超える
- 相続人名義の預貯金口座や証券会社口座がたくさんある
- 預貯金の出入りが多く、何に使ったお金なのかがわからないものが多い
- 銀行の貸金庫を利用している
- 被相続人の収入から考えて相続財産が少なすぎる
- 海外送金をしているのに、海外の財産の申告がない
- 広大地評価をしている
- ご自身で相続税申告を行なった
どのように調査が進んでいくのか?
それでは、本題の税務調査の対象になった際に、「どのように調査が進んでいくのか」について説明させて頂きます。
まず、税務調査は強制調査ではなく、あくまでも任意調査です。つまり、なんの事前連絡もなく、調査員が勝手に自宅に押し入ってくるわけではありません!
相続が発生すると、大半の方が税理士に相続税申告の依頼をすることだと思います。税務調査の対象になると、事前に申告を行なった担当の税理士に連絡が入り、そこから相続人に伝えられます。いきなり相続人本人へ税務署から連絡が入るわけではないので安心してください。そこから税務署と相続人と担当税理士の都合の良い日を決めて、税務調査当日を迎えることになります。
必ず税理士に立ち会ってもらう必要はありませんが、調査員に専門的なことを聞かれた際に困ってしまうこともあるかと思いますので、担当税理士に立ち会ってもらった方が無難でしょう。
また、相続人全員の立ち合いを求められることもありますので、注意が必要です。
税務調査官が来るのは、1~2年後の秋
税務調査は、相続税申告から1年後もしくは2年後の秋にやってきます。つまり、三回忌を目安に覚えておけば良いでしょう。
なぜ秋なのかと言いますと、税務署では7月に大きな人事異動があり、1年単位で税務調査を行なっていくためです。法律上、相続税の時効は5年とされていますので、相続税申告から5年が経過すれば、税務調査の心配はないと判断することができます。
午前10時、調査員が2人組でやってくる
通常、調査員は2人組で被相続人が住んでいた自宅へやってきます。調査は午前10時から開始され、早くて15時頃、遅くても17時頃までには終了します。ちなみに調査は1日で済む場合もあれば、2日間に渡って行われることもあります。
税務調査が終了した後は、後日、調査の結果が伝えられます。財産の申告漏れや評価額の計算ミスがあれば、追加で相続税を納税、それに加えて罰金が科せられます。
Next: 具体的にどんなことを聞かれる? よく質問される内容とその意図とは
よく質問される内容
では、丸1日かけて行われる税務調査がどのように進んでいくのか、またどのようなことが質問されるのかといった具体的な部分について説明します。
前述の通り、税務調査当日は午前10時頃に税務署の調査員2名が、被相続人の生前住んでいた自宅にやってきます。午前中の調査については、何の変哲もない世間話から始まり、被相続人や相続人についての質問に多くの時間を費やします。
具体的に「どのような質問がされやすいのか」という点について、解説させて頂きます。
被相続人についての質問は、出生地や趣味、職歴、取引のあった金融機関、貸金庫の使用有無、生前贈与の有無、どのように亡くなったのか、亡くなる前後に入院や介護があったのか、財産をどうやって築き上げてきたのか、などについて事細かに質問されます。
相続人についての質問は、職業や現在の住まい、税理士との関係、取引のある金融機関、相続税を納税した金融機関、貸金庫の使用有無、相続人の家の購入金額や売却金額、相続人の家族構成(年齢・学校名・職業)、被相続人の配偶者の財産状況、財産管理は誰が行なっていたのか、相続開始直前で下ろした現金の具体的な使い道、相続人の投資状況などなどです。
よく質問される項目をざっと挙げただけで、これだけの数があるのです。
「聞かれたことだけ」を「正直」に答えよう
なんでここまで質問するのか、疑問に感じるかもしれません。ですが、しっかり意図があるのです。
例えば、被相続人の趣味がゴルフなのに、ゴルフの会員権が相続財産に計上されていない、骨董品集めが趣味なのに骨董品が相続財産に計上されていない、などが発覚すれば当然怪しまれます。
また、専業主婦の妻が財産管理を行なっている場合で、妻に莫大な金額の預貯金があれば、夫から振り込まれる生活費の残りを贈与されていたとみなされます。
相続人の職業について聞くのは、年収を推定し、相続人の預貯金のバランスを見て、あまりにも預貯金残高が多ければ被相続人から贈与を受けていたのではないかと疑われます。
このように、調査員が質問してくる内容にはすべて意図があります。正直に答えることが大前提にありますが、余計なことまで話せば、逆に怪しまれることもあります。
聞かれたことだけを正直に答えるといったスタンスで臨みましょう。
『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』(2017年9月20日, 22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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最近なにかと話題になっている相続。実は相続手続きの約9割はご自身で行わなくてはならないのです。そうであるにも関わらず、相続が発生してから急いで手続きに取り掛かる方がほとんど…。また、相続トラブルはごくごく一般的なご家庭ほど発生しやすいのです!うちは資産家でもないから関係ないとは言ってられません。相続手続きに関する記事はもちろん、事前の相続対策についての記事も配信していきます。疑問点やご質問がありましたら、お気軽におっしゃってください。わかりやすく回答させて頂きます!