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トランプ氏の攻撃ツイートは「幼稚園レベルの認識」に基づいている=大前研一

日本の国別投資残高はアメリカが圧倒的一位です。この点をトランプ氏にわかるように説明してあげる必要があると思います。トヨタなどは、誰よりも雇用を作っているのです。(『グローバルマネー・ジャーナル』大前研一)

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年1月18日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※1月15日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。

プロフィール:大前研一(おおまえ けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長。マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997~98)。UCLA総長教授(1997~)。現在、ボンド大学客員教授、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役。

トランプ氏の雇用創出方針に潜む製造業の課題

【アメリカ】貿易収支の推移と主な貿易相手国別の収支

アメリカの貿易収支は、サービスが非常にプラスとなり、財がマイナスになっている状況です。これはアメリカの選択による問題です。主な貿易相手国別の収支を見ると、中国に対するマイナスが最も大きく、そしてドイツ日本となっています。

しかしトランプ氏はドイツのことには全く触れず、中国日本をいつも対象にしています。またメキシコについても厳しく批判していますが、NAFTAにはカナダも含まれます。カナダとの間には塀を作るのかということになりますが、カナダについても失念しているようです。NAFTAにカナダが入っているということが、彼の頭の中には無いのです。

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一方、サービス収支を見ると、一位が中国、そしてカナダブラジル日本と続きます。これはアメリカにとってプラスの順なので、この点と相殺して考える必要があるのです。物の収支だけの問題では無いのです。

ニューズウィーク誌の記事でも、トランプ氏は事業を息子に譲って退くことができるのかと書かれています。頼っているイヴァンカとその夫はホワイトハウスに入り、自身の二人の息子たちに事業を引き継ぐとしていて、フィリピンのトランプタワーの建設など、息子たちが出向いているようですが、こうしたものが世界中に何十もあるのです。実際にコンフリクトがないのか懸念されています。

さらに、最近ワシントンDCのホワイトハウスの側に新しいトランプタワーができました。外国からの要人が来た時に、一行がそこに泊まるとなると、それは贈収賄になるのではないかと指摘され、彼は急に、そのお金を国に返すなどと言い出しているのです。本当に事業を人に渡すと言うならば、トランプタワーでなく、別の名前にすればいいのです。結果的にこうした場所をプロモーションに使うことはやはり贈賄になるということで、国にお金を返すと言うものの、どうするのか疑問に思われます。

Next: 現実的には実行不可能? 誤った認識で進むトランプ氏の通商政策



誤った認識で進む、トランプ氏の「通商政策」

また、通商政策については、やはり彼のやり方はマイナスになります。アメリカは自由貿易協定NAFTAがあるカナダメキシコはほどほどに使っていて、それによりコスト競争力が出ているのです。それらを無理にアメリカに持ってくることで、アメリカ企業の競争力が削がれることにつながります。

トヨタは5年で1.1兆円の投資をすると言っていますが、これはトヨタにとっては誤差の範囲です。トヨタはメキシコ工場を止めるわけでもありません。そして、トランプ氏が間違っている点は、実は非難されたカローラはカナダで作っているのです。それをメキシコのグアナファト州で作ろうとしているわけです。

さらにバハで作ると発言しましたが、実際にバハで作っているのはタコマであり、トランプ氏の頭は全くクリアではないのです。アマゾン10万人の雇用と言っていますが、倉庫と配送人ばかりだということです。今回の通商政策は、幼稚園レベルの認識に基づいて、ツイッターで命令をしていると言えるのです。

一方、日本の国別投資残高アメリカが圧倒的一位です。この点をトランプ氏にわかるように説明してあげる必要があると思います。彼は日本と中国は同じことをしているという認識ですが、日本の場合は北米が生産基地になっており、トヨタなどは、部品会社も多数連れて行くなど、誰よりも雇用を作っているのです。功績を讃えられてしかるべきだと思います。


本記事は『グローバルマネー・ジャーナル』』2017年1月18日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に無料登録をどうぞ。本記事で割愛した「【オーストラリア】都市部の住宅価格2016年に10.9%上昇」もすぐ読めます。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年1月18日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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