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「2%インフレ目標」を達成できなかった現代日本に欠けているもの=田中徹郎

長い間、当然だと考えられていたことが、実は単なる思い込みにすぎなかったというのはよくある話です。最近では「インフレ目標」を中央銀行が設定するのがはやりですが、これも疑ってかかるべきかもしれません。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

「日銀への丸投げ」をやめ、企業と従業員の悲惨な関係を見直そう

無理だった、日銀「2%のインフレ目標」

長い間、当然のように思われていたことでも、今になって考えれば単なる思い込みにすぎなかった…。振り返ってみると、こんなことはよくあります。

例えば、僕が就職したころは、一度入社してしまえばそれっきりで、一生同じ会社に勤めることが当然とされていました。給料は毎年上がるのがあたりまえでしたし、若手の社員は長期の住宅ローンを早々に借り、マイホームを建てて一人前になると考えられていたものです。

今から考えると、どれもこれもおかしな話です。

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最近では「インフレ目標」というものを中央銀行が設定するのがはやりですが、これも疑ってかかるべきかもしれません。まず人為的にモノの値段をあげるというようなことが、そもそも可能なのかという疑問です。

4年前に黒田さんが日銀総裁に就任したとき、2年後に2%のインフレ率達成を宣言しましたが、「期待に働きかける政策」はすでに失敗に終わったようで、またまたデフレに戻りつつあります。この4年間、あれだけ大胆にインフレ誘導を試みたにも関わらずです。4年もやれば成功か失敗かくらいはわかるはずで、そこは日銀も十分自覚しているでしょう。

つまり、金融政策だけでインフレに誘導するのは、無理だったということです。

これから日本経済は何を目標にするべきか

では、日本経済はこれから何を目標に政策を選択していくべきなのでしょう。

僕は、経済の実態を伴わないインフレ誘導、言い換えれば「日銀への丸投げ」を早々に終えるべきだと思います。

安倍さんの三本の矢、すなわち

の筆頭にあげるべき構造改革の、一丁目一番地はいったい何なのでしょうか。

Next: 「残業ゼロ」という希望の光。インフレ誘導への正しい道筋を僕はこう考える



僕が考える「インフレ誘導」への正しい道筋

この4年間、僕なりにいろいろ考えてきましたが、どうやら「会社と従業員の関係の見直し」が、一つの有効な道筋ではないかという気がしています。言い換えれば、もっと緩やかな雇用関係の構築です。

これは従業員と企業の関係を見直すということで、従業員は仕事の効率を上げ、仕事が終わればいつでも会社から出られるような環境を作る。退社後は副業で稼ぐのも自由だし、習い事でスキルを高めてもいいですし、家族との時間を楽しむのも自由。

カイシャで成果をあげる人は賃金が上がるが、そこそこの仕事で妥協する人は、それなりの給料で満足する。週に5日働く人もいれば、週に2日だけ仕事する人もいる。在宅勤務ももちろんOK。

こんな緩い会社と従業員の関係です。

それぞれが会社から解き放たれる結果、国民一人一人が有効に時間を使えるようになり、社会全体でみて生産性が上がる、そして新しい産業が生まれる。アメリカのように…。生産性の上昇に伴って自然な形で収入が増え、必然的にインフレに誘導される。これがインフレ誘導の正しい道筋ではないでしょうか。

最近企業の経営者が、残業ゼロ目標を口にする例を時々目にします。あれほど社員に長時間労働を強いてきた日本電産ですら、社長の永守さんが2020年までの残業ゼロを宣言しました。

長い間当然と考えられてきた「会社」と「従業員」の関係の再構築。意外とこれは、日本経済の進む正しい方向ではないでしょうか。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2017年2月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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