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金利上昇下の株高が続く「グレートローテーション」が始まっている=福永博之

前回の日銀短観「12月データ」から見える景況感の改善、長期金利の上昇が市場に与える影響について、IFTA国際検定テクニカルアナリストの福永博之氏が解説します。

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年1月25日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※1月23日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております

プロフィール:福永博之(ふくながひろゆき)
IFTA国際検定テクニカルアナリスト、(株)インベストラスト代表取締役、ビジネス・ブレークスルー大学 資産形成力養成講座講師。テレビ、ラジオ、多数のマネー雑誌などで投資戦略やテクニカル分析をプロの視点から解説し、人気を博している。

「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」見極めのポイントは?

日銀短観から見る裾野の広い景況感の改善

少し前になりますが、前回の日銀短観12月のデータで重要なポイントがあります。一つは想定為替レートです。2016年度末までの想定為替レートは103円36銭で、現在のレートとは10円も離れています。この差をキープしたまま年度末まで行けば、業績上振れの可能性が出てきます。それが業績改善予想の根拠につながっています。

また、大企業の景況判断DIは、製造業も非製造業も0を上回っていて、グラフも上向きになっています。さらに、中小企業も製造業、非製造業ともに、0もしくは0より上となっています。

非製造業のデータの動きに注目してみましょう。2007年から2008年、小泉内閣で郵政解散をやって株価が1万8000円台に乗せたときですが、当時は景況感も悪くなく、リーマンショックより前で、景気は良くなるのではないかという実感があった時です。そうした時でさえ、中小企業非製造業のDIは、0に届いていなかったのです。

それが現状0を上回っているのです。中小企業非製造業が0を上回っているような時期は過去にあまりないので、現在はそれだけ回復基調が明確になってきているということなのでしょう。

前回の予測値との差分を見ると、大企業製造業は大きく上振れています。非製造業も上振れです。そして驚くことに、中小企業の製造業は2期連続で上振れ、さらに上振れ幅を拡大しています。

そしてさらに、非製造業に至っては、上振れがずっと継続しています。日銀短観は数十社というレベルではなく、数千社(5,656社 ※日銀ホームページより)という相当大規模なサンプル数でデータをとっており、その結果がこんな風に上振れしてきているということで、本当に多くの企業経営者が改善を実感しているということなのでしょう。

よく日本は大企業が数パーセントで、中小企業の数が多い、ピラミッド型だと言われます。収益はその逆ピラミッドとなっています。このように裾野の広い中小企業のところで景況感の改善が見られるということは、明るい傾向だと言えると思います。

Next: これから起こる長期金利の上昇は良い兆候?悪い兆候?見極めのポイント



長期金利の上昇は良い兆候?悪い兆候?

最近は、金利が上がると株が下がるなどと、教科書的なことを言う人が全くいなくなりました。今は金利が下がると実は株価が下がるという状況になってきています。

何故かと言うと、債券は金利と価格が逆相関で、金利が上がるということは債券が売られ、価格が下がるということになります。その売ったお金が、株式市場に流れ、いわゆるグレートローテーションという流れになります。金利が上昇してくるとすぐに国債の暴落だなどと言う人が出てきますが、今回の金利の上昇は今のところそれほど大きな影響は出ないと思います。

ポイントとしては、株価が上昇し景況感や業績等の実態がついて株価が上がってくる中で、金利が追いかけて上昇するケースについてはほとんど心配がいらないということなのです。好景気を持続させるため、過熱感を持たせないための利上げだからです。

一方、1988年頃バブルの時期ですが、当時日銀はまず不動産に対する総量規制をやりました。貸し出しを規制したのです。その後、株価が高値を付け下落する中で、なんと利上げまでやってしまったのです。バブルだと思ったからそのような対応をしたわけです。実は実態を伴っていたと私は思っていますが、結果的には景気を殺してしまったわけなのです。

アメリカではこのような状況をオーバーキルと言います。金利を先に上げてしまうことによって、景気を殺してしまうのです。アメリカのバーナンキ前FRB議長はそのようなことをよく研究していて、日本の轍を踏まないように金融政策を行ってきました。アメリカは昨年、年3回利上げすると言っていましたが、実際には年後半に1回だけでした。今年も3回と言われていますが、実態ベースで見るとアメリカの景況感は良くなって来ているので、それをもとにコントロールしていくと思います。

日本の金利は0.1%に満たない状況の中で、0.3%、0.4%などとなってきたらすぐに国債の暴落などと言い始めますが、それではとんでもないミスリードに惑わされてしまう可能性があると思います。2007年、2008年には、小泉内閣の郵政解散で株価が上がり1万8000円をつける場面がありましたが、当時の長期金利は2%で、今の10倍です。その水準でも景気は問題なく耐えていたわけです。

リーマンショックがなければそこに問題はなかったわけです。もちろん過度な自信は良くないですが、実態を伴って景況感が良くなり、金利が上がっていく分には心配しすぎなくて良いのです。ミスリードに惑わされて持ち株を売ってしまうようなことがないようにして欲しいと思います。

これは、国内のデータがそれぞれ回復基調にあり、ポテンシャルがあるという中での話です。さらにアメリカの景況感も良くなってきている中、円安で日本の企業も儲かるということになれば、株価が2万円を超える場面もあると思います。売買タイミングを考えつつ、売ってしまわないということも重要になってきます。

そのためには、基礎データを確認し、どこを見ればいいのかポイントを押さえておく必要がありますが、現在は、短観を始め、各データが揃って改善傾向を示しているので、そうした状況を頭に入れておいて欲しいと思います。

アメリカの長期金利の推移を見ても、NYダウが上昇する中、金利は上がってきています。株価がモタモタしている中では金利も同じようにモタモタします。こちらもグレートローテーションの動きが表れていると言えます。アメリカの債券を売って、金利は上がるものの、株価が景況感の良い中で先行して上がっているのであれば、そのお金は株式市場に向かうということなのです。

金利の上昇については心配する声が多いのですが、2013年末時点を見ると、アメリカの長期債の利回りは3%を超えていました。過去の経験則で言うと、NYダウは長期金利が3%でもしっかり保っていたのです。そして現在も、金利が上昇してきている中でも景況感の改善がより鮮明になってきているのです。金利が上昇したとしても、良い金利上昇であれば何も恐れることはないということなのです。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年2月1日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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