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北米版の楽天市場「Shopify」が急成長! EC版月額課金×手数料モデルの強みとは?=シバタナオキ

カナダの会社「Shopify」が、日本の楽天市場に近いサービスを北米を中心に展開して急成長しています。EC版の月額課金+手数料モデルの成功例として注目です。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2017年10月26日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

Amazon一強のEC市場に切り込む「Shopify」急成長の秘密とは?

「定額課金+手数料」のハイブリッドビジネスモデル

今回は先日から好評をいただいている「SaaSのビジネスモデルの理解を深める」という文脈と少し関連して、定額課金と手数料のハイブリッドモデルを詳しく見てみたいと思います。

2015年にアメリカで上場したSHOPIFY INC.が提供する『Shopify』というサービスを題材に見てみます。
※参考:SHOPIFY INC.の米国証券取引委員会へのIPO時の開示資料(英語)

Shopifyはカナダの会社ですがニューヨーク証券取引所にも上場しており、北米を中心に主に中小企業を中心とした店舗向けにEコマースのストアを開くためのサービスを提供しています。

日本で言うところの楽天市場、ヤフーショッピング、BASEといった形に近いマーケットプレイス型のモデルになっています。

アメリカのEコマースといえばAmazonが一強状態になりつつあり、それ以外にもeBayなど老舗の大きなプレイヤーがまだ残っている状態ですが、Shopifyのように新しいプレイヤーが新しいビジネスモデルで急成長しているのは非常に頼もしいなぁと思いました。

Shopifyは前述の通り楽天市場と非常に似たビジネスモデルで、「店舗からの出店料を固定費で受け取りつつ、それにプラスして取扱高に応じた手数料も徴収する」というハイブリッドモデルになっています。

今回はこのハイブリッドモデルのうまい使い方や成功の秘訣を、Shopifyのケースから学んでみたいと思います。
※参考:SHOPIFY INC. 2017年第2四半期 投資家向け資料(PDFファイル)

成長が止まらない取扱高(GMV=Gross Merchandise Value)

はじめにShopifyの取扱高を見てみたいと思います。

2016年の1年間で$15.4B(約1.5兆円)もの売買がプラットフォームを通じて行われました。

1.5兆円という非常に大きい金額もさることながら、それ以上に驚くべきは成長率の高さです。

なんと1兆円を超える取扱高がありながら、前年同期比で約2倍の成長スピードを誇っているのがShopifyです。

Next: 2つの主力「月額課金サービス」と「手数料サービス」が果たす役割



売上と2つの売上構成

Eコマースのマーケットプレイス型のビジネスモデルになりますので、次にネット売上テイクレートを見てみたいと思います。

ネット売上は2016年の1年間で$389M(389億円)でした。こちらも前年同期比+90%と非常に高い成長率を誇っています。

このグラフをご覧いただければわかる通り、売上が主に2つのサービスで構成されています。

グラフの黒い方が月額課金の売上。グラフの緑の方がそれ以外に出店店舗に対して提供される広告や決済手数料などのサービスからの売上になります。

このグラフは月額課金からの売上の時系列です。年平均80%といったとても速いスピードで伸びています。

これは新規店舗の獲得によりベースの売上アップができているということを表しています。

Shopifyの月額料金はこの図にあるように、「個人は月額29ドル、中小企業は月額79ドル、大規模企業は月額299ドル」といった具合にとても良心的な価格設定になっています。

楽天市場と同じように、この月額料金はShopifyのソフトウェアを利用するための料金であり、それ以上の例えば広告のようなサービスを利用したい場合は追加で料金を払う必要があるというわけです。

前述の黒と緑のグラフを再度ご覧ください。緑の部分の広告や決済手数料などのサービス部分からの売上が、黒の部分の月額課金からの売上を大きく超えるスピードで成長しているのがわかります。

Next: まだまだ伸び代あり!このスキームは他の事業にも応用できる



テイクレート

当メルマガではお馴染みの「テイクレート=収益性」について見てみましょう。

Shopifyのテイクレートを計算すると、2016年の1年間で2.5%とアメリカの他のEコマースプラットフォームに比べて非常に低いテイクレートにとどまっています。

月額固定費以外の部分が伸びているとはいえ、テイクレートが2.5%と非常に低い状況なので、まだまだ成長余地が大きいのかもしれません。

このようにShopifyは、

・非常に良心的な月額課金で誰でも簡単にEコマースのショップを開けるようなサービスを提供し、
・それにプラスして取扱高に連動するような形で別途売上を立てています。

プラットフォームとして驚異的な全体の取扱高の成長を誇っているために、月額課金だけではなく、取扱高に連動したサービス部分からの売上が非常に大きく成長してきているというのが現在のShopifyの強みです。

以下ではShopifyのこの驚異的な成長を支えている仕組みについて少し詳しく見てみたいと思います。

ShopifyはEコマースのプラットフォームの会社ですが、考え方そのものはSaaSのビジネスにも当てはめることができる一般的なものだと思いますので、Eコマース関連の方やSaaSビジネスを展開されている方のお役に立つ内容ではないかと思います。

成長ドライバー=1店舗からの売上

Shopifyの売上は月額の固定料金それ以外のサービスに分類されるという話をしました。

この後者の部分はマクロで見れば取扱高に比例していくものと考えられます。というのは、店舗視点で見れば、自社の売上を増やしてくれるサービスがあればそれに自社の売上の何パーセントかを変動費的にShopifyに支払うというのは非常に利にかなっているからです――

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決算が読めるようになるノート』 2017年10月26日号『北米版の楽天市場「Shopify」から学ぶEC版の月額課金+手数料モデル』より抜粋
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