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ビットコイン版「バブルの物語」いつか死ぬまで踊り続ける覚悟はあるか?=鈴木傾城

今どき通貨のデジタル化に驚く人はどうかしている。仮想通貨は世界を変えるだろう。それは、眼前のこの仮想通貨バブルが破裂するのと同じくらい確実な未来だ。どういうことか?(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)

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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。

今、私たちが目撃しているのは暗号通貨を巡る「壮大なバブル」だ

疑う余地なき「仮想通貨」の将来性

CDで音楽を聞くスタイルやDVDで映画を観るスタイルは、インターネットでのストリーミングに置き換えられた。CDやDVDという「物体」は急激に時代遅れになりつつある。紙の媒体で読む出版物も、急速にインターネットに取り込まれて置き換えられようとしている。

それならば、紙幣コインという物体が次にインターネットに取り込まれていったとしてもまったく不思議ではない。

ビットコイン等の暗号通貨は、まさにインターネットが紙幣を取り込む動きであると考えれば、その重要性が分かるはずだ。

音楽も映画もテレビも書籍も、デジタル化できるものはすべてデジタル化されていくのだから、紙幣やコインもデジタル化されて驚く方がどうかしている

すでにインターネットでは、ビットコインやイーサリアムやリップルやライトコイン等々の「仮想通貨」が大量に生まれて流通している。インターネットは「通貨」をもデジタル化して取り込んでしまおうとしているのだ。

これらの「仮想通貨」は、その技術的な仕組みから「暗号通貨」とも呼ばれているのだが、ここに可能性を感じて資金を投じている人は時代の先駆者である。

ビットコイン価格は上がり続ける、いつか暴落する日まで

暗号通貨は、紙幣やコインといった物理的な媒体をデジタルに置き換えるものだから、今後より重要な存在になっていくのは間違いない

だから暗号通貨には莫大な資金が流れ込んでおり、近年稀にみる強気相場が形成されている。

史上最大の暗号通貨であるビットコインは、2017年1月は1000ドル前後だったのだが、これが2017年10月には6000ドル台にもなっている。

1年にも満たない期間で6倍も上昇しているのだから、いかに熱狂的な相場になっているのか分かるはずだ。

その通貨に可能性を感じる人が増えれば大勢が買う。買う人がいるとさらに上がる。

利ざやを手に入れるために売る人も出てくるのだが、それ以上に資金の流入の方が激しいのでビットコインの価格はどんどん跳ね上がっている。

こうした「跳ね上がっている」ものを見たら、それが何であれ「バスに乗り遅れるな」と言わんばかりに飛び乗る人たちも大勢いる。だから、跳ね上がっているものは、より跳ね上がっていくことになる。

バブルが弾ける前に降りれば難なく金持ちになれるので、バブルは人目を惹く。メディアも煽り立て、投資に慣れていない人々も浮き足だって参入する。

ビットコインは完全に「バブル」状態

この状態を何と言うか。

答えるまでもない。「バブル」と呼ぶ。バブルは、自分よりも高くそれを買ってくれる人を見つけるゲームだが、10ヶ月で6倍も上がる鉄火場で、凄まじいばかりの投機が今この瞬間に行われているのである。

実はバブルでは、最も無謀で、最も思慮が浅く、最も強気な人間が勝ち続ける。それが弾けるまでは上がり続けるのだから、全財産を賭けてバブルに乗っている人間が強いのだ。

ビットコインは上がり続けるのか。熱狂は冷めていないので、もちろん上がり続ける。どこまで上がるのか。それは、まったく分からない。ある日、何の前触れもなく相場が吹き飛ぶまで、熱狂的な相場は続いていく

Next: 仮想通貨が世界を変える頃、ビットコインバブルは崩壊している



「ITバブル」の教訓――確かに世界は変わったのに

現在の世の中は、「デジタル化できるものはデジタル化される」という法則が働いている。

紙幣やコインはデジタルに置き換えられやすい物体なのだから、遅かれ早かれデジタル化の波に飲まれていく。その先駆けに暗号通貨という仕組みがあり、ビットコインがある。

しかし、だからと言って全財産をそこに賭ければ勝てるという単純なものではない。これは、1990年代末期から2000年代初期にかけて起きた凄まじい「インターネット・バブル」を見ても分かる。

当時のメディアは「インターネットは世界を変えるシステムだ」と煽って煽って煽り立て、投資家も熱狂の渦に巻き込まれてナスダック総合指数は過熱した。

シリコンバレーでも続々と新しいベンチャーが立ち上がっていたが、まだ事業も軌道に乗らず1ドルも稼いでいないのに、数千億単位の投資資金がなだれ込むほどの熱狂だった。

当時は投資家なのにインターネット関連に投資しない人間は「愚か」「時代遅れ」と言われ、インターネット関連株を注意深く避けていた投資家ウォーレン・バフェット氏は「もう投資家として終わり」と嘲笑されていた。

利益を大して生み出していない企業も、ただインターネット関連というだけで「将来性がある」と言われ、PER(株価収益率)が100倍や200倍でも平気で買い上げられた

「インターネットは世界を変えるのだから、PERが100倍以上でも評価できる。時代はニュー・エコノミーに入ったのだ」と、人々は途方もない高評価を臆面もなく正当化した。

かくして1996年頃までは1000ポイント程度でしかなかったナスダック総合指数は、インターネット・バブルが頂点に達した2000年には5000ポイント台をつけていた。相場は5倍も跳ね上がっていたのである。

この5倍に跳ね上がったバブルが崩壊したのは2000年3月10日だった。5048ポイントだったナスダック総合指数は、その7ヶ月後には1114ポイントにまで下落していた。

何のことはない。バブルが弾けるとバブルが起きる前の価格に戻ってしまったのである。ピーク時から78%近い下落だから、バブルに踊っていた投資家のほとんどが「壊滅」と言ってもいいような損失に見舞われた。

利益を生み出していない多くのインターネット企業は淘汰されていき、ナスダック総合指数は2009年まで地を這うような低迷を余儀なくされた。

Next: 「途方もない高評価」に乗るのは自殺行為。暗号通貨はどうだ?



将来性と相場の過熱は「別の話」

インターネット・バブルはアメリカの相場に大きな傷痕を残した凄まじい現象だった。

ところで、この当時に言われていた「インターネットが時代を変える」という話は嘘八百だったのか。いや、そうではない。それは正しかった

私たちは、もうインターネットがないと生きていけない。生活もビジネスも娯楽も人間関係も、今やインターネット中心に回っている。

「インターネットが時代を変える」は正しかったのだ。

しかしだからと言って、株価評価を無視した状態でインターネット企業をひたすら買い上げてバブルに踊ることまで正しいわけではなかった

インターネットが時代を変えるとしても、バブルと化した市場で踊っていれば、それが弾け飛んだ時は相場と共に真っ逆さまに落ちていく。

将来を評価するのは別に間違っていないが、途方もない高評価に乗るのはいつでも危険極まりない行為なのだ。

では暗号通貨はどうなのか?

1998年から2000年までの凄まじいインターネット・バブルを見ると、現在の暗号通貨の評価やそれを巡る相場の過熱と非常によく似通っていることに気付く。

かつて「インターネットが時代を変える」と言われていたのと同様に、暗号通貨もまた「時代を変える」と言われている。実は、この部分を否定する人はほとんどいない

通貨がインターネットに取り込まれていく中で、暗号通貨の果たす役割は非常に大きい。

しかし、だからと言って暗号通貨を巡って起きているバブルが正当化できるのだろうか。将来性と相場の過熱は、まったく別の話なのである。

そもそも、ビットコインのような暗号通貨は、どのように評価すればいいのか?

Next: 投機家は死に絶え、仮想通貨は生き残る



投機家は死に絶え、仮想通貨は生き残る

インターネット・バブルの時代、インターネット関連企業は売上や利益を無視したべらぼうな評価が与えられていたのだが、ビットコインに代表される暗号通貨はどうなのか?

ウォーレン・バフェット氏は「ビットコインを評価することはできない、なぜならビットコインは価値を生み出す資産ではないからだ」と述べている。

確かに、ビットコインを評価することはできない。それは取引している投機家たちも指摘する事実だ。ビットコインはいくらが適正価格なのか誰も分からないのである。つまり、現在の価格が割安なのか割高なのかも分からない。

さらに暗号通貨は、革新的な技術であるものの、これが決定打になるのかどうかはまだ未知数である。

「インターネットで使われる仮想的な通貨」という概念は生き残る可能性は高いが、だからと言って今の暗号通貨が標準になるとは限らない

ビットコインの取引は認証が遅いことは周知の事実であり、暗号化の技術も量子コンピュータの時代になると破られるのではないかとも言われている。

さらに大量の暗号通貨が生み出されるのを見ても分かる通り、ビットコインそのものが生き残れるのかどうかもまだ分からない。

無数の暗号通貨の誕生が混乱を招き、みんなまとめて陳腐化して相場が吹き飛ぶ可能性もある。

実際の使用面でも、1年で5倍にもなるようなものを通貨として使うのは実用的ではない。価値が乱高下するようでは、通貨を使用すること自体がギャンブルと化してしまうからだ。

Next: 眼前の熱狂は「暗号通貨を巡る壮大なバブル」だと知れ



眼前の熱狂は「暗号通貨を巡る壮大なバブル」だと知れ

また、こうした暗号通貨によって税金逃れやキャピタルフライトが可能になることから、政府の規制も必ず入る。

現に中国政府はビットコインを初めとする暗号通貨を規制しているのだが、暗号通貨がドルやユーロを脅かすようになると、世界各国で容赦ない規制がかけられるのは100%確実だ。

【関連】日本を襲う新たな貧困「ブロックチェーン格差」の自己責任を乗り越えろ=鈴木傾城

そのため、暗号通貨に金を賭けるというのは投機家の世界観であり、投資家の世界観ではないというのが客観的な見方になる。今、私たちが目撃しているのは、暗号通貨を巡る壮大なバブルなのである。

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2017年

・もし100万円が全財産だったら私はどうするか?(1)基本概念(10/29)
・富裕層は誰もがやっており、貧困層は誰もやっていないこと(10/22)
・弱肉強食の資本主義で弱者が生き残るための2つの行動指針(10/15)
・なぜサラリーマンの「不労所得で暮らしたい」は危険なのか?(10/8)
・資本主義で生きるための公式と、その公式を支える軸とは?(10/1)
・中途半端に頭が良いと「5つの理由」で長期投資に失敗する(9/24)
・脳が劣化する現実を見据え、継続的に買う銘柄を私は決めた(9/17)
・貯蓄型の保険なんかを無駄に掛けて助かった気持ちになるな(9/10)
・資本主義で生きているなら資本主義を徹底利用して生き残れ(9/3)
・資本主義から永遠に金を吸い取る方法は秘密でも何でもない(8/27)
・私が所有していたゴールドを売り払って満足した理由とは?(8/20)
・株式が暴落して人々が発狂状態になったときが絶好の買い場(8/14)
・悲惨極まりない日本の未来を覚悟して、現実主義で生き残れ(8/6)
・貧困層は資本主義の最強の力に気付かず富裕層だけが気付く(7/30)
・ブラックスワンが投機家を皆殺しにするのは素晴らしい光景(7/24)
・「社会が混乱したら株よりゴールド」は本当に正解なのか?(7/18)
・日本人だけが「大量虐殺は儲かるビジネス」だと知らない?(7/9)
・なぜ森で静かに暮らしていた人が2.4億円を持っていたのか?(7/2)
・新興国を経由した巧妙なカラクリが仕掛けられたことを知れ(6/25)
・胴元のシステムの旨みを横取りする方法があることに気付け(6/18)
・普通の人の38倍の知識武装ができるシンプルな方法が存在する(6/11)
・リスクを取らなかった人間にはリターンが与えられない事実(6/4)
・フェイクニュースの蔓延は長期投資家にとっては最上の環境(5/28)
・投資家は協調性を捨て他人の意見を聞かずにその真逆をいけ(5/21)
・資本主義の最下層80%から脱するために乗り越えるべきこと(5/14)
・ポートフォリオに関してはルールを定めないという考え方(5/7)
・学校は「労働者養成所」なので、資本主義の秘密は教えない(4/30)
・単純にして明快、合理的にして人間心理に合致した保有とは?(4/23)
・長期投資家には、北朝鮮がどうなろうと知ったことではない(4/16)
・タバコ企業は世間に叩かれても何とも思わない投資家の牙城(4/9)
・今後、衝撃的な円安になったとしてもまったく不思議ではない(4/2)
・何もしないで資産を70倍にすることが可能だったということ(3/26)
・貧困層を陥れる「最凶の騙しツール」のワナに堕とされるな(3/19)
・金のうなる場所で勝ち馬に賭けるとは具体的にどうするのか?(3/12)
・宗教を否定し神仏を信じないことで得られる3つの利点とは(3/5)
・金が道ばたに落ちている状態は、再びやってくると断言する(2/19)
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・格差のどん底から這い上がる「もがき方」は存在するのか?(1/29)
・「世界で最も裕福な8人」にまつわる秘密を暴いて応用せよ(1/22)
・専門家を憐れみマスコミを嘲笑せよ。呪縛は自分で解き放て(1/15)
・日本で持ち家が財産である時代はとっくの前に終わっていた(1/8)
・予測に基づかないで資産を増やす抜け道はどこにあるのか?(1/1)

2016年

・ソロスは「豚のように食い漁って何が悪い?」とうそぶいた(12/25)
・予測せず、愛を囁き合っている間に資産は膨れ上がっていた(12/18)
・資本主義のこの仕組みを理解しないと踏みにじられるだけだ(12/11)
・日本円の貯金に頼っていると、悲惨な結果になることを知れ(12/4)
・社会は不平等で労働は最弱の資本。働いたら負けは真実か?(11/27)
・トランプが大統領に決まって地獄の穴はどこに開いたのか?(11/20)
・トランプ政治で暴落が来たら落ちるナイフを思いきりつかめ(11/13)
・マリファナに関しては、これから信じられないことが起きる(11/6)
・予測を超えたところで動いている資本主義の原点をつかみ取れ(10/30)
・いつでも「最悪の時期に最悪の選択をさせる」のがマスコミ(10/23)
・地獄で知る投資。資本主義に馴染めなかった人々の逆を突く(10/16)
・なぜ変わるものよりも変わらないものを重視すべきなのか?(10/9)
・良く知らないものに全財産を預ける奇妙な人間とは誰なのか(10/2)
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・阿鼻叫喚の暴落地獄に買い向かう時、この5つに気を付けよ(9/11)
・なぜ長期保有に関しては理性も「敵」になってしまうのか?(9/4)

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年11月5日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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